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イサクは見た2

 この街にも大勢、変わったヤツは居た。


 だがしかし…

 

 この商人達の頭目…若様ってヤツはこう…どっか他と違う、


 上手くは言えないが、なんとも言えない妙な雰囲気を纏っていた。


 そしてその男が急に、わしに仕事を受けろと言ってきた。


 先の船の代金とは別に、ちゃんと金も払うと言う。

 勿論、受けた。金は幾らあっても困らないしな。


 男は先ず、材料を火に掛ける為の調理用の鉄板と、


 それ用の…簡易的な屋根と壁、

 簡単な店舗の替りになる物が欲しいのだと、そう言った。



 男が地面簡単な絵を描く。

 驚いた事に、その指示がかなり細かい。そして少し感心もした。 


 当初は、細かい網を鉄で作れと言われたが、

 ここに有る様な安い材料で作れば、


 恐らくそれでは、火が入ると簡単に歪むから、

 そこに多くの肉を載せるのは到底無理だろうと、言うと…


 では、多少太くても良いので、縦と横に数本桟を入れて、


 下側の強い火から少し離した位置で肉や魚が焼けるようにしたいとそう言う。


 下側の隙間、空いた空間には、そこに焼いた肉から無駄な油が落ちるから溢れないような返しも必要だと、そう言うのだ。


 この男、どうやら料理にもかなり精通している様だなと、ふとそう思った。


 更に…


 屋台という、折りたたみ可能な屋根と壁だ。


 板をコの字型に広げ、上に屋根を載せ、それぞれを簡単に固定するのだと。


 しかも、これをバラせば板が三枚だけって寸歩だと。

 それを重ねて馬車の荷台に乗る寸法ならば、上に商品の材料や荷物も載せれると。


 更に、屋台のその壁と鉄板も、熱で焼けないように上手に固定すれば、それが重しになって、

 

 ちょっと位の風でも簡単には飛ばないだろうと。


 恐らくは、知って居た知識も有るのだろうが、


 わしの指摘を聞く度に、直ぐに代案を提示して来る。

 呆れた事に、この男はその場で最適な答えを考えてる様なのだ。見た目に騙されそうだが、その実、随分と頭もキレる様だ…



 そして、完成したその屋台で商売を始めると、


 それこそあっと言う間に誰も彼もが並ぶ、

 超人気の有名屋台となっていた。



 実際、わしも一本串焼きを貰ったが、それは驚くほど美味かった。

 そりゃ、人気にもなるわと感心もした。


 男の屋台が順調に稼いでる間、

 わしはいよいよ、やった事も無い船の修理を始めたのだが…

 そこには更なる衝撃的な事が起こっていた。


 まさか…、まさか魔獣が船を修理するのを手伝えと言われたのだが…?


 いや…どう見てもキメラ種だよな?この魔獣って…



 同じく、手伝いの獣人や女と老人も居たが、

 コイツらが特に驚くことも無く、まさか…一緒に居る幼女までもが、

 笑ってこのキメラ魔獣と仲良く作業をしているのが、


 正直、わしは全く理解出来ない事態だった、


 この魔獣は驚く程の頭脳を持ち、こちらの言葉を完全に理解し、そして返事もする。


 そして…このドワーフのわしが舌を巻く程に器用なのだ…


 板の端材を大まかに切断するのも、その硬い爪で行い、助手役の獣人が押さえているその板を、蜘蛛は糸で固定していく。


 そもそもだが、仮にわしが一人で修理するのも結局は素人仕事だ、


 故に、その作業に文句も言う筋合いも無いのかも知れんが、


 この光景は俄には信じられんのだ…



 キメラ相手に、流石に蜘蛛だな…などとは、

 素直には…簡単には言えないし、

 言える訳など無いのだがな…


 女と子供が拍手をすると、この厄災の魔獣、殺戮の代名詞で有る筈のこの魔獣は…


 胸を張り、まるで勝ち誇った様な戯けた様なポーズまで決める…


 キメラって…普通、死をばら撒く恐ろしい魔獣の筈なのに、


 コイツに至ってはノリも愛想も良いって、一体何の冗談なのだ…




 いつしか日が暮れて、屋台組が撤収してきた。


 たった一日でとんでもない稼ぎを上げていた。


 更に若様はこの屋台の数を、もっと増やしたいのだと、わしにそう告げた。


 どう見ても、手持ちの荷物は多くないのにも関わらず、

 男は売るもんが腐る程有ると、そう言うのだ…


 修理の合間に製作すると言う事でと、男と話はついたが、


 屋台が増えたは良いが、売り手はどうする気なんだと聞いたら、

 

 男はしばらく考え考え込んで、

 「まあ…何とかなるんじゃね?」などと答えた。



 そして、男達によって、晩飯の用意が始まった。


 屋台でも売っていた巨大なイカを切ったものを、わしも見た事も聞いた事も無い、カレーイとかなんとか言う、不思議な香辛料で味付けした物だった。


 そしてそれは途轍もなく美味かった。

 一口食ったその瞬間から、もう美味さが圧倒的だった。




 コイツらは一体、何なのだ?商人と言っては居るが、実際、それっぽいのは二人だけだ…


 若様と親方の恩人ってヤツは商人には見えない。

 もう一人の男と獣人は、どう見ても剣士か護衛だ…


 こんな危険な場所で、高齢の老人と女子供を連れているのもどうにも解せない。


 いやいや、そもそも、あの魔獣は何なのだ?

 あんなバケモノが、何故、こうも人間なんかに従順なのだ?

 絶対におかしいだろ?


 商人ってのも、結構怪しいな…

 なにせ、こんな危険な場所は、大抵の商人は避けて進むだろうしな…



 どっかの王族か何かがお忍びで…或いは逃げてるってのが、


 恐らく、当たりじゃないかとも、一瞬は思ったが、


 違うな。全員が、貴族やなんかの、あの鼻につく高貴な感じとは、

 全くもって、正反対なんだよな…


 緊張感が無さ過ぎるというか、のんびりしてるというか…


 本当に、わしは怪しいコイツらを信用して良いのかどうか…



 もう少し…じっくりと観察する他無いな…




 

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