舞台役者 1
今日は魔法使いギルドで魔法を教わる。
今日の先生もジョハナ。受付に、今教わる先生は誰でもいいみたいですって言ったんだけど、受付嬢に。
「でも、彼女が担当の師ですから」
と即答され、そうなった。まあ、そういうものなのだろう。
今日も外に出て魔力を流される。そして、何も感じない。
それが、一時間、二時間、三時間くらい?
「今日はここまでにしましょう」
「はい。ありがとうございました」
「たぶん、続けてたら突然わかるようになるかもしれないけど、期待はしないでね」
「はい。ちなみに、何人に1人くらいの確率で魔法って覚えられるんですか?」
「そうね。昔、ある魔法使いが確かめたそうよ。何人一般人を弟子にしたら、魔法使いが生まれるか。その結果、魔法使い1人を育てるために28人の弟子が必要だったらしいわ」
「つまり、28人に1人、ですか」
「それが、この話には続きがあるの。その実験は続けられて、10人魔法使いに鍛えるには何人必要か確かめたらしいの。その結果」
「その結果?」
「2108人。集めて、その内2098人、才能が無かったらしいわ」
「に、二千百人」
「まあ、その後もいろいろあって、独学で内3人が魔法使いになれたらしいけど、とにかく、そのくらいの確率。ざっと200人に1人。それも、魔力を感じる訓練で魔法使いになれた人が、ね」
「そ、そうですか」
「まあ、魔法使いである私からしたら、なれる人はなれるって考えるけど、あんまり、やっぱり、期待はしない方がいいかもよ」
「はい」
「とりあえず、まだ今後も来る?」
「す、少し、考えさせてください」
だって、200人に1人なんだもの。
私の覚悟が一気にぐらついた。
「それがいいわ。授業料は返せないから、よく考えてね。安くないでしょ、百シクルは」
「はい」
でも、今の私なら百シクルくらい一度の依頼で稼げちゃうのよね。
いやでも、一晩百シクルかけてるから、ちょっと気を緩めるとすぐお金なんてなくなっちゃうけど。
もう一度ちゃんと、テイムについて考えた方がいいのかなあ。
マジックアイテムにしてもらうのに、1個2千シクルかあ。
授業20回分かあ。
でも授業20回やって成果無しだったら大変よね。
うーん。もう少し、悩もう。
幸い今日は時間がまだあるし、ちょっと歩いて気晴らししながら考え直そう。
せめて成果があれば頑張れるけど、進展0だしねえ。確率は200人に1人だし。
魔法使いギルドを出る際に、受付嬢にオススメの場所を聞いた。
すると、受付嬢は笑顔で、教えてくれた。
「それでしたら、レストランブルーグリーンのスペシャルベジタブルジュースがオススメですよ。一度飲んで見るべきです!」
教えてくれた場所は遠かったが、気晴らしで歩く予定だったので、まあいいか。と。
モエル、シャインも歩かせて、町並みを見ながらレストランへ向かった。
ブルーグリーンに着いたので、オススメのスペシャルベジタブルジュースと、小腹が空いてきたから昼ごはんも一品頼んだ。あとモエルとシャインの分も。
すぐに注文がきて、早速オススメジュースを飲んで見る。
ごく、ごく、ごく。
「美味しいっ」
爽やかな風味。甘くほろ苦い味に、ちょっとドロドロした喉越し。
これはなかなか。ちょっと高かっただけある。
「にゃー」
(うまうま)
「きゅー」
(うまうま)
モエルもシャインも喜んでいるようだ。
全体的に高い料金設定だったけど、悪くはない。
客も結構入っているし、繁盛しているだけのことはある。
パスタも美味しい。プラムローナー程ではないけど、しかしそれとは別方向の、新鮮な野菜マシマシ感が新たな美味しさを引き出している。
またこのあたりに来ることになったら、次回も寄ってみていいかもしれない。
受付嬢がオススメするだけのことはある。
あるけど、魔法使いギルド、魔法かあ。
本当に私、憶えられるかなあ。
「はあー」
「はあー」
思わずため息を吐くと、別の席に座っていた男性とため息が重なった。
私と彼は目が合う。
彼は軽く笑って、手を上げた。
私は、どうしよう。別に他人だし、無視しても構わないかも。
ナンパだったら困るし。
「にゃー!」
(お前、二リハになにかする気かあ!)
「きゅー!」
(そうなんですか、先輩!)
その時、モエルとシャインが男性のところに行ってしまった。
「あ、こら、モエル、シャイン、待ちなさい!」
私は慌てて立ち上がる。
「にゃー!」
(場合によっては、倒す!)
「きゅー!」
(やる気ですね、先輩!)
「こら、モエル、シャイン。誰かに迷惑かけたらダメよ」
「可愛いペットですね。猫とウサギか」
男性がそう言った。
「ええ。この子達、たまにすぐ飛び出しちゃって。ごめんなさい、すぐ行きますので」
「いえ、いいんですよ。動物は好きですし」
「でもこの子達、モンスターですよ」
「え?」
「私、モンスターテイマーなんです」
「ぼ、冒険者なんですか?」
「はい」
「そんな、もったいない!」
「はい?」
「あ、いえ。ボクは、カラエ。役者です。あなたなら十分舞台映えしますよ。メインヒロインの役だって狙えるかもしれない」
男性、カラエは気分を高揚させながらそう言うけど、ちょっと何を言っているのかよくわからない。
「あの、ヤクシャってなんですか?」
「え?」
「すみません。私、最近まで小さな村にいて。町でどんな仕事があるのかも、いまいちよくわかってないんです」
「ああ、なるほど。劇を知らない」
「はい」
「それはもったいない。では、ボクが劇がどういうものか教えてあげますよ!」
「あ、いいです。今食べてるところですし」
「そ、そうですか。そうですよね。すみません。ボク、劇のことになると勝手に熱くなっちゃって。それに、ボクなんか、劇のなんたるかなんて語れるわけないのに」
「いえ、そういうことはないと思いますよ」
「えっ」
「好きなことなら、語っていいと思います。語れるくらい好きなら、良いじゃないですか。では、ごはんを食べた後なら、少しならお付き合いしますよ。その、ゲキの語りを」
私の知らないことを知れる、いい機会かもしれないし。
「あ、ありがとうございます。優しいんですね。あなたは」
「いえ、私もゲキを知りたいだけです。お詳しいんですよね?」
「はい。これでも役者の端くれですから!」
そう言って、カラエは良い表情で笑った。




