グランデ 6
ダンジョン内を歩いていると、すぐに前方から2体のモンスターが現れた。
黒っぽい灰色の猿2体が、跳びはねながら近づいてくる。その大きさは、どちらも私より大きい。こいつらも4ランクのモンスターなのだろう。
「にゃー!」
(二リハ、敵だ!)
「きゅー!」
(あいつらすぐ来ますよ!)
「ふたりとも、どちらか片方をお願い。私が一体止めるから!」
流石に楽勝とはいかないだろう。せめて、一対一の状況を作って自力で勝ってみたい。
勝てないまでも、一体は引き受けてみせる。
「ウキー!」
「キー!」
猿達はある程度近づいてくると、横回転しながらジャンプし、私達に回りながら片腕を振り下ろしてきた。
「ハードガード!」
私はまず、しっかり防御する。相手の動きは速かったが、なんとか上手く防げた。
「ゲイザースラッシュ!」
すかさず反撃。余裕がなくて羽つき帽兜の効果を使い忘れるが、それでも本気の一撃は猿の胴体に当たって、なかなかの傷を負わせた。
「にゃー!」
(火魔法!)
モエル達も、きっと戦えている。今は眼の前のことしかかまっていられないが、私が倒すまで、ふたりとも、頑張って。
「ウキー!」
ゲイザースラッシュを受けた猿は、それでも元気よく両腕を振るってきた。
「プライドガード、パワースラッシュ!」
片手は盾で、もう片手は剣で受ける。盾も上手く決まり、剣もカウンターが決まった。
「ウキャー!」
しかしそれでも猿は動きを止めなかった。
次はすぐに、猿がその場で宙返りをして、踵落としをしかけてきた。
私はとっさに身じろぎをする。すると肩に攻撃を受けた。思わず膝をつきそうになる。
けど、攻撃を受けた場所は鎧に守られているから、傷になるようなダメージは負っていない。
このモンスター、強い。どれだけ傷を負っても平気で攻撃してくる。一瞬でも油断すると、すぐに逆転されてしまうかもしれない。
私は一瞬だけ考えをめぐらせると、ここはあえて倒れて、一度横に転がった。そしてすぐに立ち上がる。
「ウキー!」
猿は立ち上がる私に、両手を振り下ろして追撃してきた。
その動きはなんとなく予想できていた。私は盾と剣で再び受けつつ、思い切り前に出る。
ここで一気に勝負に出る!
「パワーアップ、パワースラッシュ!」
今度は、攻撃力上昇も忘れない!
私の剣は、猿の脳天をかち割った。
猿はこれで倒れた。私は息をつく間もなくもう一体を見る。モエルとシャインは、無事?
「にゃー!」
(火魔法!)
見ると、モエルとシャインは無傷だった。それどころか、今丁度相手を倒したところだった。
「モエル、シャイン!」
私はモエルとシャインに駆け寄って、ふたりをなでてあげた。
「ありがとう。怪我がなくて良かった」
「きゅー!」
(怪我ならボクがすぐ治せます!)
「ええ、そうね。でも、それでも良かった」
「にゃー!」
(このくらい余裕だぜ!)
「そうね。モエル。本当にすごいわ」
やっぱりこの子達は、本当に頼りになる。
「まずは上出来だな」
グランデが近づいてきた。私は立ち上がり、剣を鞘に戻す。
「ええ。上手く倒せたわ」
「だが、二リハは攻撃を一度受けていたな。平気か?」
「ええ。なんとか」
「どれ」
グランデが私のダメージを受けた肩をつかんで握ってきた。
私の鎧が、きしむ?
グランデって、想像以上に力があるわ。
「ふむ。どうやら本当に大丈夫なようだな」
「グランデ、ちょっと、鎧が壊れちゃうかもしれないから」
「ああ、すまないな。気をつけるよ」
「きゅー?」
(二リハ、ボクの回復魔法受けておきますか?)
「ううん。今はまだ大丈夫。今度危なかったら、頼むわね」
「きゅー!」
(はい、いつでもおまかせください。ボク、それしか取り柄がありませんから!)
「いつも頼りになってるよ。シャイン」
「きゅー」
(えへへ)
「にゃー!」
(俺も頼りになる。シャインより頼りになる!)
「ええ。モエルもありがとう」
「にゃー!」
(そのとおりだ!)
「さて、それじゃあ早いところ倒したモンスターを回収しよう」
「ええ。グランデ。このモンスターの売れるところ、もしくは討伐証明部位はどこ?」
「ん、そんなもん知らんぞ」
「え?」
「ん?」
私達は固まる。
「ああ、俺はすぐマジックバッグにモンスターを全部しまうようにしてたから、素材はまるまる売ってたんだ。だから、売れる素材がどこかとか、知らん」
「そうなの」
それは、羨ましい話ね。
「ああ、マジックバッグを買う前は全部自分で運んでたな」
「運ぶって、どうやって?」
「手で持って」
「グランデ、あなた、想像以上にすごいわね。いえ、もはやぶっとんでるわ」
「俺は生まれつき、人より三倍強くて5倍飯を食ってたんだ。まあ普通のやつよりはすごいわな」
グランデはガハハと笑った。
でも今は、このモンスターの素材のどこを回収するかなのよね。
あ、そうだ。
「たしか、尻尾があるモンスターはそこが討伐証明部位になるんだわ」
ワンドッグがそうだったし、きっとこの猿もそうに違いないわ。
「ああ、まあ、全部どうにか売れるらしいし、そこでいいんじゃないか」
肝心のグランデはここで頼りにならないし。
「ところで、そのジャンピングモンキーの丸焼き、美味そうだな」
「え?」
私はグランデが見る、モエルが倒した猿を見た。
どうやらこいつはジャンピングモンキーというらしい。じゃなくて。
「グランデ、これを食べるの?」
「ああ、食べていいか?」
「ま、まあ、尻尾さえ取ったら、いいけど」
「じゃあ早速食わせてもらうぜ。へへっ、丁度小腹が空いてたんだ」
グランデはそう言って舌なめずりをすると、焦げたジャンピングモンキーに近づいて、そこで立ち止まった。
「だがその前に、新しいモンスターが現れたようだ」
「え?」
見ると、たしかにダンジョンの奥から大きな蝶が飛んできた。
「にゃー!」
(敵だー!)
「きゅー!」
(先輩、今回もお願いしますよ!)
モエルとシャインが先に走り出す。わ、私も戦わないと!
どうやら、このダンジョンも安息の時なんてほとんどないらしい。常に警戒が必要だってこと、今までの依頼でもわかってたはずだけど、やっぱり冒険者の仕事は過酷だわ。




