暗闇5
俺は颯爽と、カバンから取り出した折り畳み式のオペラグラスを展開し、早速覗き込む。
……フムフム、成る程。
しかし、木が多すぎて奥の方まで見えんな…
あと、肉眼より、ちょっとマシってレベルの望遠具合。なんなら、逆に見辛いかも…
ぅ~ん、流石は景品だな、思ったより使えねえ〜…
まあ、所詮2倍だったな。
こう視界を遮られると、殆ど見えねえな〜と。
…ってか、
期待させた、ってか勝手に期待した俺もどうかと思うが、
だがしかし…じいちゃん許すまじ。
俺はオペラグラスを元の場所に、静かに、そっとしまった。
改めてキョロキョロと周りを見たが、木々に囲まれ、付近の見通しは余り良くない。
所々に上がってる煙や、木々の切れ目に見える景色で何となく、
ここの戦場が、かなり縦長な気がした。
まあ素人の見解だな、意味など無い。言いたかっただけ。
せめて?
出来れば水場の場所でも判ればと思ったが、付近には無さげだな…
そんな時、俺が登ってきた道無き道を、ゆっくりと誰かが近づいて来るのが見えた。
一人で、ゆっくりとした足取りで、フードのついた服かマント?みたいなカッコで、大きな荷物を背負い、杖をついてる様だ。
え〜っと、どうすれば?
…ダッシュで逃げるか?
いや、追いかけられるのも、敵対も勘弁して欲しい。
何ならお友達になりたい…だが、
…最悪、戦闘もあり得るかも。
俺はゴクリとツバを飲み込み、
急いでカバンに括られたバットケースの紐を解き、その中身を取り出して、
そして強く握りしめた。
もしも敵だった場合…
そして味方の場合、
いや、実は戦闘に関係無い一般人とか?
色々なパターンを考えた。
その人物は段々と近づいて来る。
俺は焦る…
しかも?
見た感じ、日本人じゃ無さそうだ…
正直良く判らないし、勝手な俺の感…だが、
インドとか東南アジア系の顔立ちで、色黒の年配。
あくまで…俺の感だと40歳前後の、
うちのオヤジと、じいちゃんの、中間位なんかな。
そして…痩せ型、細い…
タイマンなら勝てそうな気はするが、
相手が凄腕の拳法や魔法使いならどうなんだ?
俺、死ぬかな?
ビビりつつもバットを構える。
イチローのように相手に向けバットを立て、袖を摘む。
何故って?威嚇のツモリですけど、何か?
あと4〜5メートルってとこで相手は止まり、
静かに膝をつき、頭を下げ、前に手を伸ばした。
それは綺麗で、見本の様な土下座、
そして…戦う気満々で初手のタイミングを計ってた俺には、
全く想定外のその行動に、
「ふ…ぁ?」
完全に面食らって、度肝を抜かれた。
そして、
俺は振り上げたこのバットを、一体どうしていいのか解らず、
ひどく困惑していた。
年配の男さん(以下 年配)は、ずっと頭を下げたまま、一言も発しない。
で…俺は考えた。
この年配さんが頭を上げないのは、
実は俺が許可してないからでは?
で、で、で、でも、
日本語イケる?無理やろ?
いや英語か?
イヤイヤ、インドってスワヒリ語だっけ?
「面を上げよ」って、
い、言ってみるか?
え、え、偉そうかな?
このままでは、むしろ俺がこの空気に耐えられない、
なので、勇気を出して言ってみた。
「ハッ、ハロ〜」
年配さんは何かをブツブツ言いながらより深く頭を下げた、
アカンっ、失敗だ。
バットを下ろし、そっと近づいて手を差し出し、年配さんの身体を上げようとしたが、
まるで、ザリガニ並みの猛ダッシュでズザザザっと、後ろに下がり、
再び頭を地面に擦り付けた。
うわ…アカン…
英語もダメ、無理強いもダメ…、
こうなったら、出川イングリッシュ的日本語で、
俺の熱意と勢いと、
後、圧で押し切ろう、ソレしか無い、そうしよう。
「え〜、そこな者、顔を上げて下さい。あの、フェイス アップしてプリーズ」…
暫しの沈黙の後、
遂に年配さんは口を開いた。
「我が名はアマジャ、深き闇、深淵を探す者で御座います。貴方様は深淵より参られた…神様で御座いましょうか?」
「…え?…………俺?」
「あの〜…ちょっと何言ってるか、意味が判りません…」
「お戯れを」
「え…え?…」
ウソ、何が正解なんさ?
え?
いやあれ?
言葉通じる?通じてる?
容量の少ない俺の脳みそには、
この、正解が一切判らない。
一体どおすれば…良いんだ?
困った、もう、いっそ笑うか?
笑う門には福来るって言うしな…
知らんけど…




