イハサク 2
もう大分歩いた気がする。
どこまで行っても現れるのはファイアグラス。しかも頻繁に現れる。ヨツヘインのワンドッグよりも出てくる。
もう今日の分の仕事は果たした気分だ。これだけファイアグラスの葉を持ち帰れば、そこそこのお金になるだろう。
いや、それでも受けた依頼は達成しないといけないとは思うけど。ランクももっと上げたいし。でも、気分がのらないのよねえ。
というか、気分だだ下がり。これもファイアグラスを相手にしまくったせいだ。
恐るべし、ファイアグラス。
「にゃー!」
(そろそろ俺の出番か!)
「きゅー」
(そうだと良いですね。先輩)
そうだ。この子たちの前で弱気なことは言ってられない。
もう少し頑張ろう、私。
明日はちょっと気晴らしに遊ぶかもしれないけど。
そう思ったところで、初めて見るモンスターを発見した。
というかあれは、大きな野菜だ。
上が緑色、その下は白。見事な葉っぱで体を覆った、動く野菜。
それがどっしんどっしん跳ねて動いてる。
「にゃー!」
(二リハ、あいつ敵だ!)
「きゅー!」
(こっちが風上だから臭いがわからないです。二リハ、先輩、気をつけて!)
「あれがイハサクね」
資料の絵で見た通りの姿だ。というか動かなければ完全に野菜である。
なんか短い間空を飛ぶらしいけど、それ以外は体当たりしかできないパワー型のモンスターらしい。
ファイアグラスのこともあるから、モエルの魔法は効くかわからない。それに、数も一体だから、こいつは私のちょうどいい相手でもある。
まずは私がしかけてみよう。
「モエル、まずは私が戦う。モエルは様子をうかがってて」
「にゃー」
(わかったけど、チャンスがきたら攻撃するよ)
「うん、それでいい。シャインはいつもどおり、なにかあったらすぐ動いて」
「きゅー!」
(わかりました!)
「それじゃあ、いくよ」
私は意を決して走り出した。
それとほぼ同時に、イハサクも動き出す。
目が無いのに私に気づいて、どっしんどっしん近づいてきた。
その大きさは私よりはるかに大きい。あれにぶつかられたら大きな衝撃を受けるだろう。
ある意味怖い。これが4ランクか。
「プライドガード!」
まずは手堅く盾を強化。後はタイミングよく剣を当てる!
互いに近づき合うと、イハサクはあと一息の距離で、長めの跳躍をしてきた。
そのせいで、私の方のタイミングが狂う。急に近づいてきたイハサクになんとか反応して、盾で体当たりを受け止めた。
どっしーん!
「ううっ!」
盾が簡単に弾かれる、体がふきとばされる!
直撃はなんとか免れたものの、体当たりを見事に受けて倒れる。ダメージは、たぶんなし。衝撃だけだ。
買ってよかった新防具。
「にゃー!」
(二リハ、火魔法!)
「きゅー!」
(二リハ、回復魔法です!)
「ありがとう!」
私は叫びながら立ち上がる。モンスターが眼の前にいるのに、寝ている暇なんてない!
立ち上がると、モエルの火魔法でイハサクが燃えていた。
火がよく燃えている。どうやらイハサクは火魔法が弱点らしい。
と思っていると、突然イハサクの体が一部はがれた。
どうやらイハサクは葉っぱを自由にはがせるようだ。
そして剥がれた葉っぱの中からは、また同じ、大きな葉。
位置枚葉っぱは剥がせたが、先程と見た目がほぼ変わらない。ただ火も一緒に離れて、ぶっちゃけ無傷同然である。
「ほぼ無敵か!」
私は悪態をつきながら前に出た。
「ゲイザースラッシュ!」
私の最強攻撃。
これが無意味だったら、正直お手上げである。
モエルの魔法もほぼ無効化された以上、私も太刀打ちできないのなら、早く逃げることを選択した方が良い。
せめて、少しでも効いてほしい!
幸い私の剣は、イハサクに当たった。攻撃自体は、完璧に決まった。
けれど剣の刃はイハサクの葉っぱに少し食い込むだけで止まり、深い傷を与えることは叶わなかった。
そのままイハサクの体当たりをまともに受ける。
「きゃあ!」
「にゃー!」
(二リハ!)
「きゅー!」
(回復魔法!)
ナイス、シャイン。シャインのフォローは相変わらず迅速だ。頼もしい。
けれど、これ以上は勝ち目がないだろう。悔しいが、退くしかない。
「モエル、シャイン、逃げるよ!」
私は立ち上がりながら言った。
「にゃー!」
(嫌だ。よくも二リハを、許さない!)
「モエル!」
しかしこんな時に限って、モエルが言うことを聞いてくれなかった。
「モエル、今は逃げなきゃ」
だめ。そう続けようとした時。
イハサクが新たな動きを見せた。
一番外の葉を全て下に下げて、広げたのである。
もちろんその内側は同じ葉っぱだった。だが、しかし。
次の瞬間、イハサクはその場で回転し始めた。それからすぐに、ゆっくり浮かび上がる。
「ひょっとして、少しだけ飛ぶって、このこと?」
あまりにも予想外の光景を見て、思わず立ち止まる私。
そうしている間にも、イハサクは高く、高く飛び上がっていく。
相手も、逃げるのかな?
一瞬そう思ったけど、違った。
空高く飛び上がったイハサクは、明らかにこちらへ向けて落下を始めた。
これは、非常にまずい攻撃だ。
イハサクの重量を利用した、空高くからの押しつぶし攻撃。
これを受けたら、私達はひとたまりもない。ぺしゃんこだ!
「モエル、シャイン、走って!」
普通の体当たりならともかく、これだけはなんとか避けないと!




