ミドリ 2
「カルファ、きついかもしれないけど、走り続けて!」
「はあ、はあ、はいっ!」
私達は走りながら緑色の鳥から逃げている。
けれど、鳥はずっとこちらを追い続けてきた。
しかも、狙いをかなり正確めに、木の枝を私達に落としてくる。
「く!」
今また、左肩に木の枝が当たった。
鎧じゃなかったら深く突き刺さっていただろう。鳥のモンスター、しかもこれ、魔法よね。厄介すぎる。
「にゃー!」
(ああもう、卑怯すぎるー!)
「きゅー!」
(相手はずっと上にいるんですよ、仕方ありません。なんとか逃げ切りましょう!)
シャインがそう言って、走りながらカルファを見る。
「きゅー」
(この人間を囮に使ったら、簡単に逃げ切れるかもしれませんが)
「にゃー!」
(それだ!)
「シャイン、モエル、それはダメよ。なんとかこのまま逃げ切るの」
「にゃー」
(はーい)
「きゅー」
(はーい)
幸い、上からの攻撃はカルファ以外危険なものではない。このままなんとかなればいいけど。
そう思っていると、私達の上に鳥モンスターが一羽増えた。
黒く大きい鳥で、緑色の鳥よりもずっと大きい。そいつが緑色の鳥に迫って、ぶつかった。
「ギャエー!」
「ピイー!」
え?
思わずあっけにとられる私。敵の増援じゃ、ないの?
思わずその光景を見続けていると、一撃でやられた緑色の鳥が落ちてきて、私達の後ろに落ちた。
けれど、それと一緒に、大きい鳥も急降下して、私達に近づいてきた。
「カルファ、私に隠れて!」
「はい!」
すかさず注意を払う。狙いは、私か。
「ギャエー!」
大きい鳥が一直線にぶつかってきた。
「ハードガード、パワーアップ、ゲイザースラッシュ!」
私はぶつかられるのを覚悟で、盾技と剣技を使う。帽子の魔法もプラスだ。
それ!
羽をぶつけてきたので、盾でそれを防ぎつつ、胴体を狙って斬る。
私の渾身の一撃は、大きい鳥の首あたりを深く切り裂いた。
大きい鳥は、そのまま地面に転がる。
私はぶつかられた衝撃に耐えつつ、モエルに言った。
「モエル、火魔法を!」
「にゃー!」
(やっとだぜー、それ、火魔法!)
大きな火が大きい鳥にぶつかる。
「ギャエー!」
大きい鳥は断末魔をあげて、そのまま動かなくなった。
ふう、やった。どうにかなった。
「突然の事態だったけど、どうにかなったわね」
「はい。二リハさん、ありがとうございました」
「さて、と」
大きい鳥の方は倒せた。
あとは、緑色の鳥だけど。
そっちも地面に倒れたまま、動かない。いや、少しピクピク動いてる?
「ピ、ピイィー」
生きてはいるみたい。けど、羽も体もひどく傷ついているようだ。
もうろくに動けないだろう。これで完全に脅威は去ったようだ。
けど。
「あいつ、どうしようかしら」
無論、倒さなければならない。
緑色の鳥の傷が治ったら、また誰かを襲うだろう。それは避けなければならない。
けど、もう相手が戦えないとなると、こちらの戦意も少なからず落ちる。
仕方ないけど、やるしかないわよね。
「にゃー」
(俺があいつにとどめを刺してこようか)
「うん。お願い、モエル。いえ、ちょっと待って」
私はふと、荷物にテイムのマジックアイテムがあることを思い出した。
眼の前にはもう動けないけど、まだ生きているモンスター。
ちょうどいい、とは思いたくないけど、ただとどめを刺すよりは、テイムの方が気分が良い。
「モエル、シャイン。私、あの子もテイムしようと思うの」
「にゃー」
(ふーん、いいんじゃね?)
「きゅー?」
(テイムってなんですか?)
「モエルとシャインみたいに、仲間になってもらおうと思うってこと」
「きゅー?」
(ふーん? まあ、二リハが望むなら。でも、ボク達を攻撃してきたやつが仲間になるんですか?)
「それは、まだ、わからない。やってみないと」
でも、これはチャンスだ。
私は荷物から、テイムの護符を取り出した。
「二リハさん」
「なに、カルファ」
「相手は動きませんが、それでも注意は忘れずに」
「ええ、わかってるわ」
私は少し決意を固めると、緑色の鳥に近づいた。
「ピ、ピィー」
やはりこの子は大分傷ついている。
しかし私が近づくと、それに気づいた緑色の鳥がこちらを見て、緑色の光を生み出した。
その光はすぐに尖った木の枝になって、私に向かって放たれる。
カルファに注意してもらっていて良かった。
私は盾でそれを防ぎ、思わず走り出そうとして、やはりこのまま歩いて近づくことにした。
正面から使われれば、相手の魔法は十分防げる。今大事なのはきっと、慌てないことだ。
「ピ、ピィ」
そう思っていると、緑色の鳥は今度は立ち上がろうとした。けれど、うまく立てない。
「動いちゃダメ。無理をしないで。大丈夫、敵じゃないわ」
「ピイィ」
声をかけてもきっと伝わらないだろう。けれど私は声をかける。
だって、この子はきっと、私達の新しい仲間なのだから。
十分歩ききって、私は震える鳥の眼の前でしゃがみこむ。
そしてまずは、やさしく抱き上げた。
「ピィ」
「テイム」
護符を使う。そして、頭をなでる。
「お願い、仲間になって。きっとあなたは、私達と出会うために今日ここに来た」
あるいは、私達が呼ばれたか。
どちらにせよ、後はこの子がどう思うか。
「ピィ」
テイムの光は広がり、そして、鳥の中に吸い込まれた。
「ピィ?」
(この感じは、何?)
やった。成功だ。この子の言葉がわかる。
「これは、私とあなたが歩み寄れた証拠よ」
私はそう言ってから、すぐにシャインを見た。




