グルリネからペースへ 1
「なるほど。ブルークリスタルドラゴンですか。聞いたことはありませんね」
「そうですか」
「ここから南西にある山に、レッドサンダードラゴンが住んでいるという噂もありますが、おそらく関係はないでしょうね」
「たぶんドラゴン違いだと思います」
「見つかるといいですね」
「はい」
「では関所を通るなら、通行許可証を発行します。それでしたらすぐに通れるはずです」
「あ、ありがとうございます」
「許可証発行に50シクルかかります」
「あ、はい」
やっぱり無料サービスとかないわよね。
「あ、許可証が無かったらどうなるんですか?」
「詳しくは知りませんが、関所を通るのにそれなりの時間がかかるかもしれません。ですが必ず必要なものというわけでもありません」
なるほど。
「買います」
50シクルくらいならまあ、気軽に出せるしね。
「では、少々お待ち下さい」
「はい。図書室で調べ物をした後もらってもいいですか?」
「もちろんかまいませんよ。図書室は2階です」
「はい」
こうして私は、ホクア領について少し調べた。
資料を探して読んでみた結果、簡単な地図と、ホクア領のモンスター情報を知ることができた。
領地の境界線を越えると、現れるモンスターも変わるらしい。
定番のスライム、ワンドッグの他に、大きなカエル、アースフロッグ。凶暴な馬、スタンプホース。雲の体を持つ、クラウドマン。
どれも力があるパワータイプらしく、力比べはしない方が良いらしい。でも、調べてわかったことが1つ。
ホクア領に行けば、鳥モンスターがいなくなるのね。
それは私にとってラッキーだった。鳥モンスターとは戦いづらいから、モンスターが変わるのはありがたい。
ちゃんと討伐証明部位も調べておく。アースフロッグは舌先が討伐証明部位らしい。あんまり触りたくないなあ。
一通り調べ終えたので、私を待つのを飽きているモエル達と一緒に冒険者ギルドを出る。その時に受付嬢から通行許可証ももらい、ついでに保存食等が買える、旅の準備のための店も教えてもらった。
後は、ちょっと町を見ながら買い物。この町のことも気になるけど、やっぱり冒険者として活動できない分、あまり遊んではいられない。
このまま次の旅の準備ができれば、明日にでもすぐにホクア領へ出発しようかな。
今日もお風呂に入ったら、気分も更にリフレッシュできるだろうし。
夕方になる頃には、買い物も終わった。
宿屋スリムスカイに戻ってお風呂を堪能すると、ちょうどカルファも帰ってきた。
ごはんを一緒に食べながら話をすると、カルファはもうこの町でなんとかやっていけそうとのこと。
いや、カルファもう、この町でやっていけるの?
ちょっと早すぎない?
でも、それだけカルファに実力があったということだろう。ただ、まだ出会いは無いとのこと。
やっぱり、そういうのは運次第よね。どうやって見つけるのかはわからないけど、頑張って見つけてほしい。
私も、明日にはこのグルリネを発つことに決めた。そうカルファに言うと、カルファは見てわかるくらい落ち込んでくれた。
「それは寂しいですね」
「寂しがってどうするのよ。本当なら私達はもう、縁も無いんだから」
「そうだとしても、俺は二リハさんが好ましいです。今まで守ってもらいましたしね」
「これからは守る人を見つけるんでしょ」
「そうですね。好きな人を守れるように、なります」
「その意気よ」
「二リハさんも、気をつけてくださいね。二リハさんが強いことはわかっていますが、それでも、心配ですから」
「いつか私の旅が終わったら、気が向いたらあなたを訪ねてあげるわよ。だからその内、また会いましょう」
「はい。絶対ですよ!」
「ええ。たぶんね」
たぶん、私はヨツヘインからもグルリネからも、もっと大きく遠ざかると思うから。
だから、戻ってくるとしても、やっぱり時間がかかるのよね。
でも、可能性は0じゃないから、ここにまた戻ってくる日も楽しみにしよう。
ジュアラともまた、会いたいしね。
「お互い、また会う時は幸せになっていましょう」
「はい。絶対ですよ!」
こうして私達とカルファは、夜を一緒にして、翌朝別れた。
そして私の旅は、まだ続く。
朝早くから出発した。やはり朝早い内から動く方が良いだろう。
ホクア領へと歩いていく。やはりベッドが良かったからか、足取りは軽い。
けど、今日から野宿か。まあ、まだ暑い日が続いてるから、それほどきつくはないか。
次の町のペースまで、頑張って歩こう。
やはり鳥モンスターはミドリが倒していき、順調に進む。
そして第一回目の野宿、私達はなんとか夜を過ごした。
もうベッドが恋しくなっているが、贅沢はいけない。グルリネに戻っても仕事はろくにできないし、戻ってもカルファに笑われるだけだ。
このまま苦行を続けよう。
出発して二日目。
「ギャエー!」
「ギャエー!」
「ギャエー!」
私は3羽のハードバードと一度に遭遇した。
この強さのモンスターが群れているのは厄介だ。私達のチームワークが試されるわね。
「皆、気をつけて。久しぶりの強敵よ!」
私は声をあげながら剣を構える。大丈夫、相手の攻撃手段は体当たりだけだ。私とは相性が良い。
けれど、ハードバード達は私を囲うように三方向から突撃してきた。
「く、一度に来られたら、1羽しか相手できない!」
幸い私の装備は防御力が高いから、耐えられると思うけど。でも、痛いのは嫌だ。
「ピー!」
(ここは私に任せて!)
するとミドリが飛び上がって、木魔法を一羽に向けて攻撃した。
「ニャー!」
(火魔法!)
モエルももう一羽に攻撃してくれる。けれどそのハードバードは火魔法を避けた。
「パワーアップ、ゲイザースラッシュ!」
私は正面に見据えたハードバードを、一撃で撃破。やっぱり、一羽が相手ならなんとかなる!
けど、残りの2羽は。
「ギャエー!」
「ギャエー!」
どうやら標的を私から変え、一羽飛び上がって私達から離れたミドリを狙って、空中戦を繰り広げようとしていた。
でも、ミドリよりもハードバードの方が明らかに速い。これは、まずい!
「ピ、ピー!」
(きゃ、きゃー!)
案の定、私達は何もできない内に、ミドリをやられてしまう。
「ミドリー!」
思わず叫んでいる内に、ミドリが空から落ちてきた。




