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グランデ 7

 まずは相手に近寄らなければ。相手の出方を待っている暇はない。

「モエル、またサポートお願い!」

「にゃー!」

(わかった、火魔法!)

 モエルはすぐさま火を放った。それと同時に、眼の前の蝶が暴風を起こす。

「うっ」

 風で体がふきとばされそうになり、思わず盾でしのぐ。すると、風の勢いはすぐにやんだ。

 あ、そうか。魔法の盾の効果で相手の魔法はかき消せるんだ。

 というか、どうやらあの蝶は風魔法を使うらしい。

「にゃー!」

(うわー!)

「きゅー!」

(風強いー!)

 モエルとシャインは吹き飛ばされたから、ここは私が受けて立つしかない!

 蝶は火魔法を受け、燃えながらも突っ込んできた。

 私はいつも通り、盾で受けつつ、同時に剣で切り裂く。

「パワースラッシュ!」

 上手く蝶の胴体を切り裂けた。蝶はよろける。

 これはチャンスだ。私は大きく踏み込んだ。

「パワーアップ、ゲイザースラッシュ!」

 勢いをつけた一撃。ただ、蝶の動きが早くて予想以上に上手く狙えなかった。

 蝶に半ば避けられつつも、一応はダメージを与える。だがまだ倒れる様子はない。

 ここで蝶は、細長い口を素早く伸ばしてきた。正直、とっさに判断はできなかった。

 これを防げたのは、完全に偶然だ。

  ゲイザースラッシュを半ば空振った勢いで姿勢が傾き、その直後に羽つき帽兜が、蝶の口を弾いた。

 もし兜に当たらず顔に当たっていたら、肉どころか骨まで削がれていたかもしれない。それくらいの力だった。

 私は反動で顔を動かしながらも、ほぼ無意識に剣を振る。

「ツヴァイブレード!」

 蝶が伸ばした口に切りつけ、その後更に踏み込んで胴体を攻撃。

 これは上手く決まった。それで蝶は倒れ、力尽きた。

「はあ、はあ、はあ」

 結果的には倒せたが、やはり相手は4ランク。油断はできない。

「ランブルバタフライも倒せたな。なかなかやる」

 グランデがそう言ってこちらに来る。

「こいつは魔法も使ってくるのね」

「ああ。吹き飛ばした直後を狙って、口で体を突き刺して麻痺毒を流し込んでくるんだ。厄介なのはそれだけだが、防ぎにくいうえに、ほぼ一撃必殺だ。これでやられるやつは多い」

「そう。気をつけるわ」

 でも、先に言ってくれれば良かった。

「にゃー!」

(二リハ、そいつも倒した!)

「きゅー!」

(やりましたー!)

「ええ、ありがとう、ふたりとも」

「きゅー?」

(お怪我はありませんか?)

「ええ。お願い、ふたりとも。少しの間、ここで敵が来ないか見張ってて」

「にゃー!」

(いいぞ!)

「きゅー!」

(見張りの目は休めませんとも!)

 私は周囲の警戒をふたりにお願いし、ランブルバタフライから討伐証明部位の口を手に入れた。

 この口、さっき切ったから2つに分かれてるけど、たぶん大丈夫よね?

 そしてグランデは、手早く焼け焦げたジャンピングモンキーを解体して、食べられるところを食べたのだった。


「いやあ、それにしても火魔法が使えるのは便利だな。ダンジョンの中でこうして肉が食える。最高だ。かなり良い。俺も欲しいな、カジーニャ」

 ここで名指しされても困る。

「魔法使いの仲間を探さないの?」

「前組んだことがあったが、上手く噛み合わなくてな。それに魔法使いはこういう戦闘以外のことで魔法はあまり使わないだろう。肉を焼いてくれと言ってもやってくれるかどうか」

「うーん」

 たしかに、魔法を使うには魔力が必要だし、戦闘以外で使うのは抵抗があるかもしれない。

「でも、1人では危ない時もあるんじゃない?」

「そうかな。俺は今まで1人でやってきたから、そういう考えは全くないな。まあ、二リハを見ていると、モエルといい、シャインといい、仲間がいる故の安定感はあるがな」

「じゃあやっぱりグランデも仲間を集めなさいよ」

「そうだな。じゃあ二リハ、俺の仲間になってくれないか?」

「私には旅があるから無理よ」

「そうだよな」

 でもたしかに、仲間を集めるのも大変よね。これはもう運命だし。

 あんまりしつこく言うのも悪いかもね。

「モエル、シャイン。今のうちに私達もごはんを食べておきましょう」

「にゃー!」

(肉ー!)

「きゅー?」

(ここでも野菜食べられますか?)

「はい、シャインには豆があるわ。待ってて、今出すから」

 この先進んだら、何時休憩できるかわからないものね。


 保存食を軽く食べた頃には、グランデもジャンピングモンキーを食べ終えていた。

「さて、それじゃあそろそろ行きましょうか」

「もういいのか。二リハ達、あまり食わないんだな」

「場所が場所だから、気が抜けないのよ」

 幸い、ここでしっかり休めた。あともう何回か戦えるか。

「あ、ところでモエル、あと何回火魔法使える?」

「にゃー」

(あと一体、いや、2体は倒せるぜ)

「きゅー」

(さすが先輩です)

 そうか。でも、帰りのことも考えると、無茶は禁物。荷物もかなりかさばってきてるし、戦えてあと一回ってとこかしら。

「グランデ。私達はあと一回戦ったら帰りたいんだけど、いいかしら?」

「ああ、いいぜ。ダンジョンの外まで送っていってもいいが、付き合ってくれるなら俺のダンジョンでの狩りを後ろから見てみないか。モンスターを持ち帰れるだけ倒したら俺も帰るから。それなら町まで一緒に戻れる」

「そこまで面倒見てもらわなくてもいいけど。あ、でもせっかくなら、一緒に町まで帰ろうかしら。そしたら、また明日また会う流れができるし」

 どうせなら遊ぶのもすぐがいいだろう。

 そうだ。こちらはもらってばっかりだったし、せっかくだからなにか贈ってあげたい。

 何がいいだろう。ちょっと考えておこう。

「ああ、そうだな。できれば俺もその方が良い」

「そしたらどこかで過ごしましょう。グランデは普段、どんな遊びをしているの?」

「そうだな。基本食うか稼ぐばかりだ。まあモンスター退治が遊びみたいなもんだな」

「でも、依頼を一緒にこなして終わり、ってわけじゃないんでしょう?」

「そうだな。たまには町中でなにかしたい。普通の男っぽくな」

 グランデはそう言って、ニッと笑った。

「さて、それじゃあ、進みますか。そろそろ行こう、モエル、シャイン」

「にゃー!」

(よっしゃあやるぜ!)

「きゅー!」

(ボクも頑張りますよ!」

 私は駆け出すふたりを追って、ダンジョンの奥へ進んだ。

 すると、すぐに少し広い四角い場所に来た。

 そこに、ジャンピングモンキーと、ランブルバタフライと、資料で見たことがあるモンスター、ブデリンが1体ずついた。



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