魔法の授業 2
今日は冒険者ギルドに行って、依頼を探す。
何か手頃な依頼はないだろうか。朝、それなりの時間に訪ねると、掲示板の前と受付への列が既にいっぱいだった。私はちょっと悩んでから、モエルとシャインを抱きかかえて、掲示板につっこんだ。
3ランクの依頼は大体真ん中らへんだ。結構強引に前へ行く。
そして、ようやく掲示板が見える位置にまで来ると、そこからめぼしい依頼書を探した。
うっ。3ランクの依頼はもうほとんどない。あ、けど、これが残ってるわ。
私は見つけた依頼書を読む。
3ランク依頼、オシヨセソウの討伐。
オシヨセソウを5体以上倒す。討伐証明部位は青の新芽。報酬800シクル〜。
オシヨセソウは知っている。植物系モンスターらしい。しかも基本、群れて行動するという。これはやりやすいのではないだろうか。
よし、これにしよう。と思った時に、気づく。
今、両手でモエルとシャインを抱いているから、手が離せない。
なんということだ。迂闊だった。
どうしよう。悩んでいる間に、近くの冒険者が少しいなくなる。
今ならチャンスか?
「ごめん、モエル、シャイン。一度放すわ。じゃないと依頼書が取れないの」
そう言ってふたりを手放す。するとモエルとシャインは、ちょっとした混雑にあってすぐに人混みから離れだした。
これは、早く再合流しないと、ふたりを探すことになっちゃうかも。
私は慌てて依頼書を手に取り、一度掲示板から離れた。
「にゃー」
(ちょっと楽しかった)
「きゅー」
(ボクはしんどかったですー)
「ごめんね。今度は最初から後ろの方にいてね。これも大事な仕事の内だから」
私はモエルとシャインに謝りつつ、受付に並んだ。
するとやがて、私の番が回ってきた。
「依頼を受けます」
「はい。かしこまりました。では、ギルドカードを提示してください」
「はい」
言われた通りにすると、受付嬢は言葉を続けた。
「たしかに。確認しました。ではオシヨセソウ討伐の依頼を受理します。それと、二リハさんはアラケルでの依頼引き受けは、今回が初めてですね?」
「はい」
「それでは、冒険者ポイントについてご説明します。ランクを上げるために必要な冒険者ポイントですが、同じ町で依頼をこなし続けない限り、ポイントが溜まっていきません」
「そうなんですか?」
「はい。より正確に言うと、アラケルでこなした依頼で得たポイントは、アラケルでのみ有効となります。また、護衛依頼等で依頼達成した場所が別の町、村になった場合、そのポイントだけは受けた町と達成した町で有効となります。なお、ポイントは一年以上更新されなかった場合、一度0ポイントになります」
なるほど。
「じゃあ、私はヨツヘインから護衛依頼を受けて来ました。その分のポイントはこのアラケルでも使えるということですね?」
「はい。左様でございます。説明は以上です。何か気になる点等はございますでしょうか?」
「いいえ、今のところありません。おぼえておきます」
「ちなみに申し遅れましたが、私はアラケル支部の受付係、シルビトと申します。では、お気をつけていってらっしゃいませ」
シルビトに見送られて、私は出発した。
オシヨセソウの討伐をやって、更にポイントも得るとしよう。
場合によっては、この町で4ランクにまで上がるのもアリだ。
町の外に出て、オシヨセソウを探す。
すぐに出てくるのはウッドムやキャベツガニばかり。どうやらオシヨセソウは町周辺にはいないらしい。
まずは戦いたそうにしているモエルを温存して、私1人で戦う。モエルの魔法は回数が少ないし、いざとなった時の切り札だ。慎重に使い時を選ぶ。
「きゅー!」
(ニリハ強い、強い!)
「にゃー」
(あったりまえだろ。俺達の仲間なんだぜニリハは)
「モエル、シャイン。今はまだ私1人で戦えているけど、もっと強い敵が出たらよろしく頼むわね」
「にゃー」
(早くその時がきてほしいぜ)
「きゅー!」
(わっかりました!)
今のところ危なげなく進める。このまま無事に帰りたいものだ。
それから更に歩くと、オシヨセソウを見つけた。
私の腰くらいの高さまである、壺型のような植物。それがいくつも密集している。
数は、6?
いきなり多いが、目標数には達している。
「モエル、シャイン。獲物を見つけた。いくよ」
「にゃー!」
(わかった!)
「きゅー!」
(いつでもいいですよ、二リハ!)
「それじゃあまずは、モエルは火魔法。全力で一体倒して」
「にゃー!」
(わかった!)
「シャインは私達が傷ついたら回復。よろしくね」
「きゅー!」
(バッチリやります!)
「それじゃあ、いくわよ!」
「にゃー!」
(火魔法!)
指示通り、まずモエルが動いた。
火魔法がオシヨセソウを一体焼く。それと同時に私が前に出る。
すると、オシヨセソウ達が私達の方へ動き出した。植物なのに跳びはねて、どっしんどっしん近づいてくる。
いや、火魔法をくらっている一体だけは、その場にとどまっている。たぶん、効いているんだと思う。
「にゃー!」
(火魔法!)
モエルが更に魔法をつかった。するともう一体燃えて、立ち止まる。
やっぱり、火魔法に弱いんだ。これならいける。
そう思っていると、4体のオシヨセソウと接敵した。
「ハードガード、パワースラッシュ!」
私は堅実に攻防同時におこなう。これが盾を持っている強みだ。
けれどオシヨセソウは斬られながら私につっこみ、盾ごと私を押し倒そうとしてきた。
ハードガードのおかげでなんとか耐える。でも、それが立て続けにあと3体分、やられた。
「うう!」
私はあっけなく倒された。
オシヨセソウは体当たりで相手を転倒させた後、重量を使って押しつぶし、戦闘不能にさせるモンスター。その攻撃自体は単調で、あまり強そうには感じないけど、実際やられて、しかも数で押されると、かなり辛かった。
倒れた私の上に、オシヨセソウが押し寄せ、のしかかってくる。
く、これは、つらい!
「きゅー!」
(ニリハー、回復魔法!)
けど、一瞬だけ力が湧いた。ここで反撃するしかない!
「ゲイザースラッシュ!」
私は覚えたばかりの技をくりだした。
すると、この攻撃で傷ついたオシヨセソウが私から遠のいた。チャンスとばかりに、更に攻撃する。
「ゲイザースラッシュ、パワースラッシュ!」
どうやらゲイザースラッシュは連続使用ができないらしい。パワースラッシュで応戦する。
「にゃー!」
(火魔法!)
更にモエルからも援護がとんできた。私の上でオシヨセソウが燃える。それを機に私への攻撃がやむ。これはチャンスだ。
「パワースラッシュ、ハードガード!」
私は剣で攻撃し、更に盾で殴った。
すると、なんとか上に乗っかる重しが無くなった。
「サポートガード!」
私は足を強化して、シャインの元まで一度逃げる。ここで仕切り直しだ。
「きゅー!」
(回復魔法!)
「ありがとう、シャイン!」
回復魔法のおかげで、まだ戦える。私は冷静に戦況を見た。
オシヨセソウは何体か、すぐに私の方へ迫る。でも、燃えているオシヨセソウの動きは遅い。
これはきっと、チャンスだ。このまま各個撃破する。
「モエル、近づく敵に火魔法。倒れなくても、一体ずつ順番に狙って!」
「にゃー!」
(わかった!)
弱点と思われる火魔法を頼りに、オシヨセソウ達の動きを鈍らせた後、なんとか一対一にもちこんで戦い、倒した。
オシヨセソウの弱点は、真ん中のツボのような部分だった。そこを攻撃すれば、オシヨセソウは動かなくなった。
なんとか敵を全員倒して、私は一息つく。
「ふう。なんとかなった」
「にゃー!」
(勝った!)
「きゅー!」
(すごいよ、二リハ、先輩!)
「ありがとう。これもモエルとシャインのおかげよ。やっぱりふたりがいてくれて助かった」
私1人では、ここで終わっていただろう。それだけこの敵は、強かった。
でも私は1人じゃないから、こんなに強い敵だって倒せる。
それが誇らしくて、嬉しかった。
「討伐証明部位を取って、帰ろう」
「にゃー」
(うん)
「きゅー!」
(はい!)
私は頼もしい仲間から勇気をもらって、また明日も頑張ろうと思った。




