ミドリ 3
今日は運が良い日だ。
久しぶりに良い獲物を見つけた。
ターゲットは人間2人。そこには小さいモンスターも二匹いたけど、そっちはついでに倒せたらでいい。
久しぶりの肉だ。もうすでにくちばしの中にはよだれがたまっている。
「ピイーー!」
(木魔法ー!)
私は離れたところから攻撃ができる。特に真上をとれば木魔法は更に強力になる。
獲物は私の攻撃を受けてもまだ逃げ続けているけど、なに、焦る必要はない。どんなにタフな相手でも、連続で受けていればいずれやられる。
見たところ、人間達にこちらを攻撃できるやつは混じっていない。一度飛んできた火も、私に近づいている内に消えてしまった。これなら一方的にやつらを狩れる。
私はじっくり時間を使いながら、獲物を追い詰める。一方的に相手を狩るのは良い気分だ。もっとこの狩りを楽しむとしよう。
けれど、私の幸運が尽きるのはここまでだった。
「ギャエー!」
気がつくと、私のすぐ近くにまでやつが近づいてきていた。
ハードバードだ。私より強いモンスターで、そのうえ凶暴。相手が私だろうと、そして私より強い相手だろうと、誰彼構わず襲いかかる戦闘狂だ。
そんなやつに、私はいつの間にかロックオンされていた。
「ピイー!」
(くるなー!)
しまった。気づくのが遅すぎた。元よりハードバードの方が素早い。それだけでなく攻撃力も防御力も相手の方が上。唯一勝っているところは魔法が使えるところだけど、そもそもハードバードに私の魔法は通じない。
とっさに回避しようとする。けれど避けきれなかった。
ハードバードにぶつかられ、特に翼を削られる。
とんでもなく痛かった。そして、これ以上ろくに動けなかった。
景色が落ちていく。けれどそれ以上に痛い。動けない。体が悲鳴をあげている。痛すぎて何も考えられない。
景色が止まった。体に大きな衝撃があった。息が詰まる。
なにより、死にたくない。
私は必死に動こうとする。立とうとする。飛ぼうとする。けれどそのどれもができなかった。何一つできない。敵はまだいるのに。
私はゾッとした。こんなところであっけなく死ぬなんて、嫌だ。
なんとか立とうとした。けれどできなかった。ちくしょう、くやしい。なんで私が、こんなめにあわないといけないんだ。
狩られるのは、獲物の方だ。ハードバードなんて出てこなかったら、全てうまくいっていたのに。
そう思っていると、ふと、獲物の一人がこちらへ来るのが見えた。
狩られる。そう思った瞬間、やつに木魔法を放った。
けれど人間は私の攻撃を、この距離からでも簡単に防いだ。
ダメだ。私にはもう、打つ手がない。
狩る側と狩られる側が、逆転してしまった。
嫌だ、怖い。
死ぬのは一番嫌だ。痛いのよりも嫌だ。
まだ食べたい。まだ遊びたい。まだ楽しみたい。まだ生きていたい。
死にたくない。こんなところで終わるのは嫌だ。私はもっと、空を飛んでいたい。
自分に最後の時が来ることが恐ろしすぎて、思わず目をつぶった。
すると待っていたのは、私をゆっくりと捕まえる手だった。
「テイム」
次の瞬間、私の中に何かが入ってきた。
それは、温かいぬくもり。体の痛みを和らげるような、初めての気持ち。
気がつくと、私は人間に頭を撫でられていた。
私は今起こっていることがわからなかったが、ただ1つ理解できたのは、このぬくもりを受け入れるか、それとも拒むか。
私にはそれだけができた。
一瞬だけ考える。でも、すぐに答えは出る。
せめて、今ここで死ぬのだとしても、ただ痛いまま死にたくはない。温かいまま死にたい。
だから、私はこのなにかを受け入れた。
すると、信じられないくらいすんなりと、不思議なぬくもりは私の中に入っていって、今までの私を変えた。
といっても、私の体はどこも変わっていないけど。けどなぜか、私はこのぬくもりと、この人間を、信じられるようになった。
「ピィ?」
(この感じは、何?)
「これは、私とあなたが歩み寄れた証拠よ」
人間はそう言った。
言われた意味はよくわからなかったけれど、この時から私は、一羽じゃなくなった。
それはすぐに理解できた。




