遭遇4
それは言わば超速の神技?
まさかの展開で…
多分?…ヒョウの獣人にズバッと、首を切られた…のか?
俺の首…が…? えっと、…ん?
痛くない?…
あれ、血も…出てないし何か…首もついてる?
え?
あれで、無事だったの?なんか、すげえ風切り音だったけど…
…空振り?まさか…?
獣人はその勢いのまま、俺の身体を、
何も、無かったかの様に…
なぜだか、そのまんま通り過ぎて?
その奥の地面に、ザッと着地した。
今…俺の身体を一切触れずに、正面からそのままスルーして、通り過ぎたんだが?…
それどころか何故か?
風圧も?剣圧も、何も感じ無くて…そもそも触っても無い?
そもそも何で、ぶつかった感触すら無いんだよ…何でだ…?
素早くターンをしようとした獣人に対し、少し横にズレた親戚さんが、投げ物をブンブンと、続けざま投げた。
獣人は直ぐさまそれを躱しつつ、
剣で幾つかを叩き落し…たが、
数本が刺さった、その瞬間…
奥からぶっ飛んで来たアマジャさんの武器の…
その、超強烈な横殴りで、獣人は身体ごと吹き飛ばされ、壁にぶち当たり、リバウンドして、床に転がった。
倒れた獣人に、親戚さんとアマジャさんが追撃を入れんが為、直ぐさま動いたが…
コレまた獣人が、トンデモ無い速さで起き上がり飛ん……あ?
親戚さんが投げた暗器が、下半身…太腿辺りに当たって…
その衝撃で、足が持っていかれて…獣人は回転する様に倒れこん…
え…?
「獲った…」
獣人が小さく呟く…
獣人の身体の回転に隠れ、後ろから尻尾が、遠心力?で飛んできた…
そこにも武具、刃物が取り付けて有って…
すっかり油断して、棒立ちの俺の心臓に、
それが、ドスッと、刺さった…
「痛っ…」
異変を感じていた親戚さんが、獣人の回転とほぼ同時に何かを投げたが…
アマジャさんも、持ってた武器をぶん投げて、多分尻尾を撃ち落とそうとしたみたいだが…
獣人が腕や背中で、敢えてそれを受け止めてた…
コッチからはそう見えた…
俺の胸に刺さったナイフの刃の先には、
何か緑色?の液体が塗られていた。
戦闘も素人で、異世界初心者な俺でも、
すぐにピンときた…あ、コレ毒だわ、と…
うわ〜コレきっと俺、死んだな?
しかも…ボケっと突っ立ったままやん?
これはあかん、マジでクソダッさいわ…
これって…
1打逆転の打席の…代打の切り札…それが?
バットも振らず、みすみす3球を、まさかの棒立ちで見逃す様なヤツ…やん?
後で、精神的にメッチャきっついやつ…
皆に、超シカトこかれるやつやん…?
もうコレ、完全にガチの役立たずやんか?
うう…あ…ぐふっ…
うげ…
うげええええ…
…口から、いっぱい血吐いた…った…
倒れて、もう動かない獣人を見下ろしながら…
そこで俺の意識は飛んだ…
俺もまた…
獣人の様に、静かに…
前のめりにブッ倒れた。
獣人が平伏する中、ほんの僅かだが、私は確かに、殺気を感じていた。
そう、急に目の前の存在が【深淵の神】様だと聞かされた故に…
獣人の中には直ぐに、その事情を飲み込めない者が居るのは、それはそれで、まあ…仕方が無いのかと思った…思ってしまった。
獣人らは皆、小さく脆弱で、それ程の武力も持ち合わせて居ない上に、我等のパゲンタだと聴いて、
…少し気が緩んだのも有るだろう、
だが、抜かった…致命的な失敗を犯してしまった…
まさかあれ程の武を持つ者が、息を殺し、そこに潜んでいたとは…
それは私の反応を、いや人間の反応を遥かに凌ぐ、獣人の強者の圧倒的な速さだった。
私の目は、その動きを捉えてはいたが、
脳が腕に動けと指令を送り、その腕が…そして脚が動く頃には既に…
獣人は異様に速く、速過ぎた…既に我が神のその目前まで飛んでいた。
同じくエギラも、何なら私よりも早く反応し、暗器を投擲する姿勢だったが…
如何せん、投げる方向に神様も居た…
暗器が当たっても、剣を持つ身体ごと神様に当たってしまうし、
仮に、避けられでもすれば、全て神様に当たってしまう…エギラ自身も迂闊に動けず、相当焦っているのが見て取れた。
あの獣人の剣士、そこ迄計算していたのか…
だが諦めず、私は全力で動き、そして腕を振り抜く…ただ間に合って欲しいと、それだけを願いながら…
だが、間に合わない…
己の全身を、不吉な感覚が走り…
ダメだ…
ただ、己の不甲斐なさに絶望し…そうに…イヤ?
何と!
獣人の剣は、なぜか空を斬った…しかも?
まさか飛び込んだ獣人の身体は、神様に当たりもせずに、
何とそのまま、神様の身体を通り抜けた…
本当に驚いた…
だが、これで間に合う…
全身の筋肉が悲鳴を上げたが、一切気にせず、
全力で身体を、そして武器を動かして…
そしてようやく、敵の身体を捕らえた。
私の鋼鉄棍を、獣人の脇腹をエグる様に振り抜く…
我が手には、やつのアバラ骨の砕ける感触が、ハッキリと有った…
エギラの投げた暗器も、数本が、やつの肩や足を捉えていた。
…恐らく、既に死に体だろうが、獣人だ…きっとまだ動ける筈…
故に、地に転がり動かない獣人に、
直ぐさまま追撃を…トドメを刺すべく、
もう一度、全ての力を絞り出し、やつ目掛けて飛び掛かり…武器を振った…
ちっ、
やはり死んだふりだったか…
腹ばいの姿勢のまま、超低空で、神に向かって飛び掛かるその時、
エギラの暗器がやつの太腿に突き刺さり…
それで大きくバランスを崩した獣人は、つんのめり、そして前のめりに、回転するように倒れ…
仕留めた?…
いや、違う…アレは態とだ…
私をエギラも、急ぎ追撃を行うが、
悔しいかな、奴のほうがうが、一枚上手だった…
常に隠されていた長い尾の先には、
実は、短い刃物が着けられており、
倒れ行く獣人の身体の回転で、それを、神様の胸…心臓に突き刺した…
ー
僅かに、間に合わ無かった…刺さった直後、私の武器が奴の尾を弾き飛ばし、エギラの投げた暗器は、奴の背中やらに4本刺さったが…
今度こそ、獣人は動けまい…
だが…
駄目だ…
全く持って不甲斐ない…何を…私は何をやっていた、
…自分が許せない…
何の為の護衛か?
一体…
今迄の苦労が全て、音も無く崩れ去った…
途方もない虚無が、私を飲み込んだ…
私もエギラも…呆然となり、ピクリとも動くことが出来ずにいた…
は!いかん、しまっ…
慌てて駆け寄るも…
多くの血を吐き…
神様のお身体は、ゆっくりと…
我ら前に、静かに…
それはまるで…鳥の羽根が宙を落ちるかの如く…
ふわりと…
力なく崩れ落ちた…




