暗闇4
何かもう、どうでもいいわっと、ボヤいた時にまた、気がついた。
俺の指が、くっついていく…
どうやら時間経過と共に、手の指が無くなり、そして腕も少しずつ身体に埋もれて行くように短くなっていく。
でも、強く意識していると腕も指もゆっくり復活する。
自分の感覚で、勝手に着てると思い込んでいた服も、やはり時間経過と共に消えていく…と。
そして上着のポケットに入れたつもりのスマホは消え、拾ったクモの石も、俺の半透明な身体の中に浮かんでた。
え?どうやら俺、消えつつあるんでは??
ヤバくね?
何だろう、不安しか無い。意識しないと消えそうなのに、意識も段々と薄らいで行く。
そんな時、またまた発見した。
それは空中に浮かんだ、亀裂だった。
縦に割れた2メートル位の…その向こうに、暗闇が覗く。
そうか、俺がブチ破った壁か…
目を凝らし中を覗くと何かが光って見えた。
意識を強く持って、腕を復活させて亀裂の中に突っ込んでみた。
不思議と怖さは無く、俺を引っ張ってくれたクモも、こんな感じだったのかなと、ふと考えた。
暗闇の奥で光った何かは、思ったよりも、ずっと奥にあって、
俺はグイグイと腕を突っ込んで、それでも足らずに、
ついに身体の半分位を突っ込んで、ようやくソレを掴んだ。
それはデカいカバン、いや、俺の仕事道具一式の詰まった、まさに俺の物だった。
それを掴んだ瞬間、一気に記憶が頭の中に蘇って来た。
そして、力を込めてカバンを引きずり出す。
暗闇の中に居た時に聴こえた、あの悲鳴のような音が遠くに聴こえたが、気にせず強く引っ張った。
そして、それは出た。
黒くてやや大きめの旅行用のスーツケース、俺が貼ったステッカーや、付けてしまった傷や凹みが、更に俺の記憶を、脳みそを活性化させた。
「思い出した!俺や、オレやんっ!!」
そうだ、草野球の途中、急な電話で呼び出され、そんで直接仕事に向かったんだった。
そうだ、そうだ、思い出した。
すると途端に、身体が変化していった。
まさに、本来の俺が復活していく。腕も足も、服も、そして「ナニ」も。
…触診では落ち着かず、ベルトを緩め肉眼でも確認した。「有った!」息子の生存を確認した。
【祝】俺 復活のお知らせ
「やったぞ、俺、のっぺらぼうも玉無しも、卒業だぜ、やったぞ、勝った。勝ったな俺」
嬉しさが爆発した。
しかし、身体が戻ったのも幸いだが、仕事カバンが有るのも心強い。
何か、急に心に余裕が出た。
そして、このカバンに括り付けられた愛用の金属バットと試合用バット、俺はどうやら武器まで手に入れた。
これが有れば、仮に対人間ならヤれる、戦えるゾ。
絶望の淵から一転、一筋の光が俺を照らし、何か急に視界が開け気分だ。つられて頭が高速回転し始めた気がする。
よし、拾った食料に武器、服に道具一式が揃った。最早無敵、次はより精度の高い情報収集だな。
辺りを見渡し高所を探す。そして移動しながら時間を見る。復活した腕時計は午後14時13分を指していた。
「…って事は、俺が病院に着いたのが12時ちょっと過ぎだったから、まだ2時間しか経ってないのか…」
もう、数日は過ごしたかに思える程に、
俺の身体は疲れてはいたが、
早足で小高い丘の上まで頑張って歩いた。
到着した丘の上で、俺は仕事カバンを開け、オペラグラスを取り出した。
ゴルフの景品を、いつか要るかも、使うかもと、じいちゃんが入れてたやつだ。
このカバン、こんな余計なのがゴロゴロ入ってる。だから無駄に重いんだが、タイヤ付いてて軽く引っ張れるんで、別にそれ程気にして無かった。
「ありがとう、じいちゃん、余計なモンが、初めて役に立ったよ」
さあ、俺の逆襲が始まるぜ…
知らんけど…




