グルリネへ 2
保存食も必要だけど、私にはテイムのマジックアイテムも必要だ。
また、道中出会いがあるかもしれないから。
というわけで、魔法使いギルドでテイムの札を3つ買った。
結構高い買い物。けれど、今の稼ぎならなんとか出せる。
あとは夏だから水袋をもう1つ買い足して、準備を終える。
最後に銭湯にも寄っておこう。
朝。町の門へと向かうと、既にカルファが待っていた。
「あ、二リハさん、おはようございます!」
「お待たせしました」
「いえいえ、とんでもない。無事グルリネにつければそれでいいんです。では行きましょうか!」
「にゃー」
(今日はこいつと一緒なのか)
「きゅー」
(戦力の足しにはならなそうですねー)
いやいやシャイン。今回は私達が戦力のあてだから。
まあ、カルファ自身も戦えた方が良いけど。
「ところで、カルファはモンスターと戦えますか?」
「いえ、全然。勝てるとも思ってませんよ。武器なんて持ってきてないし、そもそも持ったことすらありませんし!」
そうですよね。
「わかりました。それではなにかあればすぐに頼ってください」
「はい、どうかお願いします!」
「ところで、カルファ」
「はい。なんでしょうか?」
「荷物はそれだけですか?」
私には、カルファが背負い袋を1つ背負っているようにしか見えない。
「ええ。これだけですよ?」
「あの、馬車とかは」
「いいえ、歩きです。道のりは遠いですが、きっとなんとかなります!」
「そうですか」
どうしよう。カルファ、思ったより旅を簡単に考えているかもしれない。
けどまあ、きっと大丈夫、かな?
「わかりました。では行きましょう」
「はい!」
こうして私達は、カルファとともにグルリネへと向かって歩き出した。
まだ朝なので、猛暑の照りつけは無い。
「きゅー!」
(またいた、ファイアグラスがいますよ!)
「にゃー」
(あいつ俺の魔法効かないから鬱陶しいなあ)
「発見ありがとう、シャイン。カルファ、またファイアグラスが現れたから気をつけて!」
「はい。そうします!」
「きゅー!」
(こっちです!)
町から出て早々に、何度もファイアグラスと遭遇する。
もうファイアグラスは怖くないけど、頻繁に出てくるのは面倒だ。これがアラケルの夏か。
ある意味、ここを離れることを決意して正解だったかもしれない。
私は手堅く魔法の盾を構え、火魔法を防ぎきってから剣で切り裂いた。
これでファイアグラスは動かなくなる。簡単だが、得るものが無いので少し手間だ。
今回は進むスピード優先で、ファイアグラス程度の素材は手に入れないことにした。それより暑さに耐えながら次の村や宿を早く目指した方が良い。
カルファの体力も、どれだけもつかわからないしね。
「それにしても、強いですね、二リハさん。やっぱり4ランクともなると心強い!」
カルファは汗を流しつつも、笑顔でそう言った。
「ええ。この程度の相手なら、なんとでもなります。でも、もっと高ランクのモンスターが出た時は、そちらも本当に注意してください。というか、こちらを気にしないで逃げてください」
「わかりました。もしかすると、出てくるかもしれないんですね」
「ええ。それに、私の知らないモンスターも。このあたりのことはまだわかりますが、ここから先は私も未見ですから」
初めて見るモンスター、特に知らないモンスターは、ランクすらわからない。どんな強さでも、多少のやりづらさはあるだろう。
そんな中、カルファを守りながら戦わないといけない。それはきっと、かなりハードなものかもしれない。
今回は他の冒険者がいないというのも、ハードルを上げている。
「にゃあ!」
(大丈夫。二リハは俺が守る!)
「きゅー!」
(ボクもいますから安心してください!)
「ええ。いざとなったらお願いね。モエル、シャイン」
「にゃー!」
(もちろんだ!)
「きゅー!」
(ボクもいつでも準備オーケーです!)
「二リハさんは、その子達とも話ができるんですね」
カルファは私達を見て言った。
私はうなずく。
「ええ。魔法のおかげで」
「魔法。すごいですね!」
「そうです。助かってます」
「動物と話せる魔法って、素敵ですよね。とても良いです」
「ええ。動物というより、モンスターですけどね」
「え、そうなんですか?」
「はい。カジーニャと癒やしラビットです」
「へえ。初めて見ました!」
カルファはまじまじとふたりを見る。
やはり、はたから見るとペットも同然なのだろうか。この子達は。
「ところで、二リハさんはどうして冒険者になったんですか?」
カルファはそう話を振ってくる。
だから私はいつも通り、シイドに助けられて恋をした話をした。
「へえ、それは運命ですね!」
「運命。ええ、たぶん、そうだったんだと思います」
「実は、俺も運命の旅を決めたんですよ!」
え?
「え?」
「俺、今まで恋人ってできたことがなくて、どうやって作るかもわからなかったから、ある日、占い師に占ってもらったんですよ」
「はあ」
「そうしたら、俺の運命の相手がグルリネにいるって教えてもらったんです!」
「それは」
どうだろう。
「ね、運命ですよね!」
「で、でも、まだ会ってないんですよね?」
「でも会えるからこそ、こうしてグルリネまでの旅を決めたんです。家庭を築けたら、そのまま向こうで幸せに暮らすのもありだと思っています!」
「そ、そうなんですか」
これは、もしかしたら、早まったかもしれない。私。
もし、私がこの依頼を受けなくて、他の誰も受けなかったら、カルファはきっと、ずっとアラケルにいただろう。
その方が、良かったのでは?
というか、グルリネに行く理由、それだけ?
「あの、アラケルを出て、本当に良かったんですか?」
「はい。だって運命の人と出会うことの方が、仕事なんかしてるよりずっと大事ですから!」
それはどうだろう。
「そう、ですか」
「にゃー」
(なんかこいつからダメな臭いがする)
「きゅー」
(奇遇ですね先輩。ボクもそう思いましたよ)
「ちなみに、運命の相手がグルリネでも見つからなかったら?」
「ええ。その可能性も万が一の可能性としてありますよね」
いや、ほぼ百%の可能性だと思う。
「その時は、待ちます!」
「待つ?」
「運命の相手を見つけるまで、グルリネで待ち続けます!」
「そうですか」
「ええ。その先に、俺の幸せがありますから!」
あるのか。いいや、私は気にしないでおこう。
でも、彼がどうなるかは知らないけど、1つ言っておこう。
「それは本当に、あなたの幸せですか?」
「え?」
「私は、シイドに会って恋を知ったから、旅ができる。でもカルファの旅は、本当にあなたの恋愛なのかなって」
「俺の、恋愛」
「私も人のことは言えないけど、恋って、誰かを求めることだから。あなたは顔も名前も知らない人を求めているけど、それでいいのかなって」
「それは」
「ごめんなさい。気分を悪くしたなら謝ります」
「い、いえ。そんなことありません。確かに、全然知らない人に会いに行くなんて、突然すぎますよね」
それっきり、私とカルファは黙った。
「きゅー!」
(二リハ、またあいつですよ!)
「わかったわ、ファイアグラスね!」
そして、すぐに戦いになる。
人のことなんて、言ってられないか。私の恋も突然だったし。
ひとまず私は、私の恋を続ける。それを強く思い続けよう。




