海賊達の矜持 2
それはほんのつい、一ヶ月程前だった筈だ…
どうも奴らがコソコソ隠れて…なにやら悪巧みをしている様だと、部下から報告を受けたのは…
急遽俺は、更なる調査を部下達に命じた。
我が名はマハナ、この白鯨海賊団を率いる団長として、
最大の脅威で有り、そして宿敵であるエーリアーズの蒼海蛇海賊団…
いや、まさかな…あのセーオリッツなんかと手を組むなんざ…流石に馬鹿過ぎて…それはさすがに、こっちの予想の斜め上だったが…呆れた。
俺は奴らの動きを、逐一追いかけさせた。朝から晩まで、縄張りの端から端まで…
あちこちの…下らない噂話さえ、全て集めさせた。
結果、幾つかの情報から、その悪巧みの全容が、ぼんやりと浮かび上がった。
奴らに余計な事をさせているのは、どうやらセーオリッツの野郎の入れ知恵だった様だ。
狂った海竜など、とてもじゃあ無いがまともに相手になんか出来やしない。とても我等の戦力では出来ようはずも無い。そもそも、あれは一種の天災だろ。
昔から言うだろ?
触らぬ神に祟りなしと…ヤツはまさにそれだよ。
だが…
寧ろこちらが…その卑劣な罠を横から丸ごと奪ってやれば良いのでは無いのか?
お誂え向きに、奴らのネグラはヤートの神殿のすぐ横だからな…ヤートがこっちに噛み付くその前に…
奴らの島の周りに仕掛けを撒いといて、
先に暴れるヤートの被害を、その身に受けて貰うとしよう。
疲れてこっちに来ない位には…なるべくしっかりヤート様には踊って貰わんとな…
ついでにだ…ヤートには、もっともっと狂って貰うとしよう。
より奴らの近くで馬鹿みたいに暴れて貰えるように、な。
しかし…セーオリッツの野郎、一体どういうつもりなんだよ…
こっちの喧嘩に、わざわざしゃしゃり出て来やがって…
これはちょっと…奴も蒼海蛇の連中と同様に、手痛い目にでもたっぷりと遭って貰うとするか。
奴らの海の…その海中に、こっちの特製の罠を沢山仕掛けといてやろう。
せいぜい苦しんで…いや、楽しんで貰らうとしようか。
…
そうこうして、更に数カ月経った。
まさか…こっちの予想どころか、
それ以上のとんでもないバケモノになっちまって…
ヤートは最早誰も無視出来ない、この海域全体の脅威になっちまったのだった。
しかもだ、昼も夜も、まるで気分次第で、無駄に不規則に活動するせいで、こっちはもう、
すっかりとおまんまの食い上げだ…
こっちが商船を襲うより先に、先ずはヤートから逃げなきゃならんとは…海賊様の名が聞いて呆れるぜって、
なんともまあ…情け無い話だ。
だが許せんな。
この苛立ちの責任は…エーリアーズをぶっ殺した後に、いずれキッチリとセーオリッツからも頂く事にするぞ。
セーオリッツの野郎のとこは、随分と色々溜め込んでるって話だからな…楽しみだぜ、クソ野郎がよ~
だがその前に…あの暴れ回る一種の天災もいい加減どうにかしなきゃいけねえよな…全く頭の痛い問題だな、
なにせ、こっちの仕事にも大きく支障が出過ぎてる…
しかも、ここ数日…
どうにもヤートの様子が特におかしい…そう報告を受けたが、
さしあたってこっちに出来る事なんてよお、
ぶっちゃけ…何も無いんだよな。
あんなモン相手にするくらいなら、
大嵐の、時化の海に丸腰で、岩でも抱いて飛び込むほうが、まだ助かるってもんだ。
本当によお…いい加減勘弁して欲しいわな。
暇で暇で…おっと、
いやそうだよ…
だが丁度良いな、こっちは暇だしな。
時間だけは有るんだ、楽しく暇つぶしでもしようかね。
憂さ晴らしに…舐めた真似をしくさった、自称お偉い海神様とその仲間達をよ、
チビチビと間引いて…なぶり殺してやるとするかね。
アイツらは皆、人間を餌かゴミくらいにしか思って無いような連中だからな…遠慮なんかしねえよ…
いやいや、そもそもこっちの都合…食料だって限りが有るんだ、
いや…あんな見た目の獣人だって…煮るか焼くかすりゃ、ひょっとして喰えるかも知れんな…
いや…絶対臭いよな?アイツらって、そもそも生臭いからな…無理だってか、絶対にごめんだわ…
ああクソ、もういい加減さっさと、まともに仕事にあり就きたいもんだぜ…全く。
セーオリッツの野郎だきゃ…許さねえ、絶対にぶち殺して…
細切れにして、絶対に魚の餌にしてやるわ…クソが…




