表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/172

事情1

 我は神である。


 夜と海を司る、神の一柱である。


 例外が無い訳では無いが、


 基本、我ら神族は不滅だ。寿命も無い。完全な不死である。


 故に、剣で斬られようが、大火で焼かれようが、


 いつか何処かで、抜け落ちた髪の毛一本、いや、細胞の一欠片でも有れば、


 やがて、そこから復活を果たす。


 そこには本人の意思は関係なく、

 必ず、復活してしまう。 


 本来ならばそれで良い。何度倒れても、再び立ち上がり、この世の生命を導き続けられるからだ。

 

 だが…話が変わった…いや、全ての風向きが変わってしまったのは、

 もう自分でも覚えてさえいない程、遥か…随分昔の事になる。


 最初の頃は、何もかも、全てが上手くいっていた。


 曽祖神によって生み出された、16柱の兄弟神。


 この星の、幾つかの大陸にそれぞれ居を構え、そこにある全ての生命を導く為に、我らは存在した。


 中でも、一番大きく、特に酷く荒れ果てたこの混沌の大陸に、

 我ら3柱の兄弟神は降り立った。


 先ずはその海でも山でも無い荒れ狂う混沌を、それぞれ大地と海に分けた。

 我の上の神がその力で新たなる大地を造り、

 私はその力で大海を造った。

 下の神は、その類稀なる力で、そこに有った悪しき魔を尽く打ち倒し、


 そして新たに生まれた魔も、同じく全て打ち倒した。


 それぞれの役目がきちんと機能し、新たなる生命の世界、この新大陸が誕生した。


 長い長い時が流れ、その間、生命は生まれては消え、消えては生まれ、やがて大いなる生命の流れ、渦が出来た。


 上の神は創造の力を持ち、あらゆるものを作った。木も、花も、鳥も、虫も…


 そして、意図せず増え過ぎてしまい、やがて均衡の取れなくなった種を、下の神が処分した。


 我は、上の神程の創造の力も無く、また下の神程の剛力も無かった。


 ただ、そのかわりに、我は未来を見る事が出来る力を得た。

 それによって、我等の謀、政は、全て上手く運んだ。


 それ故に、この2柱に強く頼られた。


 故に、我等がこの先、進むべき先を、我は常に指し示し続けた。



 長らく続く輪廻の中…


 いつしか少しづつ、その流れの歯車には、僅かなズレが生じていた。


 その、気付く事も出来ない程の、小さな小さな歪…ズレは、

 数千、数万の時の流れの中で、やがて我等にもどうする事も出来ない位の、巨大な歪みになっていた。


 ふと気付いた時、

 上の神は、我が何度も何度も意見を与えるが故に、まるで幼子の様に、


 やがて、自身で深く考えるのを辞めていた。



 下の神もまた同様、ただ大きく暴れる為だけの機会、指示を待つだけの、   

 単なる、飢えた暴力の象徴、そんな存在となってしまっている。



 平穏や安寧は、いつしか暇や退屈と言う、なんとも陳腐な言葉に置き換えられていた。



 一体、何がいけなかったのか…

 どう導けば良かったのか…


 その答えは、もう判りはしない…

 最早、今の我らの関係に於いては、何の意味も無いもの、でしかない、遅過ぎたのだ。



 そして訪れる完全なる不和。




 永遠かと思われた安寧は…




 長らく続く平穏は、



 あっけない程簡単に、


 見るも無惨に崩れ去った。



 まさか…

 よりによって…我に下の神を直接ぶつけてくるとは…




 そこは油断だった…



 ある夜、とても哀しい未来を見た。

 見てしまった。




 

 ならば我は、予めその日に備えねばならない…



 我の力だけでは、上の神には敵わない、

 故に、我自身の力に加え、曾祖神の残したあの力も…

 いや、全てだ。


 使える物は全て、命も、魔力も…【呪】でさえも…




 それらを、身内に向けて使う日が、

 使わざるを得ない日が、まさか我に来ようとは…



 だが、既にこの先の世界の一部を見た。

 故に、恐れはしないし、使えるものは何でも使う。


 打てる手も全て、些細な、小さな事であっても打つ。

 そして、我は生き残ろうぞ。



 そして…関係の修復も出来ないのであれば、

 もういっそ、全て壊したほうが良い。


 その、【深淵の主】ならば…

 恐らく我等は、手も足も出ないというが…




 故に、怖さも有るが、一度、その圧倒的な存在、力を見てみたい…


 それが勝手に暴れるのも良し、その力を、我がどうにか奪うのも、また良し…



 夜の支配者たる我、ヨミの暗闇でさえも、

 到底敵わぬと言う、


 それは似て非なるもの…


 遥かなる闇…深淵…


 

 我が力を持ってしても、先が、未来が見通せぬ、唯一の、深い、深い漆黒の闇…



 かつて我ら神族を、一方的に葬ったと言う、その深き闇は…



 場合によっては、我の身体を蝕む猛毒…



 下手に触れてしまえば、

 今度こそ、我は本当に消えてしまうかも知れんが…



 だが…きっと、結果は同じなのだ、


 この状態…状況が続く…いや、今以上、これ以上に拗れるので有れば…


 もうただ、遅いか早いかの問題であろう…



 だからこそ、我ヨミは…


 一度、この目で見てみたい…


 会ってみたい…


 


 全ての生命の終焉にして…




 我ら神族の天敵



 そして、監視者…


 


 かつて我等兄弟の為にと、


 我が密かに、あの石を持ち出し、そして、その力を全て奪い、別の封印の器に隠した。


 故に、もう決して、

 この世界には現れない、顕現出来ぬ筈だと…



 深き闇の主は、魂の器であった石が無い以上、


 ここには二度と、戻る事も、帰る事も、


 絶対に、出来はしないであろうと、


 そう、思っていた…



 深淵に関する未来だけは、一切、見えなかった…



 やはり我等が不死で有るのと同様に、


 闇の主も又、不死、不滅だったようだな…





 そう、まさかだ。


 我が期せずも、自身の魂の器が無くとも、


 なんとそれは再び、今世に現れた…


 

 遂に目覚めし…長き眠りの神殺し、




 【深淵の破壊神】…


 

 見通せぬ破壊の、破滅の…



 その終焉が…、再び、この地にやって来たのだ。



 それは、我にとって、或いは神族にとって…



 全てか、一部か、


 果たして、一体どこまでその牙を向けてくるのか…




 そうだ、確か僅かだが、

 アレを祀った危篤な連中が居たな…



 まずは、例え一部でも、それをどうにか上手く取り込み…利用し、



 その日に備えなければな。



 


 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ