集団依頼 5
私達は一度ジンク指揮官と合流した。
「よくやりました。皆さんの力、後方からしっかり見ていましたよ!」
ジンク指揮官が笑顔で言う。この人は本当に私達の戦いを見ているだけだったが、それが私達の役割であり、彼らは雇い主である。だからこれで良いのだろうが、私達が今にも死にそうになっていたのに、彼は元気に笑顔というのは、なんとも理不尽な気がする。
ああでも、ジュージ達と一緒にやった護衛依頼の時もこんな感じだったか。
「では、これから解体センターの職員を呼びます。素材がほしい人は赤色の札を渡しますので、ここで待機を。もらえる素材分もお金に変えるのなら、この黄色札を受け取ってください」
ジンク指揮官はそう言って、私達に札を配る。
その時、更に桃色の札も渡された。
「それと、これをどうぞ」
「ジンク指揮官、あの、これは?」
「桃色の札は特別報酬となります。今回の依頼で大きな貢献をした方に渡す札です」
特別報酬。これほど嬉しい響きもなかなかない。
「あなた達はフェスティバルプラントの攻撃を、一時的にですが多く受け、かつそれをしのいでいます。防御人員として十分な働きをしたといっていいでしょう」
「やったな」
「ふっ。これも俺たちの実力ならではだ」
断壁と優美なる勇姿はそれぞれ喜ぶ。
「ありがとうございます」
私はお礼を言っておいた。お金はどれだけ多くもらっても困ることはない。
「いえいえ。なによりすごいのはあなたですよ。二リハ」
「え?」
「より正確に言えば、そちらのカジーニャです。彼のフェスティバルプラントに近距離で当てた火魔法は、凄まじかったですよ。それも、2発も。モンスターの動きが止まるほどの高威力。並の魔法使いでは決して出せない。素晴らしい攻撃でした」
「はあ、そうですか」
褒められているのはわかるが、周りに本職の魔法使い達がいるので、素直に喜べない。
「カジーニャの働きは間違いなく最優秀功労者ものです。桃色札の報酬は明日以降に渡すことになりますが、我々指揮官が全員で意見を出し合って一人ひとり査定するので、特別報酬は一定額ではありません。なので期待していてくださいね」
「はあ、わかりました」
要するに、また結構な報酬がもらえそうらしい。
やった。生き延びたかいがあったというものだ。
私はモエルを見て言った。
「モエルのおかげで褒められたわ。モエルはすごいって。やったね、モエル」
「にゃー」
(俺、もうしばらく魔法が使えない。くやしい、恥ずかしい)
モエルの思念には本当に元気がない。私としては生き延びてくれて助かったのだけど、それでも落ち込んでしまっているようだ。
「きゅー!」
(そんなことないですよ。だってボクは褒められてないんですよ。喜んでください、先輩!)
シャイン、そう言われて喜ぶ人もあんまりいないと思う。
「シャインもちゃんと助けてくれたわね。ありがとう」
「きゅー!」
(褒められた、わーい!)
シャイン、簡単なやつ。モエルもこれくらい簡単だったら良いんだけど。
どうにかして、モエルの落ち込みをすぐに終わらせてあげたい。
「モエル、もっと誇っていいのよ。あなたのおかげで、フェスティバルプラントを倒せた。もしあなたの力が無かったら、少なくとも私達の部隊は負けていたかもしれない」
「にゃー」
(でも俺、あいつを倒せなかった)
「ただとどめを刺すだけが戦いじゃないわ。これは皆の勝利で、あなたの勝ちでもある。だから、誇って?」
「にゃ、にゃー」
(うーん、うん)
「よし。それじゃあ帰ったら今日はいっぱい美味しいもの食べましょう」
「にゃー!」
(俺肉食う!)
「きゅー!」
(ボクは野菜です!)
良かった。一気に元気になってくれた。
この子たちは食べもので釣れるから楽で助かるかもしれない。
「えっと、それじゃあ。私達は素材はいらないから、行こうか」
「そうか。もう行くのか。それじゃあニリハ、今回は助かった。次もなにかあれば、また力を貸してくれ。ぜひ協力しよう」
断壁のドッダにそう言われた。
「こちらこそ、あなた達には助けられたわ。最後は本当に助かった。ありがとうね、断壁」
「それじゃあ、お互い様か。というには、二リハには助けられすぎたが。その癒やしラビットも、回復ありがとうな」
「きゅー!」
(それがボクの唯一の取り柄ですので!)
たまにシャインの卑屈さが可哀想に思える。
「もしよかったら、今夜は酒場の、エッセンスルイネに来てくれ。一緒に飲もう。来たら一杯おごるぞ」
「私はお酒は飲まないけど、うーん、気が向いたら行くわ」
「ぜひ気が向いてくれ。それじゃあ、またな」
「うん。また」
私はそう言ってモエルとシャインに声をかけようとすると、その時優美なる勇姿の全員が私の前に立った。
「二リハ」
「何よ」
ちょっと警戒する。
「ありがとう。君のおかげで、俺たちは最後まで戦えた」
槍使いの1人がそう言って手をさしだしてくる。
あら意外。思わず意表を突かれたわ。
「よければ握手してくれ」
「まあ」
私は一応握手する。
「私も、最後は助かったわ。ありがとう」
ちょっとくやしいけど、あの時自力で切り抜ける方法は、無かったから。
だから、この人たちも5ランク相応の力は持っているのだろう。
「あれくらいしか見せ場が無かったがな」
そう言って肩をすくめるが、表情には自信が戻っている。
「君の叱咤激励のおかげで、俺たちは今の自分が全然優美じゃないことに気がついた。せめてそれ以降に勇姿を見せられたことが幸いだ」
叱咤激励。というか、あれは、思わず声に出た、というか。
まあ、相手が怒っていないのだから、よしとしよう。
「俺たちは君のおかげで大事な気持ちを思い出せた。常に優美に、勇姿を見せる。それが俺たちの、目指していた姿だったはずだ」
「なれるといいわね。そんな姿に」
私は一応そう言ってあげた。
「でも、誰にでも優しいっていうのも追加すれば、なお良いわよ」
更にそう付け加えておく。
「ああ。ギルドでのことは詫びよう。すまなかった。俺たちは今日、思い知った。4ランクにも強敵に果敢に立ち向かう心が強い者もいれば、1ランクでも5ランクをひるませる程の火魔法を使うことができる者もいると。まあ、カジーニャはモンスターだが、とにかく侮っていいはずがない。これからはしっかり敬意を払おう」
「あら、割と素直」
どうやら誰しも、きっかけがあれば変われるようである。
これはきっと良い変化だろう。
「君は俺たちよりも優美であり、勇姿を見せた。敬意を払うのは当然だろう」
そう言って、彼は似合わない笑顔を見せる。
「ところで二リハ、よかったら俺たちとパーティを組む気はないか?」
「ええ、ないわ」
旅を続けるからという目的以前に、価値観とかも違いそうだし。
「そうか、残念だ」
「ええ。それじゃあ、私はもう行くから」
「ああ。モンスターテイマーのニリハ、憶えておこう」
こうして私達は、もう何組かの冒険者パーティと一緒に町へ戻った。
今回はいつも以上にヒヤヒヤしたけど、格上の5ランクモンスターと戦えた。この経験は大きいはずだ。
あと、防具を変えたのも、きっと良かった。前の防具じゃ、今頃死んでいたかもしれない。
となると、魔法の盾も、買わなきゃいけないかなあ。いざという時の備えは、しっかりしておくべきかもしれない。
それと、剣も今のより良いものに変えるべきか。そうすると更に出費がかさむ。
まあ、いいか。お金より命の方が大事だ。
シイドに再び会うために、少しずつ確実に強くなっていこう。




