船を探せ3
なにか思いの外の、ただの暇つぶしだった筈が…
いや、残りのイカ処理の為の商売が?
とにかくまあ、驚く程に順調過ぎて…
しかもまだまだ在庫のイカがそれこそ、腐る程も有ると来たら、
あと、もうちょっとだけ…
売ろうかな、売って欲しいな…みたいな流れで、
結果、商売の為に滞在を、あと二日程延長する事にした。
ちゃんと現金収入も有ったほうが、旅をする上でも、
より、商売人(偽装)っぽいだろうしね。
ちな…船の準備はとっくに終わっていた。
ミューの修理を手伝ってたイサクが、ポツリと言っていた。
こんな事が…
まさか、船大工じゃなく、魔獣が船を治してくれたなんて…
いや、気持ちはよく判るよ。
ただ、うちのその神獣さんが、ちょっと?…いや、大分特殊なだけで…
普通、魔獣が船を壊す事は有ってもさ…
まさか、直すなんてね、もう絶対に有り得ないよね。もう笑うしか無いよね、アハハ…
ヨミがイサクの肩を叩き、複雑な顔で笑っていた。
その頃港では、
謎の看板娘?…エッタさんと、商売上手の親戚さんが、イカ焼きの屋台を順調に回している、
そんな中…
すると湧いてくるのがお約束なのか、
やれ、虫が…とか?
やれ髪の毛が…なんて囀る、クソの様なゴミ共を、
用心棒アーデさんが、瞬殺猫パンチ&キックで、気持ちが良いくらい豪快に、
次々と海に叩き落としていた。サイコー。
一方その頃、
マーオちゃんはとってもご機嫌で、ジョンの背中の上だった。
お馬さんごっこだと?
おいおい、そりゃ違うぜ、
良いか、そんな生ぬるいお遊びなんかじゃないんだ、
これはなあ…多分この世界初の、
グリフォンさんごっこ!!なんだよ。知らんけど…
そう、アマジャさんが作ってくれた、特製マーオちゃん専用のサドルと共に。
それはもう、見た事無いぐらいに、マーオちゃんは大喜びだった。
かわちい…その破壊力たるや…
即、動画に残したった。
そしてジョンは、
万が一マーオちゃんを落下させてしまったなんて事になると…
その後に待ち受けるで有ろう、
そりゃあ身の毛もよだつ恐ろしい惨劇…
それが自身を待ちかまえているという、その事実と恐怖…
ジョン君自身、この中の誰よりもそれを深く理解しているので…
もう、絶対に落ちない様に安全に、
万が一にも落とさないし、落ちさせもしないぞ?って、かなり覚悟のこもった…
丁度良〜い感じの、ゆっくりで快適なお散歩になってる。
しかも…
その適度な緊張感が故?
かなり大きな獣…それがイノシシだろうが、熊だろうが、
気合の入ったジョンを見たら…いや、
その、凄まじい気配を感じた瞬間には、さすがに狂ったように全力で逃げていくし。
ヤツはボディガードとしても実に最適だった。
いや…マジでマーオちゃんの笑顔が尊いな…
こんなの、いつまででも見ていられるんだが?
だがしかし…
今日、俺には重要な仕事が有る。
後ろ髪を引かれつつも、子守をジョンとシレンさん、
そしてついでに、孫を可愛がるお爺やんに任せた。
まあ…何かあっても、俺も直ぐに戻れるしな。
俺はミューを連れて、この間のチンピラを捜索していた。
すぐ町の外れで、チンピラの一人を、割と苦も無く発見出来た。
昼間っから、プラプラしてやがったもんで…
【深淵】内部から、後ろをこっそり…いや、見えては居ないが、結構堂々と、真後ろで追跡し、
ついに…いやもう、かなりあっけなく、
奴らのアジトを突き止めた。
…そりゃ、尾行そのものが、世界の裏側からだしね、まあ無理もないか…
アジトは古い倉庫で、内部はほぼ、空っぽだった。
その真ん中辺りに、数人が集まって、何やら深刻に話をしていた。
なので?
じゃじゃーんっ!!と、
ド派手に、そしてわざわざそのど真ん中に登場し、
ついでに、雑魚がギャーギャーとうるさいのも嫌だし…
そもそも、面倒なんで、チンピラどもはサクッと、ミューの魔法で固めたった。
「おいおい、テメエらよー」
こっちが大人しいと思って…
こないだは良くもやってくれやがったよな?
え?
何も…やって無い…だと?
アレ?そうだっけ?…なんも無かったっけ?
あれれ?ウソ、そうだっけか?
ま、まあ…ええやん。それは一旦…それは取り敢えず一旦、置いとけや、な。
今日はな…そんな?舐めたお前らに、ちょっと、
この俺から、素敵なお話が有るんだよ。
ニヤリ…
……
…
突然、何の前触れも無く、俺達の目の前に男が現れた。
その男は、まさに悪魔だった…
そいつは気配は勿論、音もなく突如、俺達の目の前に現れた、まるで魔法の様だった。
そいつは例の…あのバケモノみたいな恐ろしい男だった…
そして今、こちらの身体の自由を全て奪い取って…
ヘラヘラと笑っていやがる…
もう間違い無ぇ…ありゃ悪魔だ…
絶対、名持ちの大悪魔に違い無い…
俺や手下の身体は、その指一本さえ、ピクリとも動かせない。
いや…そもそも、動かせたとしても…だ、
どういう訳か…
あの男には、こっちの攻撃が一切、ただの一度も当たらない、当てられないんだ。
なのに…ヤツはこっちを簡単に、しかも笑って痛め付ける事が出来やがる…
しかもだ…
かつて経験した事も無い、驚く程の痛みを与えられた。
喧嘩や荒事が毎日の、この俺達が、
まさか…あの後、まる一日、その痛みで全く動けなかった…
ヤバいな…
こっちが仕掛けた喧嘩とは言えだ、
とんでもない奴に目を付けられちまった…
「おい、良いかおめえら、よく聞きやがれ…
クソみてえなお前らに与えられた選択肢は、次の二つだ…」
ちっ…ほざきやがる…だが見てろよ、
この拘束が解けたら、その時、絶対にぶっ殺してやるからな…
そう思った刹那…
男と同じく、突如魔獣が…
しかも、キメラ種が目の前に現れた…
終わった…
どうやら俺達の人生は、今日終わった様だな。
間違い無い、あれは本物だ…
それが放つ途轍もない恐怖が、その威圧感が、
辺りに立ち込める殺気は…もはや尋常じゃ無い…
こうして正気を保っているのさえもう、困難なくらいだ…逃げなきゃ、絶対に殺られる…
だが…動けない…
しかも、間違い無くこのキメラ…この男の使い魔の様だ…
男の…人を舐めきったあの態度も、あの余裕も…
そりゃ当然だよな…
本人だって、キメラだって、
いつでも、容易く俺達を殺せる程に強いんだからな…
最悪だよ、なんてついて無いんだよ…
そもそも、だったな。
アーマがこっちに来た段階で、俺達はもう詰み…そこで終わっていたんだろうな…
ただ、あとは一方的になぶり殺されるのだと、覚悟を決めた俺たち…
死ぬと…そう思っていたのに、
男は不敵に笑って、選択を迫って来た…
服従か死か?ただ、それだけだった。
正直…男の意図が全く読めない、
いや…どうも俺達をすぐ殺す気もない様子なのだが…
一体何故だ?
一旦、服従する素振りでもしておこう…
だが、その時、
つい、男の挑発に乗った直後に、不覚にも昨日の攻撃をまた、食らってしまった。
昨日の…あの地獄の様な痛み程では無かったが、
それでも、痛いものは痛い…
やはりじっと出来ない程の、強烈な痛みだった。(ノーマルバージョンでした)
無理だ…完全に俺達の命は、ヤツの手のひらの上なんだ…
どうやら俺達は、虎の尻尾どころか…
気付かずに、この大悪魔の足でも蹴っちまったらしい…
だが…
話しを聞けば聞くほど、それがどんどんおかしな方へと流れていく。
男は、実は俺達の素性も事情も、全て周知だった。
そして俺達に、盗賊まがいな真似は今、この瞬間に辞めて…
今日からは、真っ当な商売をしろと…
男のの屋台を引き継げるぞ?って、
急にそんな話を持ち掛けてきた。
あの屋台はたったの3日程で、凄え大金を生んでる…
言ってみりゃ金の卵を産むニワトリだ…
それを…何故、俺達なんかに?
だが…
結局、その話を受けた。
受けざるを得なかったってのが正解だが…
その後、何故か男から、色々な商売のコツやら、
軌道に乗った先の運営方法等を聞いた…いや、無理矢理聞かされた。
商売の初期に掛かる費用も、材料も、
男が用意すると言う…
勿論、全てが無料って話では無いが…
実は…お先真っ暗な俺達に差し込んだ、まるで天からの一筋の光に思えた。
いや…蜘蛛の糸かもな…
そうだ、
あの男が悪魔だろうが、
いや…何かの悪神やなにかの罠であっても、
それももう、俺達には関係無い。
もはや俺達にはこのままこの、なんとも怪しげな道を、ただ突き進むしかないのだ。
なら、やってやる、覚悟は決まった。どうせ死ぬなら、
もう少し、足掻いてやる…
奴の言う、男の根性ってやつを、
あの男に、絶対に見せつけてやる。
俺は今…そう心に誓った。
その時悪魔は…海を見ながらただ頷き、
ただ静かに、不気味に笑っていた。




