グルリネからペースへ 4
「ピー!」
(いってきまーす!)
時折、ミドリに飛んでもらう。
ミドリに空から木の実を見つけてもらって、そこから栄養と水分を得るのだ。
今回の道程は水を得られる場所が少ない。だから、木の実を簡単に手に入れられるミドリにその役目をお願いした。
ミドリでは一度に持ってこられるのは一個か二個までだけど、それでもとてもありがたかった。
「ピー!」
(ただいまー!)
「おかえり、ミドリ!」
「にゃー」
(待ってたぜ)
「きゅー!」
(おかえりです!)
「ピー!」
(また良さそうなの取ってきたわ!)
「ありがとう。早速いただくわ」
ミドリはこちらの要望通り、水分多めの果物を見つけて取ってきてくれた。ありがたい。これでしのぎながらペースまで行けそうね。
ちなみに関所でも水は買えるらしかったけど、凄く高かった。あいつら足元見すぎ。私達にはミドリがいてくれて助かった。
「もうだいぶ歩いたわね。もうすぐペースに着くと思うから、そこまで頑張ってね」
「ピー!」
(ええ、もちろんよ!)
「にゃあ」
(このまま骨のあるモンスターは出ないのかな)
「きゅー」
(ボクは手強いモンスターは見たくないです。危ないので)
「道沿いを歩いてるし、きっと強敵とは会わないわよ」
前はダークネスウルフなんかとも出会ったけど、道沿いはよく冒険者達なんかが通る。危ないモンスター達は彼らの力で狩り尽くされていると考えていいだろう。
「さて、それじゃあそろそろ、皆でごはんにしましょう」
「にゃー」
(俺もうまずい飯飽きたー。魚くれー)
「ごめんね、モエル。町まで我慢。ちゃんと食べないといざという時力が出ないから、食べて」
「きゅー」
(同じ味が続くのは結構きついですねー)
「ピー!」
(私は好きよ、ごはん!)
「そう言ってくれると助かるわ。ミドリ」
といっても、たしかに数日ぶっ続けで同じ保存食だ。
これは、町に着いたら豪勢なごはんを食べるしかないわね。ちょっとくらいなら贅沢しても大丈夫でしょ。
その翌日のことだった。
道の真ん中に、スタンプホースが倒れていた。
スタンプホースは血まみれ。でも血はその周りにもあった。
これは、誰かが戦った後?
「これは、激戦ね」
「にゃあ」
(なんだ、もう戦い終わった後か)
「きゅー」
(戦いが避けられて良かったですね)
「ピー!」
(早く先を行きましょう!)
「ええ」
でも、このスタンプホース、ちょっと気になる。
倒したのはいいけど、剥ぎ取り部分があまりないわ。切り取られるのは、耳、だけかしら?
スタンプホースの他の素材がいらなかったのかしら。けど、スタンプホースと激戦を繰り広げるレベルなら、きっと残りの素材も貴重よね。
それに、これ、まだ新しい。
ひょっとしたら、まだ近くにこれを倒した人たちがいる?
だとしたらその人達、かなり怪我をしているかも。
もしそうだとしたら、大変だ。回復できる手段があればいいのだけど。
「皆、ちょっと急いで行くわよ」
気の所為だったら、それでいい。町への到着が少し早まるだけだ。
私は気持ち急ぎ足で、先を急いだ。
悪い予感は的中した。
やがて前方に、冒険者たちとモンスターを見つけた。
冒険者は3人。倒れているのが一人、立っているのが一人、そして、ワンドッグと戦いの最中なのが一人。
「うー、ワンワン!」
「あっち、いってえ!」
どうやら、声からして戦っているのは少女のようだ。私より少し若いかも。しかも、持っているのは剣じゃなくて、杖。
あの子は魔法使いのようだ。そんな子が接近戦?
危険かもしれない。
でも幸いだったのは、相手がワンドッグ一匹だけだったこと。そして、私達が間に合ったこと。
「ミドリ、ワンドッグを倒して!」
「ピー!」
(わかったわ!)
ミドリは期待通り、木魔法でワンドッグを簡単に倒す。
すると、私達に気づいた少年少女がこちらを見た。
「あなた達、もう大丈夫よ。私達は冒険者、味方よ!」
「助けてください!」
駆けつけながら声をかけると、少女が即座にそう言った。
よく見ると少女は泣いていた。
「ポリシャが、ポリシャが目を覚まさないの!」
「この倒れてる人ね!」
「そう。お願い、助けて!」
「シャイン!」
「キュー!」
(了解、回復魔法ですね!)
シャインはすぐに応じてくれた。
倒れている冒険者に近寄って、すぐに回復魔法をかける。
「キュー!」
(はい、これで大丈夫ですよ!)
「良かった。この人、ポリシャはもう無事よ」
「良かった」
少女はそう言うと、座り込んだ。
「すまないが、俺の怪我も治してください」
「ええ、いいわ」
「キュー」
(今度はこっちですか。まあいいです。数少ないボクの出番だから!)
シャインは立っていた少年も回復する。
すると少年はかばっていた片足で地面を踏みしめて、深く安堵の息を吐いた。
「助かった。歩ける」
「あなたは、足を怪我していたのね」
「ああ。ワンドッグが出てきても、手も足も出なかった。助けてくださり、本当にありがとうございます。ポリシャのことも」
「ええ、次からは気をつけてね」
「あ、あの、助けていただいたお礼ですが」
そう言った少女も、見ると肌に傷がついていた。
「あなたも怪我してるじゃない。シャイン。この子もお願い」
「キュー」
(わかりました。回復魔法ー)
よし。少女の傷も無くなった。これでよし。
「あ、ありがとうございます」
「ええ。話は、あるきながらしましょう」
「はい。ポリシャ、起きて」
少女は倒れている冒険者の頬に触る。
それはまるで、とても大切なものを触るようだった。




