4ランク 2
とっさに回避。素早く横に倒れて、火の球をやりすごす。
そして立ち上がりながらダッシュし、敵の姿を探す。
いた。草原に少しだけ頭を出した、赤色の植物系モンスターだ。
「にゃー!」
(よくも二リハをやったな!)
モエルが敵へ走り寄る。私も後に続く。
「にゃー!」
(火魔法!)
モエルが0距離魔法を決めた。けど、モエルの火はすぐに消える?
次の瞬間、モエルに向かって敵から火の球が放たれる。モエルはそれを受けるが、体を振って耐えた。
「にゃー!」
(効くかー!)
「きゅー!」
(よくも先輩を!)
シャインもどつく。続いて私も!
「ゲイザースラッシュ!」
ふたりに続き、最後に近づき、大胆に一撃を叩き込む。
すると敵は、すぐに動かなくなった。どうやら倒したようだ。
「やった?」
「にゃー!」
(ニリハが倒した!)
「きゅー!」
(やったあ!)
ふたりからのお墨付きをもらった。どうやらちゃんと倒せたようだ。
「ふたりとも、怪我はない?」
「にゃー」
(ないよ)
「きゅー」
(ボクもですー)
返事を聞いて、安堵する。私は更に周囲を見回して、そこでやっと一安心できた。
植物系のモンスターは倒したのを確認しづらいから、ふたりが確かめてくれるとちゃんと安心できる。
けれど、このモンスター。火魔法は使ってきたけど、それ以外は全然大したことなかったな。
この敵、ランクはどれくらいのものなんだろう。
「あ、そういえば、資料で見たことがあるかも」
火魔法を使う、植物系モンスター。たぶんこいつは、ファイアグラスだ。
厄介なのは火魔法だけで、それさえ対処できればスライム以下の戦闘力ともいわれていたはず。
でもその火魔法が厄介で、かつ夏になると多く現れる。付け加えて、成長するとランク3のファイアブルームになるから、見つけたら早急に倒すべし、だったかな。
「たぶんこいつ、ファイアグラスね」
討伐証明部位は、ええっと、確か、上の葉っぱの先6つだったかしら。
一応切り取っておく。
一時は焦ったけど、とにかくこれで、本当に帰りだ。
「モエル、敵を察知してくれてありがとう。おかげで助かったわ」
「にゃー!」
(当然!)
「きゅー」
(ニリハになんともなくて、良かったですー)
「シャインも、いざとなったら、回復、お願いね」
「きゅー!」
(はい、それだけがボクの取り柄ですから!)
「ふたりとも、頼りにしてる。それじゃあ、すぐ帰りましょう」
帰り道、私もモンスターにでくわさないか気をつけよう。
自分でも常に気をしっかりはってなきゃ。
「討伐依頼をこなしました。これ、オシヨセソウの新芽です」
「はい。確かに」
素材センターでオシヨセソウの依頼書と討伐証明部位を先に渡す。
「それと、これなんですけど」
それから私は、ファイアグラスの葉先を渡した。
「たしか、ファイアグラス、ですよね?」
「ああ、狩ってくれたんですね。確かにそうです。やっぱりそろそろ現れますねえ」
「これから、もっと現れるんですか?」
「そうですね。今ちょうど現れ始めた感じではないでしょうか。5日もすれば少し歩けば火魔法がポンポンとんでくるようになるから、気をつけてくださいね」
「はい、わかりました」
本当、気をつけよう。
「それと、オシヨセソウを狩れるんですから、実力者ですよね。お願いですから、見つけても逃げないでくださいね」
「はい、なんで逃げるんですか?」
「たまにいるんですよ。ファイアグラスはファイアグラス狙いの冒険者に任せておけって考える冒険者が。こっちとしてはファイアグラス並みの害モンスターは優先的に倒してもらえた方が良いんですよね」
「害モンスター、ですか」
そんな言い方、初めて聞いた。確かに、モンスターは害だけど。
「特にファイアグラスは増えるし、ファイアブルームになったら厄介になるから、低ランク冒険者がやられる前に減らしてほしいんですよね」
「なるほど。わかりました、気をつけます」
「あ、でしたら、余裕があればファイアグラスやファイアブルームのまとめ狩りをこなしてください。まだ数は出てないですが、その内貼りだされるんで」
「はい、わかりました」
余裕があったら、心にとどめておこう。
ファイアグラス、ファイアブルーム狩りか。ランク的には低いけど、頼まれたんなら、やるのもありかもね。
翌日。防具屋を探した。
装備を扱っている店は、大体冒険社ギルドの近くにある。ヨツヘインでお世話になった装備屋通りみたいなところは、まだ見つかっていない。
でも、受付嬢のシルビトに聞いても、ただギルドの近くにあるとしか教えてくれなかったし、自分でちょっと探してみるしかない。
もちろんギルド近くの防具屋にも行ってみる。ここが当たりだといいんだけど。
「いらっしゃい」
「剣士用の防具を見たいです。あと一応、盾も」
「そうか、防具一揃えと盾だね。値段はどれくらいが希望だ?」
「一応、4ランク相応のもので」
「なるほど。じゃあ、一揃えで1万二千、ライトシールドは6千シクルくらいでいいね」
「ちょ、ちょっと見てから決めます」
「ああ、いいよ」
素材は軽めのモンスターの皮を使った防具、盾は白く磨かれた丸盾を見せてもらった。
「あんたは盾も使うようだが、回避重視の軽めのものでいいだろう。これを全部合わせて一万8千シクルにしてやるよ」
「見ただけじゃなんとも。装備してみてもいいですか?」
「ああ、いいよ」
装備してみた結果、たしかに軽かった。前のものより動きやすい。
「これ、防御力は高いんですか?」
「少なくとも、着てたやつよりは良いね。素材の質上寒さや氷には弱いけど、火には強いよ。この時期はファイアブルームが出るから、もし火魔法をくらっても安心できるさ」
「本当に安心できるんですか?」
「もちろん。保証するよ。もし焼け落ちたらいくらか返金してもいい」
「そうですか」
軽いのはちょっと不安だけど、火に強いのは良い。
なんか体の線もハッキリしてる気がするけど、まあ、そこはあえてスルーしておく。
でも、値段がなあ。ちょっと高い。
「やっぱり今買うのは控えます」
「ああ、わかった。で、盾は買うかい?」
「そっちも後で考えます。6千シクルはちょっと」
「なんだ、あんた冷やかしかい? ちっ、さっさと帰んな。俺はそんなに暇じゃねえんだ」
急に冷たくされた。
私は追い払われるように店を出る。
別に、買いたくないわけじゃないんだけど。
まあ、いいや。他のところに寄ろう。
「モエル、シャイン。次にいくわよ」
「にゃー」
(なんかあいつ、嫌なやつだった)
「きゅー」
(本当そうですねー)
「モエル、シャイン、そう言わない。こっちもお金を出してないんだから。それに、次は今のより良いところかもしれないし」
そう言って、近くにある他の防具屋へ行く。
けれどそこは鉄製防具専門で、私が装備するには重すぎた。
3件目の防具屋は値段が高すぎて、4件目の防具屋は、なんか全部の防具を赤く染めてあったからなんとなくやめた。
いざ、5件目の防具屋へ。
「ごめんください」
「いらっしゃい」
「防具と盾を探してるんですけど。4ランク相応の」
「4ランク相応か。でも、今は夏だからな。3ランク相応の防具になるが、涼しいのがある。それを買わないか?」
「涼しいのですか。ちょっと見てみます」
確かに涼しいのは良いかもしれない。今暑いし。
「ああ。ウォーレンの皮を使ってるから、良い感じで冷えるうえに火耐性もあるんだ。これだな、着てみるか?」
「はい」
実際に装備してみると、たしかにひんやりして気持ちよかった。頭から足先まで快適だ。
「良いですね」
「だろ。ベテラン冒険者だって夏はこれを身につけるぜ」
「でも、防具としてはどうなんですか?」
「信頼できるぞ。4ランクの相手にだって、大技をくらわなければ傷つかない。5ランクには通用しないがな」
「なるほど」
それじゃあ、やめとこうかな。
装着感が快適でも、防御性能がすぐに不安になるのなら、やめておくべきかもしれない。
「では、やめておきます。できれば、5ランクの相手にも通用したいですし」
「そうか。5ランクを相手にする覚悟があるなら、勧めるのはこれだな」
次に見せられたのは、黒と紫色の防具だった。
「リーリスの皮だ。頑丈なうえに、自動で修復される」
「自動で修復?」
「ああ。リーリスはそういうモンスターなんだ」
「どうやってそんなモンスターを倒したんですか?」
「心臓を焼くか凍らせるか、後は切り離すらしい。5ランクのモンスターだが、黒色のところは4ランクのデクーモの皮でな。2つの素材を組み合わせてるから、まあ、ギリギリ4ランクの装備といえるな」
「黒い部分は修復されないんですか?」
「いや、される。デクーモは近くにいるモンスターの特徴、力をコピーするという力を持っていてな。素材にもその力が宿ってるんだ。そして素材同士の力を上手く合わせて、1つにしてるって感じだ」
「なるほど」
「価格は上下合わせて2万8千シクルだな」
「高いですね」
「だが、5ランクのモンスター相手でもやりあえる。より上を目指すなら、オススメだぜ」
より上を目指すなら、か。
じゃあ、お金もあるし。
「わかりました、買います」
「お、強気だな。気に入った。盾も良いものを見せよう」
お金が無くなったら、また稼げばいい。
約3万シクルは大変だけど、無理な金額じゃない。それに、5ランクモンスターと戦う準備がここでできるのなら、その方が良いかもしれない。
シャインのスカーフ買うの忘れてたあああ。
デミングル商店で買ったことにしておいてください。




