グルリネ 3
宿の部屋もいつもよりきれいだった。
ベッドもふわふわだった。凄い。
「今までで一番の宿屋かも」
というか、最高の生活空間かも。
お風呂あるし。
「にゃー!」
(おお、今日の寝床は凄いぞ!)
「きゅー」
(気持ち良いですねー。でも気持ち良すぎて逆に寝づらいかも)
「ピー」
(確かに爪の感触が不思議ね)
「あ、ミドリ。ベッドに爪で穴開けないでね」
「ピー」
(はーい)
「これが旅の終わりですか。まだ何もできていませんが、気分は良いですね」
「明日から頑張ってね。カルファ」
「はい。明日から頑張ります!」
「じゃあおやすみ」
「はい。おやすみなさい」
「にゃー」
(おやすみー)
「きゅー」
(おやすみですー)
「ピー」
(おやすみ)
明かりを消して、ベッドに入って、寝た。
私の意識は、すぐに夢の中へ誘われた。
すっごい気持ちよく目覚められた。
「んんーっ、気持ち良い朝ーっ」
「にゃあ」
(むにゃむにゃ)
「きゅー」
(先輩、朝ですよ)
「にゃああ」
(俺もうここから出ないいい)
「きゅー!」
(冗談はよしむらさんです!)
「ピー?」
(誰?)
「二リハさん、おはようございます」
「おはよう。カルファ。カルファも、早いわね」
「ええ。せっかくのグルリネですから。それに、今日からまずは生活できるようにならないと!」
「あてはあるの?」
「仕事場を貸してくれるっていう話を事前にもらっていて、まずはそこに行ってみます」
「なるほど。頑張ってね」
「はい!」
「彼女、できるといいわね」
「はい。それで、報酬なんですが、せっかくなので一緒に冒険者ギルドへ行ってくれませんか?」
「ええ、それが良いわね。わかった、一緒に行きましょう。ちょっとまってね」
私はまだ布団の中で丸まっているモエルに言った。
「モエル、朝ごはんよ」
「にゃあ!」
(食べる!)
結局モエルは、魔法の呪文を唱えたら飛び起きた。
単純なのが可愛い。
「よし。それじゃあ行きましょう」
「はい。やっぱり皆良い子達ですね。二リハの仲間は」
「自慢の仲間よ」
私達はすぐにごはんを食べて、冒険者ギルドへ行く。
そこで私は予定通り、カルファから6万シクル受け取った。
「じゃあ、俺はこれで」
「ええ。私達はここに用があるから」
「わかりました」
これでカルファと別れる。けど宿屋でまた会った時、今日の成果を聞いてみよう。
そして、私も良い報告ができるといいわね。
まずは、一通り掲示板の依頼に目を通した。
「やっぱり私達がやれそうな依頼はないわね」
討伐対象が全部鳥モンスターだ。
採取依頼もあるけど、依頼の品はこのあたりに自生する植物らしいし、調べてから探しても時間がかかって大変よね。
やっぱり、グルリネで仕事はできないかな。
となると後は、隣の領地のホクアまで行きたいわけで。
そっち方面のモンスター情報はあるだろうか。
図書室を借りるって言う前に、受付嬢に聞いておこう。
「ようこそ。冒険者ギルドへ」
「あの、ホクア領に行きたいんですけど、そっちのモンスター情報とか地図とか、ありますか?」
「ええ、ございますよ。ですがその前に、ギルドカードを確認させてください」
「はい」
私はすぐにギルドカードを渡した。
「ありがとうございます」
受付嬢はさっと見て、すぐに返してくれる。
「これでいいんですか?」
「はい。規則ですので。二リハ様は本日、カルファ様からの護衛依頼を成功していましたね。それを憶えていました」
「なるほど」
「それでホクア領へ行きたいということでしたが、その点について二リハ様に伝えておくことがあります」
「なんですか?」
「残念ですが、ホクア領に行く道には、村も宿屋もありません。更に歩いて5日はかかります」
へ?
「道の途中に関所はありますが、そこでも寝泊まりはできません。食料も、非常事態であれば売ってもらえません。更に、そこからまた5日歩かなければ、ホクア領の町、ペースに着きません。その点をご了承ください」
「な、なんでですか?」
「各領主様のご命令で、領地の境界線近くには人をおかないことにしているのです。これには、野党や犯罪者の警戒、領主間での戦いがあった時の備えという理由があります」
「野党、犯罪者ですか?」
戦いというのは、いまいち腑に落ちないけど、犯罪者というのは、わからないでもない。
でも、どうして宿がないのが犯罪者対策に?
その疑問に、受付嬢はすぐに答えてくれた。
「宿屋も村も無ければ、彼らがそこを襲う、隠れることはできません。隣の領地に逃さないという工夫でもあります。領地内にいれば、捕まえやすくもなります。そのために宿を置いてないのです」
「なるほど」
犯罪者が領地からにげだせなければ、捕まえやすい、か。
たしかに、理にかなっている気はする。
「でもそれなら、町や村の警備を強化すればいいのでは?」
「たしかにそれもごもっともですが、村の警備の仕事等は特に希望者がいないのです。二リハ様は警備の依頼があればおやりになりますか?」
うーん、村の警備か。
いくらもらえるか、だけど、でもお金抜きに考えたら、町の暮らしの方が良いかな。
「なるほど。わざわざ村に来てくれる人も少ないんですね」
「はい。緊急事態ならいざしらず、平時ではただ滞在するだけになりますからね。依頼料も町や村の数だけ上がりますし、その手はあまり現実的じゃないのです」
「なるほど」
たしかに、千人の兵士を100の町や村に均等に配置したら、10人しか配置できない。
配置したとしても、その10人で町を、いや村すら守れるかどうか。強化というには、あまりにも頼りないかも。
何より、千人集めたら千人分の給料、一万人集めたら一万人分の給料だ。それをずっと払い続けたら、かなりのお金が必要になる。
だったら守るべき村や宿をそもそも作らないというのも、わからない話ではないか。
でも、それでいいのか、領主。
「では、ホクア領までの道のりやモンスター情報を教えてください」
「わかりました。それらの資料は全て図書室にあります。ご利用ください。ですがその前に、ホクア領へは何の用で行かれるのですか?」
「初恋の人を探しに行くんです」
私は受付嬢にもシイドと出会った話をした。




