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イサクは見た3

 粗方の船の修理が終わって、後は仕上げだって言う頃にも、


 若様の店は、常に客足も途切れずにかなりの繁盛をしていた。



 たった数日で、金貨の袋が積み上がってるなんて、港の皆が囁いていた。


 当然…

 これだけ目立てば、次から次に良からぬ連中が目を付けてきて、


 色々とイチャモンを付けに集まって来るのだが、


 奴らの仲間の獣人…確かアーデって奴が、


 これは鈍った身体をほぐすのには丁度いいな、って…


 嬉々としてそいつらを、


 それこそ片っ端からぶん殴って蹴っ飛ばして、

 海へと叩き落していた。


 獣人は、誰が見ても恐ろしい程に強かった。きっと名のある奴に違いないと、


 海に落とされたチンピラ達も、


 流石にあれは相手が悪いって、そりゃあっさりと、仕返しを諦める様なレベルだった。


 なにせ獣人は汗一つかかず、それこそ一方的だったな。





 更にだ…


 この港で一番の荒くれ共が、どうも大勢で一人になった若様を囲んだらしい。



 シャダの一派は仕事にあぶれて以来、すっかり燻っておるが、

 かなり腕っぷしが強く、やたらと喧嘩っ早い連中だ。

 しかも…皆、相当強いんだよ…



 普通だと…


 若様は決して、無事で済む筈は無いのだが…



 いやいや、まさかだった。



 あろう事か…


 あの、シャダの荒くれ達が、


 たった一人の若造に、それこそ全員あっさりと痛めつけられて、


 まるでガキの様に、まあいい様にあしらわれた挙句、


 まさか、わしが増産した屋台のその働き手に、無理矢理させられたのだと…


 若様の親戚のおじさん?から、

 笑いながらそう聞かされた。



 やっぱりだ。


 わしはああ、やっぱりそうなんだなと、そう思った。



 親方が生前、よくわしに言っていたんだ。


 時々居るのだそうだ…ああ言う、一見変哲もない、人畜無害なただの若造がな…


 蓋を開けりゃ、実はとんでもないやつだったって、そんな話がよ…っと。


 そういうヤツは間違い無く良い客になる筈だと、

 可能な限り絶対大事にしろよと。


 それってまさに、そこの若様じゃあねえかよ。


 これが、わしに神が与えてくれた?

 いや、きっと死んだ親方がくれた奇跡…


 …なのだろうか?



 いや…そのじつ、そんな事はもうどうでも良いんだよ、



 突然、なんだコイツ、イカれちまったのかって思ったくらいに、


 何故か急にポンっと、わしに金貨の詰まった袋をくれたりする位の、


 意外と太っ腹だし…


 あの柔軟な思考や閃き、金儲けのセンス…


 そのくせ、実は金に対して、然程の執着も無いのだ…



 恐らくは金儲けのプロセス…


 多分、その過程をただ、面白可笑しく楽しんでるだけなんだろうな…


 完全にわしとは違う人種…

 考え方も、行動力もただ、目を見張るばかりだ。



 あの、取り巻きの異様な強さに、

 とんでもない魔獣も従えていてだ…



 しかもだ…



 実は、当の本人が一番強いって、そりゃもう、笑うしか無いよな、


 本当によ…そんなの有りかよってな。


 ワハハハハハ、こりゃ愉快だ。



 決めた、決めたぞ、わしはこの若様に付いて行くぞ。


 そうすりゃ多分、食いっぱぐれもないだろうしな。


 若様よ、わしは貴方に絶対の忠誠を誓う、

 だからどうか、わしをお仲間の一人に加えて頂きたいのです…


 「え?そう言うの…間に合ってるんで大丈夫です…」


 …な?


 まさか…あっさりと断られてしまった。


 いや、多分大丈夫だ、


 一回断られはしたが、案外若様って、驚く程のお人好しだと思うしな…


 一回や二回で諦めるなんて…長生きが取り柄のドワーフにゃ、無理ってもんだ。


 ずっと纏わりつきゃあ、そのうちきっと諦めるだろうさ、うヒッヒッヒ…



 よしよし、良いぞ。


 ようやく、こんなわしにも、ちょこっと運が向いてきたんだな。


 

 親方の店は、多少心残りでも有るが、


 またどっかで、その名前で再建すりゃ良いよな…



 わし…多分、まだまだずっと生きるからな。


 

 当面は、勝手に若様に縋って生きていこう。



 そうしよう。


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