グルリネ 2
宿屋はすぐに見つかった。
門のすぐ目の前にあった宿、スリムスカイ。試しに入ってみる。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。2人と三匹、泊まれますか。モンスターテイマーなんです」
「あら、可愛い。宿を傷つけないならいいですよ。部屋は空いてます」
「じゃあ、ひとまず2泊。で、いいわよね。カルファ?」
「はい。構いません。ですが、もちろん俺たち、別の部屋ですよね?」
「え?」
そういえば、今まで一緒に泊まっていたから、そこらへんのことは全く考えなかった。
少し考えて、提案する。
「今回まで、一緒にしない?」
「え、いいんですか?」
「だって、宿代半々だし。そっちだってそんなに持ってるわけじゃないんでしょ?」
「はい。それはそうですが。でも、本当にいいんですか?」
「今更よ。むしろこっちからお願いしたいんだけど」
「わかりました。それじゃあ、ご一緒させてください」
「というわけで、泊めてください。食事付きで」
「かしこまりました。では部屋へ案内します」
「はい。あとそれと、銭湯は近いですか?」
まずは汗を流したい。大量の温かいお湯は町くらいでしか使えないものね。
「銭湯ですか。それならここで済ませてしまってはいかがですか?」
「え?」
「実は当宿屋では、お風呂というサービスを提供しているのです。一人用ですが、全身お湯に浸かることができますよ」
一人用の、銭湯?
何より、銭湯まで歩かなくていい?
「それじゃあ、使わせてください」
「はい。一回10シクルです」
しかも値段もお手頃。ここは大当たりの宿屋だ。
早速お風呂を使わせてもらう。
それは、大きな木桶だった。
大人が立って入る形。湯気がもわもわ立ち上っていて、凄く気持ちよさそう。
なにより、初めて見るお風呂に気分が高揚する。
「よしっ」
入ろう。久しぶりのお湯だ。
「にゃあー」
(またこれかあ)
「きゅー!」
(先輩、いい加減慣れましょうよ!)
「ピー?」
(なんでこの水、煙が出てるの?)
「温かくしてあるからよ」
「ピー」
(へー)
それじゃあまずはお湯の外で体を洗う。
お湯にはなるべく汚れを入れない。銭湯のマナーだ。
周りには誰もいないけど、後からカルファも入るし、しっかり注意しておこう。
そして皆をちゃんと洗い終えたら、いざ、モエルとシャインを抱えて。
入浴。
「はああああああ」
生き返るー。
モエルとシャインは抱えてないと溺れちゃうから、ずっと抱いたままだけど。
「幸せー。依頼も終わったし、凄い良い気分」
「にゃあ!」
(二リハ、ちゃんと俺を持ってろよ、絶対だぞ!)
「きゅー」
(いざとなったら泳げばいいんですよ)
「にゃあー!」
(いざってなんだー!)
「ピー?」
(ただ入るだけ?)
「ええ。ミドリも入れる?」
試しにそう言ってみると、ミドリは片足をお湯に入れて、すぐに引っ込めた。
「ピー!」
(熱くはないけど、不思議な気分!)
「ゆっくりでいいのよ。入れるなら、入って温まってちょうだい」
「ピー」
(ゆっくり、ゆっくり)
ミドリは何度か足を入れると、やがてぽちゃんと全身入った。
そして、ぷかーんと浮く。
「ピー」
(これ凄いー)
「ミドリもお風呂気に入ってくれたら良かったわ」
「ピー」
(体がポカポカ~。こんなの初めてー)
「依頼の後のお湯って、最高」
しかも、ここには他の人は誰もいない。
小さいながらも、お湯独占。
ふふふ。ちょっとした至福の時だ。
「10シクルで良い気分になれるなんて、最高ね」
まあ、10シクルでも、故郷では稼ぐの大変だったけどね。
町って贅沢なんだなー。
ひょっとしたら、私がまだ知らないだけで、他にも贅沢があるんだろうか。
ちょっと気になる。けど。
「この町は、なるべく早く離れるけどね」
最初は少し滞在する予定だったけど、肝心の周辺のモンスターがほとんど鳥型というのにはまいった。
私じゃほとんど役に立たないし、ここに留まるのは無理ね。
お風呂、次の町にもあるかしら。
まあ、銭湯があればいいか。
でも、お風呂。贅沢。気に入った。
「旅が終わったら、私もお風呂つきの家に住みたいな」
そうすれば、毎日この気分を味わえる。
故郷にもあればいいのに。いや、あそこじゃこれだけの水を集めるだけでも一苦労か。
「旅して良かったあ」
そして、これからもそう思えるようにしていきたいわね。
なにせ旅の目的は、シイドを見つけるまで終わらないんだから。
終わらないわよね。絶対。
「にゃー!」
(二リハ、絶対放すなよ、放すなよ!)
「きゅー」
(良いお湯ですねー)
「ピー」
(気持ち良いー)
「そうねー」
私達は、思う存分お風呂を堪能した。




