グルリネからペースへ 6
歩いている間、キュール達がこれまでの経緯を話してくれた。
彼女達は、冒険者パーティ、石砕きの刃。リーダーはキュール。ランクは3だけど、上がったばかり。
「キュールがリーダーなのは、誰がなっても同じだからです。ただのリーダーです」
「何言ってるのよ。ポリシャじゃ不安だし、ランゾも会ったばかりであまりよく知らないから、一番しっかりしてる私がなったんじゃない」
「結局、キュールがリーダーで定着はしているな」
キュール達は3ランクに上がってすぐに、スタンプホースの討伐依頼を受けた。自分達はもう3ランクだと認められていたため、自信をみなぎらせたまま挑んだそうだ。
けれど、結果は想定外の死闘だった。
「スタンプホースは、前衛が抑えられない程の力で暴れて、魔法も効きにくい。正直、今の私達では相手にしてはいけない強さでした」
結局、スタンプホースの隙を生み出すべく、ポリシャは正面から抑えにかかったそうだ。その結果、意識を失う程の重症を負う。そのチャンスをなんとか活かしてとどめを刺したランゾも、最後に足を踏み抜かれて骨折。まともに動けなくなる。
キュールも魔法を使い切り、ほぼ戦えなくなったところ、なんとか町まで辿り着こうとした最中に私が来た。ということだった。
なんというか、想像通りだ。そこを私達が通りがかったというのは、彼女たちの運が良かったんだろう。
「私は旅をしている冒険者よ」
私もそう自己紹介する。まあ、シイドのことは別にいいわよね。けど、モエル達もちゃんと紹介。
「皆可愛くて、良い子ですね」
「ええ。自慢の仲間よ」
「モンスターテイマーなんて、凄いです。さすが二リハさんだ!」
「ありがと」
キュールとポリシャにそう返す。
「けど、カジーニャに、癒やしラビット、グリーンバード。ランク的にはどれも低い。このメンツで、4ランクと渡り合えるんですか?」
「ちょっとランゾ、失礼でしょ!」
「そうだぞ。それに実力はランクが証明してるだろ!」
「いいのよ。そう思われるのも仕方ないかもね。けど、皆本当に強いわよ。特にモエル。この子の魔法は4ランクのモンスターにも通用するわ」
「本当かなあ」
「ええ。機会があったら見せてあげる。それに、シャインの回復魔法もすごかったでしょ」
「それは、まあ」
「はい、すごかったです!」
「お、俺の怪我も治してくれて、ありがとうございました!」
ランゾが口ごもり、キュールが目を輝かせ、ポリシャが元気をよく礼を言う。
「ふふふ。鼻が高いわね、シャイン」
「キュー!」
(ボク、それだけしか取り柄がないので!)
もうちょっと素直に照れてほしい。
「そして、ミドリは空が飛べる。空が飛べるって、それだけで役に立ってくれるのよ。特に、同じ鳥モンスターが来たときは、頼もしいわね」
「ああ、なるほど」
「じゃあやっぱり、二リハさんのパーティは強いんですね!」
ランゾがうなずき、キュールがそう言ってくれる。
「ええ。だけど、私達も、まだまだかな。上には上がいるから」
特に意識するのは、5ランクの領域だ。
今の私達では、まだ5ランクを相手にするには弱すぎる。
でも今までだって強くなってきたんだから、そこも乗り越えたいところよね。
「上っていうと、5ランクですか?」
「ええ。5ランクのモンスターは見たことがあるけど、今の私達より強いわ。だから私も、もっと強くならないと」
「お、俺ももっと強くなります!」
「ええ、頑張ってね」
「はい!」
応援してあげると、ポリシャは顔を赤くした。
「むうっ」
その隣でキュールが面白くないという顔をしたけど、ヤキモチかな?
可愛い。上手くいくといいわね。
そう話をしていると、私達はスタンプホースのところまで戻ってきた。
するとスタンプホースの死体に、ワンドッグが一匹寄ってきていた。
ほっ。ワンドッグか。それなら一安心。
「ポリシャ!」
「ああ!」
ランゾとポリシャが駆ける。私達はいいかな。2人に譲ろう。
「ワンワン!」
「はあ!」
「ふっ!」
ワンドッグもこちらに気づくが、力の差がありすぎた。
ポリシャの武器は剣。ランゾの武器は槍。
それぞれの武器でワンドッグはあっさりやられ、倒れた。
「ふう。スタンプホースの素材はまだ無事だな」
「ああ。でもいくらかかじられてるな。ああ、こりゃ肉はダメだな」
ポリシャとランゾがスタンプホースの状態を確認する。その2人にキュールが近づいた。
「まだ持ち帰れる分があるだけマシじゃない。さあ、それじゃあ二リハさんを待たせないために、それぞれ手分けして解体するわよ!」
「ああ!」
こうして三人は、元気よくスタンプホースを解体しにかかった。
「あの、じゃあ私も手伝おうか?」
「二リハさんは待っていてください!」
「はい」
3人同時にそう言われたら、仕方ないわね。
では私達は、周囲の警戒でもしていよう。
スタンプホースの素材もできる限り持ち帰り、ようやく町へと進む。
その後も大したモンスターは現れず、ポリシャとランゾが倒す。
スタンプホースに遅れはとったようだが、やはり実力は3ランクだ。動きはいい。
けど、今後も3ランクを相手にするのであらば、やはりまだまだ未熟なのではないだろうか。
この子達も、なんとかして生き残ってもらいたい。せっかくこうして出会えて、助けられたのだから。
そこでひらめいたのが、稽古だった。
夜、野宿のため立ち止まると、私はポリシャとランゾに声をかけた。
「ねえ。せっかくだから、稽古をしない?」
「え?」
「あなた達も、まだ強くなりたいんでしょ。なら、私と稽古をするのも、ためになると思うのよ。だから、どう?」
「けどそれは、二リハさんのためにはならないのでは?」
ランゾ。確かに実力差を鑑みると、君の言う通りかもしれない。
けど、せっかくの機会だ。ここは少しくらい先輩ぶりたい。
「私があなた達のことが気になるの。まあ、別にいいって言うならいいけど、どう?」
「俺は。強くなりたい。二リハさん。よければ一回、俺と戦ってください!」
「いいわね、ポリシャ。それじゃあ、やりましょうか。ランゾは、どうする?」
「俺も、よろしくお願いします」
「うん。よく言った!」
こうして私は、ポリシャとランゾを傷つけないくらいボコボコにした。
こう、防具の上から、斬りかかるのだ。ボコボコと。
稽古は一対一だし、こうなるのも当然だけど、2人にはこれでなにかをつかんでほしい。
「ぜ、全然勝てる気しねえ」
「槍を使ってるのに、ここまで手も足も出ないなんて」
「やっぱり二リハさん、凄い強いんですね!」
「今まで頑張ってきたからね。けれど、師匠にも恵まれたのかな?」
「二リハさんの師匠って、どんな人だったんですか?」
「ジュージっていう、優しいんだか優しくないんだかよくわからない人よ。まあ、師匠っていう程の人じゃないかもしれないけど」
それから少し、過去話をした。
昔という程でもないけど、もうヨツヘインを出てから結構発つのね。
時が経つのは早いな。と思った。
けどできることなら、私の旅は時の波に負けないでほしい。
少なくとも私の恋は、まだ続いている。




