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グランデ 2

「俺は今、ギルドからの依頼で北のダンジョンを探索していてな。その帰りだったんだ」

「へえ。そうだったんですか」

「だが、俺は人の五倍飯を食う。だから食料の確保は死活問題でな。今回のようにちょっと深く潜りすぎて食料が尽きて行き倒れる、なんてこともまあたまにある。今回は助けが来てくれて本当に良かった。危ないところだった」

「いえ、まあ、助けになったのなら良かったです」

「そっちはモンスター討伐の依頼か。あのイハサクを倒したんだろう?」

「はい。その帰りです」

「ふうん」

 グランデは私達を見て、言った。

「あのイハサクを倒したのは、そこのカジーニャだろう?」

「はい。モエルが倒しました」

「にゃーっ」

(やるのか、おっさんっ)

「モエル。彼は悪者じゃないわよ。もっと落ち着いて」

 まあ、警戒してくれるのは良いことだけど。

「カジーニャなのに、やるな。1ランクとは思えん」

「いろんなモンスターを倒して、一緒に強くなりました」

「そうか。そこの癒やしラビットもか?」

「はい。シャインもです。シャインの方が新しい仲間だけど」

「きゅー」

(ボクもやるときはやるんですよ)

「一応確認だが、お前さんは魔法を使わないんだな」

「はい。そうです。あと、私は二リハです」

「二リハ。そうか。わかった。うーむ」

 グランデは少しうなると、言った。

「二リハ。4ランクになった実力は認める。だが、それだけじゃこの先の敵は倒せないぞ」

「どういうことですか?」

「今の二リハの装備は貧弱だ」

 うっ。今気にしているところを。

「上下の防具は良い。だが、頭、足、アクセサリー。何より剣と盾が初心者用すぎる」

「たしかに、そうかもしれません」

「ここまで使い込んだのは大したものだが、流石にもう買い替えが必要だ。4ランク相応の装備はそれなりに高いが、揃えないと太刀打ちできんぞ」

「そうなんですか」

「ああそうだ。せっかく俺が金を渡すんだ。それを使って一気にそろえてしまえ。これから先も冒険者をやるならな」

 それは良いアイデアだ。でも、それだと少し気になることがある。

「あの、そのもらえるお金って、具体的にはいくらくらいですか?」

「ん?」

「実は私も、欲しい盾があって。魔法を防げる盾で、7万5千シクルって言われたんです」

「たか、くはない、か。魔法の盾なら、それくらいはするだろう。効果も悪くない」

「今はそれを買うまでお金を貯めようと思ってたんですけど、もしグランデからお金をもらえればどれくらいになるかなって」

「がははは、安心しろ!」

 グランデは私の心配を笑い飛ばした。

「俺の稼ぎはそれくらい余裕である。あと剣も良いのを揃えるんだな。その他となると難しいが、まあ剣と盾は一番高くて重要だ。そこを押さえれば最低限の備えにはなる」

「そうですか」

 それは良かった。そんなにあるんだ、グランデの収入。

「あの、そんな大金、本当にくれるんですか?」

「ああ、命を救ってくれたお礼だ。遠慮なく受け取れ!」

「本当にありがとうございます」

「ああ。気にするな。がははは!」

 もしここで装備を更に新しくできるなら、願ったり叶ったりだ。

 盾だけじゃなく剣まで強くなれば、ちょっとは戦いが楽になるかも。

「あー、ところで、二リハ」

「はい」

「彼氏とか、今いるか?」

「いませんよ」

「そうか!」

「好きな人ならいますけど」

「そうか」

「人っていうか、ドラゴンなんですけど。ええと、ブルークリスタルドラゴンって、知ってます?」

 さりげなくシイドのことも聞いておく。

「ドラゴン? いや、知らないな」

 グランデはやはりというか、案の定というか、知らないみたいだ。

「ドラゴンなんて7ランク以上の災害、知ることはあまりないしなあ。それに、ブルークリスタルだろ。そんな名前となると、きっとかなりの上位のモンスターなんじゃないか?」

「そうかもしれません。私は彼に命を助けてもらったんです。その時から、ずっと気になってて」

「そうか」

 本当。未だにシイドの声も顔も鮮明に憶えてるなんて、ちょっと信じられない。

「だがドラゴンだろ。恋愛対象なのか?」

「彼は人に変身できます。イケメンでした」

「そうかあ。イケメンかあ」

 グランデは自分の顎を軽くなでた。

「ちなみに二リハから見て、俺はどう思う。イケメンか?」

「大きな剣を背負った冒険者として、かっこいいと思います」

「うむ」

 ちょっと二人共黙ってあるき続ける。

「それだけだよなあ」

「きっとその内良い人見つかりますよ」

「うぐっ」

 あ。ちょっと彼のメンタルを傷つけてしまったかも。

「いえ、本当に良い意味で。グランデ、かっこいいですよ。だから大丈夫」

「大丈夫は余計だろうが、うん、まあ。俺に春はまだ早いということだ。今は仕事仕事!」

「そうです。お金があればきっともてますよ!」

「金は装備と食費に消えていくんだよなあ」

 グランデは遠い目をした。

 どうやら私の倍以上の稼ぎがあってもお金はまだまだ足りないようである。

「まあ、ひとまず今はダンジョンに再チャレンジだな」

「あ、探索依頼はまだ終わってないんですね」

「探索依頼といっても、中に入ってモンスターを倒しまくるというものだったからな。明確な終わりは定まってないんだ」

「そうなんですか」

「まあ、倒したモンスターを見せればいくらか報酬はもらえるかもな。だがきっとそれだけでは足りん。またモンスターを狩りにいかなければ」

「そうですか」

 ダンジョンに再チャレンジ、か。

 ん、ひょっとしたら、これはもしかしたらチャンスかも。

「あの、グランデ。もしよければ、そのダンジョン、私達と行きませんか?」

「ん?」

「私、今よりもっと強くなりたいんです。ドラゴンに会いに行くために。そのために、もっといろいろ経験を積んでおきたくて。お邪魔じゃなければ、一緒に行かせてください」

「ふむ。要するに臨時パーティか」

「だめですか?」

「いや、いいだろう。二リハはたしか、4ランクだったよな?」

「はい」

「北のダンジョンは一階から出るモンスターが4ランクからなんだ。だからそこまでなら一緒に来てもいい」

「4ランクから?」

 ちょっとそれは想定外。やはりダンジョンは一筋縄ではいかないということか。

「にゃー?」

(二リハ、またどこか行くの?)

「きゅー」

(なんかダンジョンってところらしいですよ。先輩)

「ちなみにダンジョンって、何階まであるんです?」

「わからん。俺が進めたのは今のところ6階までで、そこでは5ランクのモンスターが出たな」

 6階。5ランク。

 どうやら、本当に私達が挑むには早すぎる場所のようだ。

 けど、6ランクのグランデがいてくれるなら、比較的安全かもしれない。

「あの、本当についていってもいいですか。私達、きっと1階までしか行けないと思いますけど」

「まあ、俺なら護衛対象がいても5階までは問題ないし、次は上は目指さないから、別にオーケーだ。せっかくだ、試しについてくるといい」

「ありがとうございます」

 言ってみるものだ。ひょっとしたらこれは、予想以上の強くなれるチャンスかもしれない。

 初のダンジョン、少し楽しみだ。今度こそ、モンスターをこの手で倒して自信をつけよう。



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