グランデ 5
「ふむ。やはりなかなかやる」
グランデが倒したイハサクを見てそう言った。
「ありがとう、グランデ」
「だが、二リハはイハサク対策ができてないな。間合いを強化する技は覚えてないのか?」
「間合いを強化って?」
「ふむ」
グランデはおもむろに剣を構えた。
「リーチソード」
そしてそう言うと、刀身に光が宿り、その光が長い刃となった。
「例えばこれだ」
「すごいわね。それは、魔法?」
「いや、技だ。まあ一見魔法だが、別物だな」
そうなのか。
「そして、ショットスラッシュ!」
グランデがそう言って剣を振ると、光の刃から光が発射された。
「これは遠距離技だ。一般的な技だが、見たところ、二リハはどちらの技も使えないようだな」
「ええ、そうね。初めて知ったわ」
「ふむ」
グランデは剣をしまい、私を見た。
「攻撃力は今のままでいいかもしれないが、これらの技はほぼ必須だ。ただ単純に攻撃すれば倒せるモンスターが相手ならいいが、例えばイハサクは周りの葉っぱで全体ガードする厄介な防御型だからな。離れながら攻撃できるショットスラッシュや、核を直接攻撃しやすいリーチソードが使える方が倒しやすいぞ」
「なるほどね」
確かにさっきの私の攻撃も、イハサクの分厚く多い葉っぱに完全に阻まれていたかもしれない。
「わかったわ。それじゃあその技も覚えようと思う。けど、覚えるには努力しかないんでしょ?」
「まあ、そうだな。それに技にも得意不得意がある。こればっかりは運か。それより、今できることをしっかりふまえ、行動する方が良い」
グランデがモエルを見た。
「そう考えると、イハサクを倒せるカジーニャと、癒やしラビットは頼もしいな」
「ええ。最高の仲間よ」
「その様子なら、ダンジョンの一階でもなんとか生き残れるだろう」
今、不穏なことを聞いたような気がする。
「ダンジョンって、そんなに大変なの?」
「ああ。なにしろ数が多いからな。安全地帯以外はモンスターが寄ってくる。それに罠とかもあるから注意だ」
「安全地帯、あるのね。でも、罠?」
「ああ。落とし穴とか、モンスター召喚の魔法陣とか、ひっかかると辛いぞ。運が悪いと一撃死の場合がある」
「一撃」
なんだろう。途端に怖くなってきた。
「あ、あの。やっぱり私、ダンジョンはやめておこうかしら」
「なに、そう怯えるな。罠は低い階層には無い。ほとんどな。だから一階までなら平気だ」
「たまにはあるんだ」
「大丈夫、今回は俺もついてる。いざという時はしっかり守ってやるさ」
「ええ、お願いね」
たしかに、ベテラン冒険者のグランデがいてくれるなら、今回は心強い。
やはり、行くなら今か。
「それじゃあ、そろそろ行こう。ああ、イハサクの核くらいは持っていくか?」
「ええ。討伐証明部位だし。持って行くわ」
これで荷物はほぼいっぱいだけど、まあ保存食はそのうち減るから大丈夫だろう。
「ああ、それがいい。いざとなったら食えるしな」
「グランデ、イハサクの核を食べたことあるんだ」
「ああ、あるぞ!」
いや、笑顔で言われても。
換金しようよ。
「きゅー」
(ボクも食べたいですー)
「にゃー」
(そんなもんより肉だ、肉!)
私は手早くイハサクの核を回収して、また歩き出した。
その後も何度かイハサクを倒し、そしてそれ以上にファイアグラスを倒した後、私達はダンジョンを見つけた。
そこは、草原にポツンとできた地下への入口だった。大きさは結構広い。
「これが北のダンジョンの入口だ」
「なんというか、人が作ったように見えるわね」
「ああそうだな。モンスターの神が作ったらしいが」
「そうなの?」
「カーム教の教えではな。なんだ、知らないか?」
「モンスターにはモンスターの神がいるっていうのは、聞いたことがあるけど」
そもそも、ダンジョンなんてもの、冒険者を始めてから聞いたばかりである。
「まあ、そんなことどうでもいいな。それより、入ろう」
「ええ」
グランデは奥せず中へ入っていく。私は緊張しながらも、後に続いた。
ダンジョンの中は明るかった。
眩しくはない。少し薄暗い程度か。壁の上の方や天井が光っているようだ。
そして下りきると、その先は通路になっていた。
「おっと、俺は後をついていかなきゃな。まずは二リハのダンジョン探索だ。自由に行ってくれ」
「いいの?」
「ああ。下へ下りる階段の位置は知っているが、二リハは奥が目的じゃないからな。それに、時折階段の位置やダンジョン内の構造も変わるし」
思ったよりとんでもないところだった。ダンジョン。
「ひとまず、一階を探索だ。慣れたら2階に行ってもいい。ああ、まずそうだったら俺も戦うから、それまで待機してるぞ」
「ええ。グランデ。ついてきてくれてありがとう」
本当、グランデがいると大助かりだ。
でも、ちょっと助けただけでここまでしてくれるだろうか?
「あの、グランデ。やっぱり、そこまでしてくれるなら、私もなにかした方が良いのかしら?」
「ん? いや、別にそんなのいいが。ああでも、そうだな」
グランデがちょっと考えてから言った。
「なにかしてくれるって言うんなら、ダンジョンから帰ったら、ちょっとつきあってくれ」
「いいけど、何するの?」
「そうだな。何するか。二リハ、たまには遊ばないか?」
「遊ぶ、そうね」
それくらいなら、つきあってあげなくもない。
「いいわね。けど、それだけでいいの?」
「ああ。それで頼む。いいか?」
「ええ、いいわよ」
私はグランデと約束した。
「それじゃあダンジョンでちょっと戦って、その後いっぱい遊びましょう」
そう言って、先頭を歩く。
「モエル、シャイン、行くわよ!」
「にゃー!」
(なんかここワクワクする!)
「きゅー」
(ボクはちょっと嫌な感じします)
「モエル、シャイン。モンスターが出てくるから、警戒頼むわね」
「にゃー!」
(任せろ!)
「きゅー!」
(警戒なら任せてください!)
よし。今日はここからが本番だ。




