2 超機ゼロン
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アンティカーサ歴2773年。春。4月8日。午後1時55分ごろ。
「だから! 普通の酸素ボンベでいいってば!」
「信じるっす! 今回のこの『最速潜水艦クロール号』は絶対に壊れないっす!」
「酸素ボンベで行けば絶対に失敗しないの! 前みたいに水底で浸水したりしたら面倒でしょ!」
「今回は浸水しないんす! すでに試験もして99.9%大丈夫っす!」
「酸素ボンベなら100%なの!」
「100%なんて存在しないっす!」
「もぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ここにもまた、少女が二人。一人はゼロン。もう一人はクアートと言った。ゼロンは肌が黒い脂で汚れていること以外特筆すべきことはない少女だが、もう一人の少女、クアートは違った。
クアートの四肢は太陽光を反射する銀色の機械仕掛けでできていた。クアートが動くたびに微かな動作音が鳴っている。
「そこまで言うなら分かったっす。じゃあ私はクロール号で行くっす。クアートは酸素ボンベで行くといいっす」
「ちゃんと酸素ボンベと潜水服を着用しておきなさいよね」
「着ないっす。だってクロール号は壊れないっすもん」
「壊れたときに助けるのは私なんだからね!」
「だからクロール号は壊れないんす!」
「万が一! 億が一壊れたらどうするの!」
「酸素ボンベだって万が一億が一の動作不良を起こすっす!」
「アンタの潜水艦には壊れた前科があるでしょ!」
「その失敗を糧にさらなる改良を加えているのでもう壊れないっす!」
「んもぉぉぉぉぉ!!」
……
結局酸素ボンベで潜水することになった。一時間の喧嘩の末、ついにクアートが実力行使に出たのだった。クアートが力を行使してしまうとゼロンにできることなど何もないのだった。
ゼロンがクアートに殴られた頭をさすった。
「魔兵器に乗ってないアンタなんてただの人間なんだから」
「……(´;ω;`)」
クアートはゼロンの手首をその金属製の手で鷲掴むと、躊躇なく海に飛び込んだ。
二人の目的は海の底。名もなき海底遺跡に眠る魔力石であった。
『アンティカーサ法 魔力石の扱いについて』
魔力石を国家の承認なしで個人が所有すること、これを禁ずる。また、魔力石を発見したものは領主へ速やかに申し出ること。申し出を行わず私利私欲のために使用した、もしくは使用しようとしたものは即刻極刑とす。
このような法律が作られているのは、魔力石の中に大量の魔力が秘められているからだった。その魔力量は、人間が一生で生み出す魔力量の500倍程と言われている。
そんな魔力石を手に入れようとしているクアートとゼロンは要するに極刑レベルの犯罪者であるのだが、二人には犯罪を犯しても魔力石を手に入れたい理由があった。
その理由について語るには、二人の出会いから語る必要がある。




