Out of Blue 1
取り敢えず俺達はヨミの指示に従い、次の島を目指す事になった。
なったのだが…
「ただね…唯一、ちょっとだけ懸念があって…この先が、その…一番の問題でね…」ヨミがボソボソと呟く。
なんだよ?何か有るんか?
「ああ、この先には大きな海賊団が二つ…それぞれがバチバチにやり合ってる海域でね…」
お互い正攻法ではどうにもならないからって…
基本、不意打ちだったり、伏兵だったりしてね、
奴らはここいらに詳しくって、しかも神出鬼没でさあ、
多分、多かれ少なかれ、奴らとの戦闘があり得ると思う…
だが…如何せんこの船じゃあねえ…ちょっと危なっかしくてさ、
なので…目立たない夜に、ひっそりと移動したい所なんだけど…
これが、夜は夜で問題が有ってね…
夜だと海流が、我らの行きたい方向と真逆になる上にさ…
出るんだよ、面倒なのが…
「ん?…なによ、その面倒なのって?」
うーんっと、ちょっと言いにくいんだけど、
セーオリッツって…
海神族って奴らの、その今の取りまとめ役みたいな奴で…
ええーっとねぇ…コイツの親の…
セートルアーナンドってのがさ…神族でもなんでも無いくせに、
自ら勝手に海神族なんて名乗るもんでさ…
怒ったヒルメの命令で、一度そいつとその取り巻きの粗方は、我の軍で滅ぼしたんだけどさ…
その一族に、結構な生き残りがいた上に、
そいつら生命力も繁殖力も尋常じゃ無くってさ、
まあ…それ故?あっと言う間にまた増えちゃってね…今ではここいらの一大勢力になってる。
あと夜行性なんで、夜の海は、
そいつらの世界になってんだよな、この先の辺りはさ…
「えーっとつまりヨミってさ…
そいつの親の、仇?って、そんな感じなんだ?」
え?ま、まあ…そうかな、
結果、そうとも…言うのかもね…
もっとも、会いたくないのは確かだね、
だって我は今、とっても弱いからね、
逆に向こうにしたら、絶好の良い機会だよね、復讐の…
「で…どうするつもりなんだ、ヨミ?」
うーん…どうしようか、
一応…目立たない様な場所や島影を、
なるべく進めるだけ進んで、早くここいらを抜けたい、ってのが理想なのだけど…っと…
そう、思っちゃあいるんだけどね…
逃げるってその場で色々と、状況が変化するでしょ?
ああそうそう、その喧嘩中の海賊の片っぽがさ、
実は最近、セーオリッツと近いらしいんだよね…
「つまり?」
え?つ、つまり…そうだね、どちらかと揉めるんなら、出来ればセーオリッツと関係性無い方とお願いしたいね、
まあ…我は誰とも会いたくないのが本当って…そんな感じですよ。
「ふーん…」
…
……
なあミュー…
前に神殿で使ってたさ、姿だけ消える魔法でこの船、隠せないかな?
ん?…上は見えなくできるけど?
海に面した部分は、見れば波で分かっちゃうと…
でもまあ…取り敢えず頼むわ、発見を遅らせられるだけでマシだろ?知らんけど…
まあ…先に俺が偵察をして…安全を確保しつつ進むのが良いんだろうなと。
偵察の後、作戦会議…つまり、ここにもう一泊だな…
って事で、親戚さんに晩飯用のイカの脚を預けといた。
丁度いいや、今からちょっと、そこいらの様子を見てくるかな。
ヨミから、凡の俺達の進行方向やら、島の配置なんかを聞き、
俺はミューと共に、【深淵】での偵察に向かった。
海賊ってくらいだから、ここいらを通る商船を襲う感じなんだろうなっ…とか、思っていたが…
なんだよ?近くに船なんて、一隻も無ぇぞ?
よし、もうちょっと先まで行くか…
…?
ん?
なんじゃ…あれは?
んーっと?!
なんか…向こうの小さい島で、
何かが…凄え暴れてる?…
いや、闘っていみたいだが?
うわ、なんだよ…
ありゃまたクソデッけえヘビかよ…
あ?…海だし、ウミヘビかな?
でもな…ぶっちゃけ、前のヘビもまだ余ってるんだよな…
そもそも、海へビって、陸のヘビと身体の構造的に一緒なのかな?
…てか、食えるのか?
別に…無理には要らんよな、デカすぎるし。
で、もう一方が…鳥かな?
黒いし、デケえけど、カラスなのかな?
ん?どうしたミュー…
ふぇ?
あれ…って、お前の知り合い、お友達なのか?
そりゃいけねえな…
じゃ、話は別だ、
大至急、サクッとあのヘビを成敗しようかね。
うわ…っと、
おいおい、近くで見るとかなりデカいな?…このヘビ?
アナコンダは勿論だけど、前のでっかいイカよりも更に…
まだ一回り以上もでっかいな…こんなん絶対に食い切れ無いわ…
いやなんか…近くで見ると、ヘビってよりはもう、竜って…感じもするな…
しかもさ、角も生えてるし…
あと、なんか…ちょと雰囲気が毒々しい?
いや、周囲の空気も淀んでる気がするな…
でもまあ…どっちにせよ…ミューの金縛りからの、
俺の【深淵】スッポリのコンボで即、終了だなー。
じゃあミュー、行くぞ、
せーのーでっ、ほいっと。ヤーって。
ミューの魔法で突如動けなくなったヘビに、
直ぐ様、俺がヘビの頭を【深淵】にぶち込む。
はい、残念でした、
海ヘビさん終了のお知らせです。
ほんの数秒の深淵体験で?デカい割には呆気なく、
大きな大きな海ヘビさんは力無く、その小さい島にグラリと…まるでスローモーションみたいに、
ゆーっくりと、静かに崩れ落ちた。
あっと…勿論俺は油断なんかしないぜ?
賢な俺は学んだのだよ。
実は死んだフリだけで、
実際死んでませんでした♪…って、
そのパティーンも有るしって。フッ…知ってるぜ。
いやいや…では有るが、まあ…折角狩った晩飯の…いや、
一応は、まあ…獲物だからな、
【深淵】でサクッと、五つの輪切りにして、
シャダに売らせる食材として、【深淵】に回収したった。
え?…無理矢理押し付けるって?
嫌だな、違う違う…違うよ、全然違うから、
ただ多分、渡すけど…
な、なんかでもさ…見た目あんま美味そうじゃねえよなコイツ、色もちょとキモいし…
おっといけねえ、急いで鳥さんを助けなきゃな、ミューの知り合いだし…
「おーい、鳥…無事か〜?」声を掛ける俺の横から、
ミューが凄い勢いで、鳥に向かってダッシュしてた。
俺も深淵ワープで、直ぐに横まで行くと…
おっと、こりゃまたでっけぇカラスやな…なんか…アレ?
え?…人間っぽい腕も二本生えてて、
脚も…三本あるんだが?
え?
このカラスも、破壊神パイセンの作ったヤツなの?
いや待て…
腕?も生えてるけど…これは、そもそもカラスなのか?
え?なによミュー…
ああ…【深淵】に入るんだな?はいよ、判った判った。
ほお…
しかも…コイツ、ちゃんと自分で喋れるの?
いやまあ…確かに本物の?カラスも九官鳥も、喋るよな…
ほえ〜、凄えな…あ、その腕は普段は仕舞うんだ、へーなる程…
で…?
アナタカ゚、ココニキテカラズット…ワレハミテイタ…
ん?
ミューも居たのに?
なら…なんでこっちに話に来なかったんだよ?
クモモ、マエトチガウ…ズイブンチイサイシ…
アナタハ、ワレノシッテイルアルジ…カミデハナイヨウ…ダッタ…カラ…
ああ…なる程、なる程。
そうだよな、確かに俺は、パイセン…おっと、
お前の知ってる【深淵の破壊神】さんじゃ、無いんだよね。
実はさ…俺も、詳しい事は一切判らんのよ、マジで。
ある日気が付いたら、ここに居たんだけどさあ…
どうも、ここと裏側の境目で身体が引っ掛かかってるとこをさ、
ミュー…いや、こいつに助けられてさ…
その後に色々有って、コイツも俺も、実は一回死んだんだけど、まあ…復活出来て、
こいつは俺の血で復活してさ、それから俺達は仲良く一緒に行動してんだよね。
…で、お前さんは?
名前は無いのか?
ワレニ、ナナドナイ…
そうか、そりゃ不便だろ?
よしよし、せっかくだし、後で俺が素敵な名を考えてやろう。
で、なんでこんなとこで、あんなキモいヘビと闘ってたんだ?
ほうほう…
ミューの話も総合すると、どうやらコイツも【深淵】パイセンが作り出した深淵属性の神獣の一つで、
世間的には 八咫烏 をイメージして作られたんだ?へー。
ずっと長い間、神族の罠の中で封印され、長い間囚われて居たんだけど…
俺がこっちに来た時に突如その罠が消えて、
そっから逃げたんだと。
罠に力を奪われ続けてて…随分と弱っていたし、
自分の主だと思ったら、なんと別人の俺だったし?
同僚だった蜘蛛も、以前よりもメッチャ小さくなってたんで…
ん?これは人違いかな?って…
ゆっくりと自分の回復をしつつ、そっと遠くから俺達を観察してて…
今日はたまたま俺達を見失って、休憩がてらここに降りたらば、
ここにいたあのヘビと喧嘩になったんだと。
そうかそうか、そりゃ大変だったな。
で…
これからどうすんだお前…行くとこも無いのなら…
「俺んとこ、来ないか?」byき志團…?
あ、いや、別に来たくないなら良いんだよ?
折角、罠から逃げられたんだしな…これからはもう自由だ。
何処へでも、お前の好きなとこに行けば良いんだ。
ワレハ…
ん?どうしたミュー、
…おい、カラス君よ、
ミューはお前に一緒に来いって、言ってるけど、どうする?
まあ…ちな、うちは結構優良な、ホワイト企業だからな…
実質、二食と昼寝付で?
厳しい業務のノルマとかも、一切無いぞ…
主な業務は…多分、いや大体は…子守か?
いや、なんか有ったら戦闘もあり得るんだけど…
あとはまあ…決まった休日も福利厚生も…
当然、賞与も昇給も一切無いけど…って…?
あれ?待て、それって…
全然ダメな、ブラック オブ ブラック…?
ドブラックじゃね?うちって…
な、なあ?ミュー…うちって結構…良いトコ…だよな?
おお、激しいめのピョコピョコだ。お前の高評価が有り難いぜ。
ワカッタ…ワレモ、ウヌラト、トモニイコウ…
おお、そうか…判った、なら歓迎するぞ。
あとはもうちょっと、この辺を偵察して、それからみんなのとこに帰ろうか。
ん?どうした?ああ…【深淵】が懐かしいってか?
そうか…ゆっくりしてて良いぞ、そこなら誰もお前に触れないしな。
募る話も有るだろうからな、そこでミューとゆっくり語っといてくれよな。
ミューも色々、うちらの説明してやってくれよ。
じゃ、俺は…付近の偵察を再開しますかね。
えーっと…、
近くに船が居なかったのって、ひょっとして…コイツらが大喧嘩してたから…なのかな?
あ!海賊…みっけた。
なんだよ、よくよく見れば…
近くの島に、いっぱい居るやん?コソコソ隠れてんじゃん?
ふーん、どれどれ。
良いだろう…この俺様が…
お前等を纏めて、
査定してやんよ?
知らんけど…




