事情4
長〜いミーティングは、俺の意見で終わりを迎えた。
それでも、【使徒】さんらと元々行動を共にしていたミゲヤさんは、やはり詳細が気になって仕方が無いっぽいが…
「もう決まったからな…皆で無事にカーナンへ向かおう」 そう言って、荷物をまとめ始めた。
朝になったら、手分けして、馬と食料を探して、カーナンへ出発だな。
親戚さんが言った。
その夜更け…
宿の扉を叩く、割と大きな音がした。
…街に、深夜に着いた商人か何かだろう…しかし…あれは?
アマジャさんが言う。
だが?
窓際にいたミゲヤさんが、急にダッシュで下に降りていった。
アマジャさんと親戚さんが顔を見合わせ…
次の瞬間、同じくダッシュで親戚さんが階段を降りていった。
うーん、何だろう?ちょっと、イヤな予感がする。
えっと、アマジャさん?…何がおき「…あの戸を叩く音、あれは我等の合図を兼ねたものと同じでして…」
「…おう?」
えーっと?つまり?…お仲間かも、って事ですか?
「はい、直ぐに判るでしょう」
俺達の部屋は、所謂、大きめの雑魚寝部屋で、複数のベッド…と呼ぶには貧相な寝台が10基、並んでた。
俺達以外には、たまたま客が居なかったので、親戚さんが一部屋丸ごと、安く借り上げたらしい。
そこに、ミゲヤさん先頭に、夜分遅い来客がやって来た。
ご年配の2人が、すぐさま俺に対し片膝を付き、頭を垂れた…
「私めは【使徒】アルデントと申します」
「同じく【使徒】サザーリンと、申します…」
…!
「え?あ、はい…」
ここが日本なら、「オッス、オラ悟空…」で、
軽く掴みを取っておくトコだが…
何か、メチャ偉いしと…らしいんで、こっちに来てから始めての…
思いきって、自分の名前を言って見たった。
「今晩わ、どうも始めまして、お…いや、ワタくし、柴 龍太郎と申します。
どうぞ、お顔をお上げ下さい…」ちょっと緊張した…
一瞬、顔を上げかけ、俺の名前が耳に入ったであろうその時に、
2人は更に膝を折って、更に深く、深く頭を下げた。
それに続くように、アマジャさん、親戚さん、ミゲヤさん、
そしてもう一人、最後に入ってきた若い濃い顔の青年も…
全員、一斉に膝を着いた。
…随分後で聞いたが、教会の一部の、ホントに一番上の方の使徒だけに伝わっていた前任の【深淵の破壊神】の名前、
それが…シヴァ…だったらしい…
ちょ、待てよ…?
いや…偶然何だけどさあ…
シヴァと柴って…はい?
いやいや、ホンマに?ホンマのホンマ?
…マジで?
偶然にしちゃ、あんまりにも出来過ぎ君、やない?
とは言え…
土下座状態の男衆に、寝台の上で固まる女衆…
いや…もうこの空気がツライ…
あ、どうか、皆さん顔を上げて下さいよ…
まさか…だ、これを青天の霹靂というのだろうか…
商人の馬車に便乗し、乗り継ぎ、ようやく宿迄帰り着いた。
扉の前に居たらば、見知った顔が階段を駆け下りてきた。…ミゲヤだった。
おお、【使徒】アルデント様、ご無事でしたか、それにサザーリン様も、良くぞ、良くぞご無事で…
更に階段からもう一人、何と甥っ子のエギラだった。何故…こんな場所に?
「叔父さ…いや使徒様、ご無事で?何処かお怪我などは有りませんか?」
ああ、ありがとうよ。我々は皆無事だ。それより一体…
本当に驚いた。
ミゲヤが、何とも衝撃的な発言をした。にわかには信じがたい…
だがこの男、ミゲヤはこの様な時に、嘘や冗談など、絶対に言わない、その性格もよく知ってる。つまり…事実?…なのか…
「はい、私の【目】、そしてアマジャと、2人の【目】で、確認しております…
間違いなど、絶対に有り得ません、まさしく正真正銘の【深淵の神】様で有ります…」
疲れてはいたが、私もサザーリンも急ぎ階段を上がった。
随分前から騒がしかった、首に掛けていた魔道具が、階段を登る最中、ついには壊れてしまったた…
サザーリンも同様に、その異変に気付いていた様で、
私の壊れた首飾りを、じっと見ていた。
部屋へ入ると、その方が居られた。
まだ随分と若く、同行のザジよりも、まだ少し若く見えた…
先ずは跪き、真名を名乗ると、
神も又、その名をお告げになられた。
神の真名を…
我等【使徒】の中でも、特に上位職のみが伝え聞く【深淵の破壊神】のお名前、それを…
まさかの…シヴァを、名乗られた。
その時私は、心底驚き固まってしまった。
…驚愕、その感情以外…それ以外には何も無かった。
そして、横のサザーリンが問うた。
「不敬とは承知でお伺い致したい、貴方様は、本当に…【深淵】より、お越しになられたので有りましょうか?」
「あ、はい」
俺の返事に次いで、親戚さんが、凄い真面目な顔で言った。
サザーリン様そして、アルデント様、
この、エイギクアーラ・エーギラサノルデルド・リースベラ=ザマエットエーギエーラ・ミスミトが…
その名、真実を語る清い心のミスミトが、それが事実であると、確かに誓います。
同じく…私アマア・リジャディード・リースシャールオジエも、真名に掛け、ここに真実だと、誓いましょう。
ミゲヤもそうだが、それこそそこなアマジャに至っては、もう絶対に冗談なんて言わない…
故に、私もサザーリンも理解した。いや…正直、思考が追いつかなかったのだが…
だが、飲み込んだ。
これは、紛れもない、本当の事、真実であると。
で?
何か…最初の頃の急展開シリーズが帰ってきた?
えーっと…いやまず、
てか、親戚さん?名前、長っ…
良くも噛まずに…言えますね?凄ない?知らんけど…
で、
そうして、
一旦消されていた部屋の灯が、再び灯された。




