表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/159

異国の女1

  早朝、いつもの様に家の用事を済ませ、その後城に向かう。

   

  夕べ纏めた幾つかの羊皮紙の束を、

 一度に運べる様、なるべく大きな布でまとめて包んだ。


  その日はとても風が強かった。


 荷物が多く、運んでる最中、風に煽られる恐れがあった。


 なので、何時もの道は通らなかった。

 そこは風がよく通る道だからだ。


 少し遠回りにはなるが、壁に囲まれた東門を通って入場した。


 門を過ぎると、大きな荷車と牛車が数台見えた。


  来客の様だ。白く、背の大きな人だった。

 アーマの【巨人族】だと直ぐ判った。


 荷車の積み荷を隠す大きな布の紐が数箇所外れていて、

 その奥に、何やら不気味に光る目が見えた気がした。


 「こんな遥か田舎の小さな城に、一体何の用だろう、それにあれは…」


 不審には思ったが、衛兵もいて、何より怖かったので先を急いだ。




 城の会議室に着いて、荷物を降ろした。

 まだ誰も集まっていなかったので、お茶の用意でもして時間を潰そう、

 

 そう思って、離れの調理場に向かった。


 其処にいた城のメイド達が、

 「その様な雑事、私どもが…」そう言ったが、


 「実はね、早く来すぎて、凄く暇なのよ」、そう言って笑った。


 ここに来れば話し相手が居るだろうと思って来てみたが、正解だった。




 予定の参加者は皆、目の前の中庭を通るので、


 ここに居れば、話し相手もいて、参加者の到着も一目瞭然、ね、良い考えでしょ?


 それに、お茶菓子に、お茶だって飲めるしね。


 そう言ってもう一度、今度は皆で笑った。



 メイドの一人と、料理人、そして私。3人でどうでも良い話に花を咲かせた。


 参加者はいつまで経っても来なかった。

 流石に不審に思い門の方に向かった。


 有ろう事か誰も、誰一人、

 普段、割と賑やかなそこには、人は居なかった。


 そこには、先程挨拶した門番さえも。


 「変だわ…」


 急いで調理場に戻る途中、風に乗って、周りに甘い匂いが漂っている事に気がついた。


 魔術師と言う仕事柄、それが何かすぐに分かった…

 これは眠り芥子の花の香り…


 強い催眠効果の劇薬だ…何故?


 調理場に戻ると同時に、奥の扉が開き、

 領主の奥さまが姫を抱えて走ってきた。


 「貴方達、どうかお願いです、この娘を連れて、地下道の水路から逃げて下さい、時間が在りません、急いで…」


 奥さまは金貨の入った小袋と3通の手紙を私に託し、

 「私が出たら、開かない様に、内から扉を固定しなさい」良いですね、

 それとワン、判ってますね、

 「はい、奥さま、三人がここから出たら、ここに火を着けます」、


 宜しい…そしてズズ、

 「はい、奥さま、地下水路の船で二人が出たら、取水口の羽根を動かして、行き先を誤魔化します」



 そしてエッタ、貴方だけが頼りです。

 以前この城に来た香辛料の商人、覚えていますか?


 あの人種の中に、名前の長い一族が居ます、探してください。そして手紙を…


「なら、私が外に…「「なりません」」…


 貴方ではダメ、領主の妻が、私が最奥の部屋に籠もって、

 なるべく時間を稼ぎます。

 簡単にはあの扉は開きません。


 ですので、どうか頼みます。


 商人に会ったら【深淵】の情報について知っていると言いなさい、

 そうすれば、信用出来る者達が、向こうから来ます、必ず来ます。


 顔を上げなさい、ヘンリエッタ、


 この娘が奴らに渡ると、女神の復活と言う最悪の展開か、

 より大きな戦争に発展してしまいます。

 その娘は、奴らの【呪】に必要な…最後の重要な【鍵】なのです、


 良いですね、くれぐれも頼みますよ。

 道中、例えこの娘が怪我をしても、貴方が居れば安心です、

 頼みましたよ…


 では私は行きます、


 そう言って、奥さまは飛び出して行き、

 料理人は私と姫、そしてメイドを地下に押しやり、

 ここも、中から閂をかけてくれ、

そう声を掛けられた。


 乱世の城だからか、これら一連の流れはきわめてスムーズだった。

 唯一の余所者である私が、何故…こんな?




 しかし、

 もう後戻りなど出来やしなかった。



 賽は投げられたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ