表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/226

グルリネへ 2

 保存食も必要だけど、私にはテイムのマジックアイテムも必要だ。

 また、道中出会いがあるかもしれないから。

 というわけで、魔法使いギルドでテイムの札を3つ買った。

 結構高い買い物。けれど、今の稼ぎならなんとか出せる。

 あとは夏だから水袋をもう1つ買い足して、準備を終える。

 最後に銭湯にも寄っておこう。


 朝。町の門へと向かうと、既にカルファが待っていた。

「あ、二リハさん、おはようございます!」

「お待たせしました」

「いえいえ、とんでもない。無事グルリネにつければそれでいいんです。では行きましょうか!」

「にゃー」

(今日はこいつと一緒なのか)

「きゅー」

(戦力の足しにはならなそうですねー)

 いやいやシャイン。今回は私達が戦力のあてだから。

 まあ、カルファ自身も戦えた方が良いけど。

「ところで、カルファはモンスターと戦えますか?」

「いえ、全然。勝てるとも思ってませんよ。武器なんて持ってきてないし、そもそも持ったことすらありませんし!」

 そうですよね。

「わかりました。それではなにかあればすぐに頼ってください」

「はい、どうかお願いします!」

「ところで、カルファ」

「はい。なんでしょうか?」

「荷物はそれだけですか?」

 私には、カルファが背負い袋を1つ背負っているようにしか見えない。

「ええ。これだけですよ?」

「あの、馬車とかは」

「いいえ、歩きです。道のりは遠いですが、きっとなんとかなります!」

「そうですか」

 どうしよう。カルファ、思ったより旅を簡単に考えているかもしれない。

 けどまあ、きっと大丈夫、かな?

「わかりました。では行きましょう」

「はい!」

 こうして私達は、カルファとともにグルリネへと向かって歩き出した。

 まだ朝なので、猛暑の照りつけは無い。


「きゅー!」

(またいた、ファイアグラスがいますよ!)

「にゃー」

(あいつ俺の魔法効かないから鬱陶しいなあ)

「発見ありがとう、シャイン。カルファ、またファイアグラスが現れたから気をつけて!」

「はい。そうします!」

「きゅー!」

(こっちです!)

 町から出て早々に、何度もファイアグラスと遭遇する。

 もうファイアグラスは怖くないけど、頻繁に出てくるのは面倒だ。これがアラケルの夏か。

 ある意味、ここを離れることを決意して正解だったかもしれない。

 私は手堅く魔法の盾を構え、火魔法を防ぎきってから剣で切り裂いた。

 これでファイアグラスは動かなくなる。簡単だが、得るものが無いので少し手間だ。

 今回は進むスピード優先で、ファイアグラス程度の素材は手に入れないことにした。それより暑さに耐えながら次の村や宿を早く目指した方が良い。

 カルファの体力も、どれだけもつかわからないしね。

「それにしても、強いですね、二リハさん。やっぱり4ランクともなると心強い!」

 カルファは汗を流しつつも、笑顔でそう言った。

「ええ。この程度の相手なら、なんとでもなります。でも、もっと高ランクのモンスターが出た時は、そちらも本当に注意してください。というか、こちらを気にしないで逃げてください」

「わかりました。もしかすると、出てくるかもしれないんですね」

「ええ。それに、私の知らないモンスターも。このあたりのことはまだわかりますが、ここから先は私も未見ですから」

 初めて見るモンスター、特に知らないモンスターは、ランクすらわからない。どんな強さでも、多少のやりづらさはあるだろう。

 そんな中、カルファを守りながら戦わないといけない。それはきっと、かなりハードなものかもしれない。

 今回は他の冒険者がいないというのも、ハードルを上げている。

「にゃあ!」

(大丈夫。二リハは俺が守る!)

「きゅー!」

(ボクもいますから安心してください!)

「ええ。いざとなったらお願いね。モエル、シャイン」

「にゃー!」

(もちろんだ!)

「きゅー!」

(ボクもいつでも準備オーケーです!)

「二リハさんは、その子達とも話ができるんですね」

 カルファは私達を見て言った。

 私はうなずく。

「ええ。魔法のおかげで」

「魔法。すごいですね!」

「そうです。助かってます」

「動物と話せる魔法って、素敵ですよね。とても良いです」

「ええ。動物というより、モンスターですけどね」

「え、そうなんですか?」

「はい。カジーニャと癒やしラビットです」

「へえ。初めて見ました!」

 カルファはまじまじとふたりを見る。

 やはり、はたから見るとペットも同然なのだろうか。この子達は。


「ところで、二リハさんはどうして冒険者になったんですか?」

 カルファはそう話を振ってくる。

 だから私はいつも通り、シイドに助けられて恋をした話をした。

「へえ、それは運命ですね!」

「運命。ええ、たぶん、そうだったんだと思います」

「実は、俺も運命の旅を決めたんですよ!」

 え?

「え?」

「俺、今まで恋人ってできたことがなくて、どうやって作るかもわからなかったから、ある日、占い師に占ってもらったんですよ」

「はあ」

「そうしたら、俺の運命の相手がグルリネにいるって教えてもらったんです!」

「それは」

 どうだろう。

「ね、運命ですよね!」

「で、でも、まだ会ってないんですよね?」

「でも会えるからこそ、こうしてグルリネまでの旅を決めたんです。家庭を築けたら、そのまま向こうで幸せに暮らすのもありだと思っています!」

「そ、そうなんですか」

 これは、もしかしたら、早まったかもしれない。私。

 もし、私がこの依頼を受けなくて、他の誰も受けなかったら、カルファはきっと、ずっとアラケルにいただろう。

 その方が、良かったのでは?

 というか、グルリネに行く理由、それだけ?

「あの、アラケルを出て、本当に良かったんですか?」

「はい。だって運命の人と出会うことの方が、仕事なんかしてるよりずっと大事ですから!」

 それはどうだろう。

「そう、ですか」

「にゃー」

(なんかこいつからダメな臭いがする)

「きゅー」

(奇遇ですね先輩。ボクもそう思いましたよ)

「ちなみに、運命の相手がグルリネでも見つからなかったら?」

「ええ。その可能性も万が一の可能性としてありますよね」

 いや、ほぼ百%の可能性だと思う。

「その時は、待ちます!」

「待つ?」

「運命の相手を見つけるまで、グルリネで待ち続けます!」

「そうですか」

「ええ。その先に、俺の幸せがありますから!」

 あるのか。いいや、私は気にしないでおこう。

 でも、彼がどうなるかは知らないけど、1つ言っておこう。

「それは本当に、あなたの幸せですか?」

「え?」

「私は、シイドに会って恋を知ったから、旅ができる。でもカルファの旅は、本当にあなたの恋愛なのかなって」

「俺の、恋愛」

「私も人のことは言えないけど、恋って、誰かを求めることだから。あなたは顔も名前も知らない人を求めているけど、それでいいのかなって」

「それは」

「ごめんなさい。気分を悪くしたなら謝ります」

「い、いえ。そんなことありません。確かに、全然知らない人に会いに行くなんて、突然すぎますよね」

 それっきり、私とカルファは黙った。

「きゅー!」

(二リハ、またあいつですよ!)

「わかったわ、ファイアグラスね!」

 そして、すぐに戦いになる。

 人のことなんて、言ってられないか。私の恋も突然だったし。

 ひとまず私は、私の恋を続ける。それを強く思い続けよう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ