グルリネからペースへ 5
「ぐ、いったい、どうなった?」
少年、ポリシャは目を覚ました。
「良かった、ポリシャ!」
少女がポリシャに抱きつく。
これはかなり良い雰囲気なのではないだろうか。ちょっとドキッとした。
「わ、キュール、なんだよいきなり!」
「バカ、心配したんだからね!」
「キュール、そこまでにしておけ。恩人の前だぞ」
「あ、うん。そうね」
少女、キュールがどくと、ポリシャが立ち上がった。
そして、私と目が合う。
「私は二リハ。通りがかりの冒険者よ」
そう言うと、ポリシャは顔を赤くして固まった。
すると、キュールがポリシャの頭を叩いた。
「このバカ、何黙ってるのよ!」
「いて、何すんだバカ!」
「二リハさん。危ないところをありがとうございました。お礼は、大したことはできないですが、できる限りします!」
「回復魔法の代金は、俺たち三人で返します」
2人がそう言って頭を下げると、ポリシャは2人を見てから、遅れて思い切り頭を下げた。
「た、助けてくれたんですね。ありがとうございます!」
「お礼なんて、いいわよ。そんなに気にしないで。でも、見返りがないのもあれね」
世の中ギブアンドテイクだ。そうじゃなきゃ、良い関係を続けられない。
けれど、見る限り私より低いランクの子達に、無理させる気もないのよね。
「回復代って、いくらくらいが相場なのかしら。ポーションはたしか、300シクルくらいだっけ」
「さ、300シクル。三人で九百シクル?」
「いや、俺とポリシャの傷はハイポーション以上じゃないと治らなかっただろう。それ以上だ」
少年が言う。そうか。それほど重症だったのね。
ハイポーションって、800シクルくらいだっけ。そんな大金、この子たちからもらうの?
ちょっと、いや、結構気が引ける。
そうだ。だったら、お金以外のことをしてもらおう。
「ねえ、私は今、あまりお金には困ってないの。だから、お金以外で助けてもらえない?」
本当はマジックバッグ買うのに貯めたいけど、まあ、この子たちからもらえるお金なんて限られてるし。
「お金以外って、どういうことですか?」
キュールにそう訊かれる。
「あなた達、ペースの人よね?」
「はい」
「それじゃあペースに着いたら町の中を案内してほしいの。それと、ペースに着くまで、夜の間とか、私達の代わりに警戒してほしい。ダメかしら?」
「そんなことでいいんですか、やります!」
ポリシャが間髪入れずにそう言ってくれた。
「ちょ、ちょっとポリシャ、いきなりすぎ!」
「だって、こっちは危ないところを助けてもらったんだぜ。むしろこれくらい、当然だろ!」
「むしろ、それで済むなら安いくらいか」
「ちょっと、ランゾまで!」
どうやら、三人目はランゾというらしい。
「じゃあキュールは恩を返さないっていうのかよ」
「そういうわけじゃ。二リハさん、すみません。それでよろしくお願いします!」
キュールが思い切り頭を下げた。
「ありがとう。それじゃあ、よろしく」
これで、残りの道程がちょっと楽になる。
「でも、こうなったら置いてきたスタンプホースの残りがもったいないな」
ランゾがそう言った。けどポリシャが頭を横にふる。
「いやいやいや、俺たちは二リハさんの護衛を頼まれたんだろ。なら道草食ってるわけにはいかないんじゃないか?」
「えーっと」
キュールがそう言って私を見る。
もう、仕方ないなあ。
「スタンプホースがもったいないし、戻ってもいいわよ」
大した距離じゃないしね。
「にゃー」
(えー、めんどくさーい)
「キュー」
(別に、大した手間じゃないですよ先輩)
「ピー」
(でも、別に私達関係ないわよね)
「にゃー」
(そうだし、その分町で美味しい魚を食べるまでの時間が長くなる)
「キュ、キュー」
(そ、それはたしかに、そうですが)
「ごめん、皆。もうちょっと付き合って。そのかわり町に着いたら、美味しいごはんいっぱい食べさせてあげるから)
「にゃー」
(それはもう決定事項だろー)
「じゃあ、毎日。わ無理だけど、2日!」
「にゃー!」
(それならいいぜ!)
「キュー!」
(あー先輩、それなら3日にしてもらいましょうよ!)
「にゃー!」
(あーっ、そうだった!)
「ピー」
(先輩達、考えがこすいわよ)
「あの、素材剥ぎ取るだけなら、俺だけ行って先に進んでくれてもかまいませんよ。すぐ追いつきますから」
ランゾがそう言ってくれた。けど。
「ううん。人数は少ないし、あなた達はパーティでしょ。別行動はよくないわ」
今は大丈夫だけど、ここはまだ、安全ではないのだ。
「じゃ、じゃあ、俺も一緒に戻る。だからキュールだけ二リハさんについててくれ」
ポリシャがそう言った。
「え、けど」
「だってキュール、まだ魔法使えないんだろ」
「う、うん」
「だったら、見張り役くらいしかできないし、二リハさんのそばでいいぜ。むしろその方が安全だし。あ、二リハさん、ランクはいくつですか?」
「4よ」
「4!」
「ほら、それじゃあ俺たちより強い。二リハさんも、それでいいですよね」
「ええ、いいわ。でも、2人でも大丈夫?」
「スタンプホースが出てこない限り大丈夫ですよ!」
なんだろう。今の言葉を聞いて不安になった。
「やっぱり私も戻るわ。それでいいわね」
「ま、まあ、二リハさんがそれでよければ。でも、本当にいいんですか?」
「大した手間じゃないし、いいわよ」
「ありがとうございます。あ、素材の半額、いえ、ほとんどをお渡ししますので」
「そんなのはいいから。あなた達が稼いだお金でしょ。大事にしなさい」
「本当に、いいんですか?」
「そんな目先のお金より、夜の番と町の案内の方が、よっぽど助かるわ。それに、あなた達まだ4ランクじゃないんでしょ。お金は稼げる時に稼ぎなさい」
「はい!」
こうして私達は、一度スタンプホースが倒れていた場所まで戻ることにした。




