海は広いぜ大きいぜ 2
取り敢えずは…無事に出航した俺達。
陸地が危険で尚且つ、無事な街も殆ど無いって話なのと、
逆に?
船を殆ど持た無いアーマ軍は、この海に点在する多くの島の町や村を、
実は一切攻撃していない可能性が非常に高い…との、ヨミの判断から海路へ出た。
自称…海のプロ、ヨミの誘導に乗った訳だ。
海は広い。改めてそう思った。
デッケえ魚がウヨウヨいやがる…
更に時折、それより巨大な、まるでクジラの様にデカい魚に、
俺はガッツリ気を取られてしまうのだが…
いかん…あんなもん獲ったら、また問題が拗れてしまう。
その日食うだけの小魚で充分、むしろそれで良いのだ。自制心、自制心…
時折、ヨミの指示をジョンに伝えて、細かく進路を調整する。
それほど沖に出た訳でも無いが、随分と陸地側から見た、その景色が違うもんだなあと、ふと思う。
波はそれなりに大きいものの、
ずっと船の先端に居るヨミ曰く…
我が上手く、波を調節しておるからな、
例え女子供で有っても、船酔いの心配などは要らんよ…との事だ。
確かに、この船の乗り心地?は、ポンコツ小型漁船の割には、メッチャ良い気がするな。
しかも…このポンコツ船、帆はおろかマストもも無いクセに、何故か速い。
それはジョンが頑張ってるって感じ以上に、ヨミが海流を上手くコントロールしてるのが、
何となーく、判ってしまう。
なにせ、動力も無い筈のこの船が、海の上をまるで高速フェリー並みに、すっげえ勢いで突っ走ってる。
もう速過ぎて、旅の情緒的なもんが、一切ないんだが?良いのか、これで?
もはや、これはちょっとやり過ぎでは?と、言いたくなるくらいだ。
ほんの半日で、陸からは見え無い距離の、沖合の小さい島に着いた。
港は無く、皆が上陸した後、俺は心配なんで船を【深淵】に回収しといた。
ここにも、かつてヨミが利用していたと言う、小さいが割としっかりした施設が残ってた。
かつて、海の上に安定した航路を作ろうとしていたそうだが、
それもヒルメに邪魔されたそうだ。
石のブロックを積んで作られた重厚な建屋は、この辺りの暴風雨対策なんだそうで、
今のこの、とっても穏やかな天気とは違い、
一度台風が来ると、波も風も荒れ狂い、結構悲惨な状況になるんだと。
俺達は、それ程大きくは無い広間に集まって、皆で座った。
「さて、老師マーヤルとアザエールの諸君、これより先、今後の進路について君達の意見を聞こうと思うのだが?」ヨミが言った。
うむ…そうですな。やはり可能で有れば、最短でカーナンへと向かいたいとは思うが…
海路で有ればどうしても、幾つかの陸地を大きく迂回せざるを得ない…
更に…我々には、一部の航路を除くと、この辺りの、海の上の知識は殆ど持ち合わせ居らず、
ここは、ヨミ殿に、お知恵とお力をお借りせねばと思いまする。
確かに…私もアマジャも共に、山側の担当でしたので、残念ながら海の上については、ほぼ素人で御座います。
唯一…シレンが、船の移動も有ったでしょうが、
コイツの事ですから、ずっと寝てたってのが、実際のところかと…
ちょっと、エギーよ?確かに間違ってはいないけどさ、
その言い方はどうなのよ、酷くないかい?
「「寝とったんかいっ!?」」
俺とエッタさんが、強めに突っ込んだ。
で、
また一斉に、皆が俺を見るが、
正直、俺には地理感覚が無さ過ぎて、今居る所さえ良く判って無いんだよな…
まあ、ただ…俺はいつでも上空に上がってって、
見えてる地形なりをスマホのカメラで撮影して、
それを誰かに見せれば、それで良いんじゃね?…くらいに、軽く考えてる。
…油断なのか?
まあ…この先の道案内は、ヨミにお任せで良いんじゃね?詳しいのも間違い無いし。
なんか有ったら、即、その場で処分すりゃ良いんだし。
「おいおい、なんだいその言い方は…?仮にもわれは…」「あ、ああ、ああごめんごめん、ついさ…」
ま、まあ…良いんだよ、一応それなりに気を使ってさえくれればね、
…君がね?!
「お、…おう」
では一応、皆の意見を汲んで、我がカーナンへの進路を定めるよ。それで良いかい、深淵の主よ?
「おう、宜しく頼むよ」
では、そう言ってヨミが立ち上がり、近くに頃がてる器を拾い、それに砂をすくって乗せた。
その器から掌で砂を掬い、地面に線を描いていく。
どうやら、この辺りの陸地や入り江等の、地図を描いている。
線の上のあちこちには、石の目印が置かれた。
港や街、或いは海賊の縄張りなど…だと。
完全に覚えていた訳では無かったが、
何度か高高度で見た景色と、大体?多分合ってる気がしたんで、ここはヨミを信じ口を挟むのは辞めよう。
今はこの…
ヨミが置いた石を指差す。
ここの島に居るよ。
この先は、多くの島々が点在し、それぞれが勝手に縄張りを主張していてね、多少面倒なんだ。
残念ながら…
我らの深淵の主がいかに強かろうと、
生憎この小さな船じゃ、それらとは喧嘩にさえならないんだよ。
すぐに沈められてしまうだろう。
なにせ、海賊の船は一隻がとても大きい上に、数も居るんだよ。
一度揉めたら、ずっと奴らに昼夜問わずに追い回されるよね。
つまり、そう言った危険な場所を避けて進むのが、一番安心では有るが、
それは老師の言う、最短では無いんだ。
勿論、君なら問答無用で、全ての船の底に穴を開ける事も、実に容易いのだろうけどさ…
海に落ちた多くの海賊は、確実に死ぬよ。
…君、割とそういうの嫌でしょ?
「え?まあ…どっちかって言うと、嫌かな」
うん、そうだろうね…我なら何も気にせず、全て蹴散らしてしまうけど。
なので、この大きい陸地を、更に、こうして大きく迂回して、ここらを抜けて…
ヨミは木の枝で線を引きながら、色々説明を続けた。
マーヤル師匠もアマジャさんも時折頷き、それに納得していたので、
特に問題が起きない限りは、ヨミの言うそのルートで進むのが決定した。
うーん、本来ならば何より先に、レホーの奴をなんとかしたかったんだけどなあ、まあ致し方ないね。
じゃあ…
そうと決まったら、もう、飯の時間だよね?
え?
…はあ?
何で…いつもいつも、お前が最初に催促しやがんだよ?
テメー、一体何様のつもりだよ?
ん?ああ神様か…
まあ、じゃあ…別にええけども。
おお、そうだ、そして喜べ、ヨミくん。
いや、皆の衆よ、
シャダが踏み込んだ荷物の中に、
なんと、俺はお宝を発見していたのだよ。
じゃじゃーんっと。
ほら、これだ。
俺は小さな壺を掲げた。
ちょっと匂いにクセは有るが、コイツはアレだ!
つまり、コイツは今後の食事事情の改善に、大きな前進が見込めるのだよ。
ふ…どうやらまた勝った、勝っちまった様だな、俺はよ?
こりゃ、凄え事になるぞ?
ゲームチェンジャーのご登場だ。




