グルリネへ 4
翌朝、早朝。
「おはようございます、二リハさん」
「おはよう、カルファ。ごはんを食べたら、行きましょう」
「はい、そうですね。一晩寝たらお腹が空きました」
「食べれる時に食べてください。夏はただでさえ食欲が湧きませんから」
「ええ、そうですね。ああ、あとは水か」
「井戸が宿屋の脇にあります。くんできてあげましょうか?」
「ああ、ありがとうございます。ではお願いします」
「はい」
お互い簡単に食事をとった後、私達はまた歩き出した。
道中、少し誤算があった。
1つは、ファイアブルームがその後3体出てきたこと。
「花を持ちきれない」
仕方ないとはいえ、持ちきれずもったいないというもどかしさが胸から湧き出た。
「カルファ、せっかくだから少し持ってきますか?」
「い、いえ。正直俺は、歩くだけで精一杯なので。荷物を増やすのはちょっと無理です。ごめんなさい」
「いいえ、こちらこそ無理を言ってすみません」
結局倒したファイアブルームはそのまま捨て置いた。むう、やっぱりマジックバッグ、欲しいかもしれない。
高額だけど、お金を貯めた方が良いんだろうなあ。
ひとまずは、カルファからもらう報酬の6万シクル、大事にしよう。
そしてもう1つの誤算だけど、こっちは結構深刻だった。
「ようやく着いた。宿に」
「そうですね」
旅を始めて2日目。私達は第二の宿屋にたどり着く。
村ではないので、まともな食事を取れず、今日も存分に休めない。
正直、ちょっと苦しい。カルファにとっては相当かもしれない。
「一晩10シクルだ」
宿にいた人にそう言われる。せっかくなので、この先のことを聞いてみることにした。
「あの。ここから村まではどのくらいですか。アラケルから来たんですが」
「ああ。もう1つ宿を越えたら着くよ。たまにいるんだよ。よく下調べしないで通るやつらが。まあ、ここで半分だから、もう半分頑張りな」
「あ、はい」
正直に言って、以前の護衛依頼のように、次の村が割とすぐにあるものだと思っていた。
保存食はまだあるけど、2日連続で日中あるき続けたのだ。ベッドも美味しい食事も無しで。これはキツイ。
「カルファ、体の方は大丈夫?」
「あ、はい。っつ」
「ちょっと、どこか痛いの?」
「え、ええ。ちょっとだけ」
「見せて」
「はい」
カルファは足を私に見せた。するとカルファの両足は赤く晴れていた。
「結構酷いわね。よくここまで歩けたわね」
「ちょっと、あるき過ぎたかもしれません。ダメですね、まだ旅は始まったばかりなのに」
「ダメなのは怪我をしたことを言わないことです。私はあくまであなたの護衛。あなたがちゃんとグルリネまでたどり着けないと意味がないんですよ。もう無茶はやめてください」
「はい。すみません」
「手当てしたいけど、私が持っているのはポーションくらいだし。ん、ポーション?」
私は思わず、シャインを見た。
「きゅーきゅー」
(うわあ、痛そう。これは大変ですねえ。ボクなら治せますよ)
シャインがカルファの足を間近で見て言う。
そういえばあなたがいたわね、シャイン。
「それじゃあシャイン、カルファに回復魔法、頼める?」
「きゅー!」
(任せてください、それ、回復魔法ー)
すると私達の眼の前で、カルファの足がきれいに治った。
「凄い。完全に治った」
カルファが目を丸くしている。
「シャインの回復魔法が効いたみたいです。これでもう大丈夫ですね」
「あ、はい。ありがとうございます。助かります!」
「いいですか。もしまた痛みを感じたら、言ってください」
「はい。わかりました」
うちにはシャインがいるので。
「きゅー」
(そうですよ。珍しくボクの出番だったんですからね)
「シャイン。ありがとう。助かるわ」
「きゅーっ」
(ボク、これぐらいしかできることないのでっ)
「やっぱりあなたがいてくれて良かった」
「にゃあー!」
(俺も力になるんだからなー!)
「ええ。またいざという時は、よろしくね」
「にゃー!」
(そうだとも!)
私はふたりをなでてあげる。
そうしていると、カルファが言った。
「二リハさんは、凄いですね」
「えっと、カルファ、突然どうしました?」
「二リハさんは戦いもできて、シャインのおかげでこういう怪我も治せる。旅もできる。俺は、二リハさんに守られていても、一人じゃグルリネまで歩くことすらできません」
そんなこと言われても。
そんなこと、普通の人であるなら、当然だ。
「カルファ。カルファには私達がいます」
「え?」
「私が守って、シャインが足を治してくれて、モエルだっていざという時戦ってくれます。それで旅ができればいいじゃないですか」
「そう、ですね」
「なんでも一人でできる人なんて、そんなにいないんですよ」
そう言うと、カルファは私を見つめた。
「二リハさん」
「はい、カルファ」
「俺は、二リハさんみたいな人と、一緒になりたい」
「ごめんなさい。私には他に好きな人がいますので」
人というより、ドラゴンだけど。
カルファは笑った。
「ええ、そうでしたよね。ごめんなさい。俺も、無茶を言っていることは承知の上でした。けど。本当に、そう思える人と、一緒になりたいです」
「見つかると、いいですね」
「はい。いえ、絶対に見つけます。なんとしても!」
良い返事だ。本当に彼に良い人が見つかればいいな。
「さて、それじゃあ今日はごはんを食べて寝ます。十分に体を休めないと」
「ええ。また明日、あるきましょう」
「はい!」
彼の恋はまだ見つからず、それでも燃え上がっている。
同じ恋の旅をする者同士として、私は、彼を無事グルリネにつれていきたい。と、最初のときより、少し強く思った。




