逃避行2
鹿の処理が終わり、それを馬に積み込む。
親戚さんが、穴を掘り始めた。後の二人は武器を持ち、周囲を警戒している。
掘っていた穴は、可食部や必要な部分以外を捨てる為の穴で、
警戒は、血の匂いで獣が寄ってくるから、
で、
穴からは一部の骨や肉をほんの少しだけ露出させている。
逆に、ここらの獣をここを呼び寄せて、その隙に安全に移動する為だそうだ。
時刻は16時…俺達は水場まで移動した。
アマジャさんが残り、
二人が周辺の調査と、罠を仕掛ける為、ここを離れた。
待ってる間、鹿肉の調理方法を聞いてみた。
このメンツの場合、親戚さんが料理担当らしい。
何でも、味付けに強い拘りが有るらしく、怒るので手を出せないと、
アマジャさんは苦笑していた。
二人が戻り、何やら三人で話を始めた。
これからの事のようだったので、
俺はおっきしたマーオちゅわんと、
ついでにエッタさんを、
飴ちゃんで餌付けしていた。
ふ、流石はおばちゃ…おっと失礼、おねーさん殺し…、
最早彼女も、俺の言いなりとなるだろう…知らんけど。
角の生えた大鹿に積んでいた荷物から、鍋が出された。
夕暮れの空の下、調理が始まった。
何か…聞いてたんとちゃう、
拘り?いやいや、
ちょこっとの香辛料と水で、ただ鹿を煮込んでるだけ何ですけど?
…違う、違う、そおーじゃ、
そーじゃなーーい♪っ
…て、思わず歌いそうになった。
いや、こっちじゃ当たり前なのだろうか?
だがしかし…
これはイカンよ、君達…
親戚さん、ちょっと俺に任せてくれませんか?
三人が一斉に「お止め下さい」と止めに来たが、
今日は無事、貴方達のお陰で、ここ迄来れた事に感謝している。
だが、俺は何もしていない…だからどうか、
この感謝の気持ちを受け取って欲しい、そう言った。
だが……
どうせなら旨い物、マトモなモンを、腹一杯喰わせろ…喰いたいんだよっ、それが、
嘘偽りの無い、俺の本心だった。
三人は顔を見合わせ、酷く困惑していた。
神が?神に?
料理…いや、雑事を?
良いのか?
本当に許されるのか?
暫しの沈黙の後、
アマジャさんが言った。
「御心のままに」
俺の熱意が三人の心を打ち?ふ、勝ったな。
俺のターンが来た。
事情が変わった。
今は栄養たっぷりな黄色の箱じゃない、
ジャンキーなやーつ、
そしてパンチの効いたやーつ。
そう、ここでラーメンをぶっ込むぜっ。
煮ていたやつに入れりゃ、
それだけで立派な調味料になりそうな濃い味、そう、
それは、塩でも、しょうゆでも無い…そう、とんこつ一択、
「豚骨、君に決めた」
袋の上からバットで軽く叩いて麺を砕く。箸がなくても食えるからね。
そしてスープの元と、砕いた麺を、満遍なく入れ、かき混ぜる。
マイスプーンという名の?コンビニのスプーンを取り出す、
…味見する。
…ジュルっと
「旨しっ…」
これはノーヒットノーラン、
完全勝利のやつだ。
肉の出汁と調味料も、いいアクセントだ。ああ、クソ、チャーシューと煮卵、空から降ってこないかな?
さあ、諸君、召し上がって下さい。
木製の味噌汁の椀、ぽいのが出てきて全員に渡った。
俺が、
「頂きますっ」と、言ったのに、
直ぐ様三人が反応した。
それは、一体?っと。
…砕いたんで、麺が伸びたりはしないと思うが、
急げ!
「我々が生きる為、結果誰かの、何かの、命を頂くのです。
つまり、その命が意味のある物で有ったことを、自分の骨や血になって行くことを、
命をくれたものに深く感謝する、その為の言葉、祈りです」
…じいちゃんの受け売りです。
三人は震えていた。
唯の食事に、実は考えた事も無かった、深い意味が有ったとは…
えーっと、そこのお三人?
ほら、冷めますよ、食べましょう。
スプーンの様な物は無かった。なので、マイスプーンはマーオちゃんに贈呈。
俺はアマジャさんがくれた切った枝で、かき込んだ。
細かく切った肉と砕いた麺を飲むだけだったが、
…旨い。
何か、やっと何か食ったっなあ〜、て感じがする。
三人は勿論、
エッタさんも、
な、なんじゃこりゃ~!!的な?凄い顔しながら…
凄い勢いで食ってる。
おお、マーオちゃんもお代わりしてた、えらいね~。
勿論、俺も。
ちょっぴり良い夜になった。
飯って大事だな。




