賜姓 4
真の…我等の主では無いが、【深淵】を纏いし男も…
今より我は、主と呼ぶ事にした。
実際に…今現在の【深淵】の主で…
恐らくだが、我が主と同じ…神族をも凌駕した圧倒的上位の存在で有るからだ…
そして今、主が我に名を与え給うた。
九郎義経と…
今よりそれが我の名前だと。
その名には色々な意味を含むそうだが、それは元々…主の元の世界の、真なる英雄の名前だそうだ。
たかが一介の従魔如きに、わざわざ英雄の名を与えるなど…
此度の主は随分と酔狂なものだと…そう思いもしたが…
実際、皆に我の名を呼ばれると云う事は…
それは存外、悪くないものだなと、そう思った。
そして驚いたのが…
主が我の名前を呼び、我がそれに答えた瞬間に、主の身体…【深淵】と、我の身体が漆黒の炎で繋がった事だ…
やはり…この主は【深淵】そのものが認めた、【深淵】の新たなる管理者なのであろう。
…
……
そして…
そう言えばさ…腹減ったよな…
キモいヘビやら、セーオなんちゃらやら…だけじゃなく…
そっからも、おこちゃま救出作戦やら…とにかく色々あったせいで…有りすぎたせいでさあ、
まだ、晩飯食ってないよな?
子供達を救出後、キモヘビ島(仮)に再上陸した俺…達。
準備、いや、既に調理済みの焼き立てを再び【深淵】から取り出し、皆で食う事になった。
子供達も一緒に食事って流れ…なんだが、
どうやらその前に…
この、皆の突き刺すような視線に、早急に俺は応えねばならないようだ。
あの視線?…知ってる。
あ?またコイツなんか拾って来やがったよって…
コイツは…出かけるたんびに、なんか拾ってこなきゃ気が済まんのかよ?って…
皆の目がそう言ってる、語ってるのだ。
ん?そういえば…
生前?も、学校帰りに子猫や捨て犬…巣から落ちたツバメの子…
カエルにカマキリ…
ありとあらゆるものを拾って帰っては、母ちゃんに怒られていたっけな…
フフフ、懐かしいな…
…
おっといかんな、つい現実逃避してしまったよ…
まさかなあ…こっち来ても同じ内容で詰められるとか、どんだけ成長してねえんだよ、俺って…
まあ…だが…
だがしかし、だ。
良いかい皆さん?
こちらの九郎きゅんはね、あの…破壊神パイセンの眷属なのだよ?
故に、決して放置など出来よう筈は無いのだよ?だよね?判るよね?
なので、改めてここで、皆さんにこの新しいお友達を紹介したいと思います。
前の…破壊神パイセンの眷属で有り、
この度、めでたくうちのメンバーに加わる、八咫烏の…
九郎義経 君です。
最近までクソアーマの罠に、絶賛囚われの身でしたが…そして今尚、病み上がりのリハビリ中では有りますが、
こうして…今日から同じお友達です、皆さん優しく、宜しくね。はい、拍手〜パチパチパチパチ〜
有無を言わさぬ圧倒的な勢いだけで、俺はこの場を押し切ったった。
俺の、このやりきった感とは反対に…
もう…コイツには何を言っても無駄なんだろうなって…
そんな空気も、多少、多少は感じたが勿論、華麗にスルーしたった。
ある種当然の?…マニアなお爺やんの食い付きだけが、異常に凄まじいです。
そう、その無駄な熱さで、何とかこの空気をうやむやにして下さい、お願い…
そして…まさかヨミも九郎を知ってた。
神族…ヨミの周りのとりわけ偉そうな連中が一番恐れていたのが、
ミューと九郎だったそうで…
「うわあ…両方?…両方揃えたんだ…」って、
何故か絶句してた。
揃えたって…?
九郎にも、勿論子供達にも、ヘビとイカを振る舞った。
子供達が大勢いるせいで、かなり賑やか…いや…結構うるさい。
そもそも子供はもう寝る時間だったが、
まあ…自由になれた記念だしな、今日は許そう、楽しめ。
うーん…
俺も腹一杯で大満足では有るが…
セーオなんちゃらのせいで、実は全く心が落ち着かない、ソワソワなのは内緒だよ?
お兄さんとの約束だ…知らんけど…
宴も酣プリンスホテル…知らんけど…
そもそも、ミューも九郎も、実は睡眠は特に必要では無いらしい。
寝ようと思えば、まあ一応寝れるそうだが、
死にかけでもない限り、睡眠それ自体には、あんま意味は無いんだって…
そう言えば、ミューが寝てるトコ、見た事無かったわ。
今の今迄、アマジャさん達が交代で見張りをしてくれていたが…
それを九郎が夜の間、見張りをしてくれる事になった。
そして…それで改めて気がついた事が、まだまだ有った。
この世界にも結構な数の虫が居る、まあ…当然だ。
俺達は基本野宿だから当然、蚊やハエ、蜂は勿論、
毒を持つ虫の類が一切、なんで俺達の目の前に出て居なかったのか?って、話だが…
それはここに蟲の王、ミューが居るからだそうだ。
ミューが放つ気配は、全ての蟲にとっての絶対不可侵、だそうで…
そこに近づく事さえ、絶対の死を意味するんだと。
つまり…例えるなら、最強のオニヤンマが居ると知って、わざわざそこに近づくアホな羽虫、餌になりたいヤツは普通居ないよね?って事だそうだ。
しかも、更にここにはジョンも居る。
こいつはコイツで、獣の接近を許さない。理由はミューとほぼ同じ。
ミューもジョンも、実はこの世界の生態系の、ほぼ頂点のポジションらしい。
それを教えてくれたのが、実は九郎だった。
つまり、ここにノコノコ近づくアホって…もはや人間や獣人くらいなモンだけらしく…
その程度?…で有れば、弱った今の九郎でさえ、別段何の問題も無いって、事だった。
ミュー曰く…九郎の魔法は、耳のついた生物にとっての最大の脅威になるんだと。
なんなら、音波?で、そのまま殺せるんだって…
どうやら、空気を強烈に振動させて、超音波を発生させて攻撃する感じ?
それに更に魔法を重ねると、相手の内部、身体の内側を急激に加熱したりして破壊するらしく…
それって…ほぼ強力な電子レンジじゃん?
それって…実は、最近の火葬場で遺体を焼くのと、実はおんなじなんだよな。
昭和迄は、実際に火で燃やしてそうだけど、平成だと、大抵の火葬場はもう火は使って無いんだよな。
だから…火葬の前には、いや、なんなら納棺の時には金属は抜かれんだよな。
メガネや指輪…火葬の釜が壊れるって事で…
ほら、お家でも電子レンジにアルミホイル入れたら、大惨事になるやつ?
まあ、それはさておき…
九郎なら、冷えたご飯も、温めたり出来るんだろうか?
偶然だが…仕事カバンには、ラップも有るんだよな…
馬鹿だと…思われるのが怖くて、絶対聴けんが…興味は尽きない…
そして更に夜更け…
何故か起きてるアマジャさん達に、
「我が見ておる故、お主らも、我が主と共に眠ると良い…」と、もう一度九郎が言った。
ただ…我等は急に寝ろと言われても、実は職業病で、簡単には眠れないのですよと、
親戚さんが笑いながら答えた。
そこで、九郎を交えて少し話しをした…
例えば、蚊やヒルの様な吸血する奴は、旅人の天敵だったりする。
しかも、こっちのヤツって、おおむね全部、俺の知ってる地球サイズよりも、全然デカいんだよな…
ハエとか蚊でさえ、俺の拳よりデカいし、ゴキに至っては便所スリッパよりもデカい始末だったりする。
こういった虫には、本当に苦労させらてきたらしく、
仕事中に野宿して、朝起きたら身体中にヒルが群がってた…って、割とよく有る話しだそうな。
うええええ…悲惨やな…
シレンさんは眼前を埋め尽くす軍隊アリの大群と、一晩中必死で戦ってたって言って笑い…
アマジャさんは、吸血コウモリに、それこそ一晩中追いかけ回されたって…
親戚さんは、「多分、そうなんじゃ無いかとは思ってましたよ」って、そう言いながら、ミューに向かって手を合わせてた。
そして…実はもう一人?いや一匹?
ここにはジョンも居るのだ。
ここが…常に安全地帯だったのには、ちゃんと意味があったのだ。
ちな、ミューもジョンも生態系ピラミッドのほぼ頂点で、
更に、全ての捕食者の中でも断トツの強者…だそうな。
へー…ああ見えて?ジョンったら、ちびっ子のくせに、皆の預かり知らんとこで、実は結構頑張っていたのか…
よし、明日の朝はご褒美に、美味い生肉でも食わしてやろう。
マーオちゃんの横で寝ているジョンを、俺は優しく見つめていた。
そっか、ジョンは寝るんだね…




