エピローグ 川辺にて
川は今日も、静かに流れている。
冬の終わりの風が、肌に少しだけ冷たい。
半年前、ここで戦いがあった。
この川が克っちゃんと辰っちゃんの明日を分けた。
あれから、何度ここに立っただろう。
誰もいない、誰も来ない川辺に。
でも私は、ここでしか心がほどけない。
克っちゃんは戻ってきた。
傷は深かったけれど、笑っていた。
でも、目は真っ赤だった。
あいつらしい、不器用な笑顔だった。
そして——辰っちゃんの名は、もう誰の口にも出ない。
北へ行ったという風の便りを聞いた。
ここはもうすぐ春なのに。
私は、まだ答えを持っていない。
誰を想っていたのか、本当に欲しかったものは何だったのか。
ただ、一つだけ言えることがある。
今日のわたしは、あの時のわたしでもあることを。
二人を分けた川は、最後には海という大きな懐で一つになる。
二人は必ずまた出会える。
彼らを育んだ、彼らが守ったこの地で。
そこに私もいる。
あの時のように三人。
もう一人じゃない。
もうすぐ春が来る。
私はきっと、またここに来る。
ひとりでも、きっと。
それが生きるってことなんだと思う。
そう。私は、まだここにいる。
それだけで、きっと十分。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今、数年前に初めて執筆した小説(歴史もの)を連載用に再構成しています。
またお越しいただけると幸いです。




