アラケル 3
「モエル、シャイン。おいで」
私はモエルとシャインを手元に呼ぶ。
「おや、その癒やしラビットも仲間にできたのですね。おめでとうございます」
デミングルが嬉しそうに言った。
「はい。おかげでありがとうございました」
「いえいえ。しかし。火魔法と回復魔法が使えるモンスターを従えた剣士。これは、将来有望ですな」
「いえ、私なんてまだまだです。ダークネスウルフだって、見ているだけだったし。これからもっと強くなれればいいんですが」
「きっとなれますよ。ジュージ様という心強い仲間もおられることですし、もっと自信をもってください」
「はい。ありがとうございます」
「青の風刃も、ありがとうございました。大きな活躍はジュージ様に全てとられてしまったものの、あなた方もしっかりサポートしていたのは見ています。約束通り、追加報酬をお出しします」
「はい。あの、ところで、護衛中と態度が違いますが、なぜ?」
ナーラが皆気にしているところをつっこんだ。
「ああ、実はこっちが地なのです。ですが、商人は舐められてはいけないと先代から叩き込まれましてね。せめて大勢の人前ではと、強気に出ているのですよ。いやはやお恥ずかしい」
デミングルはそう言って、タオルで汗を拭く。
「俺としては、どちらの口調でもいいですよ。話しやすい方で」
ダズエルがそう言う。まあ、話がスムーズなら、私もどっちでもいい。
「ええ、ありがとうございます。では、このままで。それで、報酬の件ですが、基本報酬の4800シクルに追加で、1200加えます。それで、1人6000シクル。それでよろしいですね?」
「ええ、それでかまいません。俺達はデミングルさんに言われた通り、大した活躍はしてませんので」
ダズエルが言って、他3人もうなずいた。
ただ、私は1つ確認する。
「あの、その1200シクルはモエルの分もありますか?」
「ああ、ええ。これは追加報酬ですので。それに、モエルはかなり役に立ったでしょう。その評価もこめて、1200追加します」
「やった」
これで当面はお金の心配なんてしなくて済みそうだ。
「それで、これが報酬です」
デミングルがテーブルに人数分の財布袋を置いた。
「これはモエルの分」
「ありがとうございます」
私達はその場でお金を数える。よし、あるわね。
「それでは、報酬も無事しはらったということで。次回の機会もあれば、またデミングル商会の護衛をお願いします」
デミングルがそう言って私達に頭を下げた。
きっとランク相応の報酬だとはいえ、デミングルの応対は私達冒険者にとって、十分良心的だと思う。
私は、これからもデミングルと縁がありますように。と思った。
デミングル商店を出ると、入れ違いにジュージと会った。
「あ、ジュージ。私達はもう報酬をもらったわよ」
「ジュージさん、おはようございます!」
「おはようございます!」
「ん、おお。おはようさん。俺も今からもらいに行くわ。それと、突風の剣の話もあるしな。お前らもご苦労」
ジュージは自然体だ。ジュージも報酬同じくらいなのかなあ。まあ、突風の剣を売れば、きっともっと高額が手に入るんだろうけど。
あ、そうだ。次も依頼があれば、ジュージと一緒にやろうかな。
その方が頼もしいし。ジュージなら、ダークネスウルフも倒せるし。
「ねえ、ジュージ。次の依頼も、一緒にやる?」
「いいや。お前とはもう組まない」
即答されると結構ショックだ。
「それは、私が弱いから?」
「それもそうだが、お前といると、調子が狂うんだよ」
「それはごめんなさい」
ジュージの調子がおかしいところなんて、見たことない気がするけど。
「だが、お前がこのまま死なれても寝覚めが悪い。だから、死ぬなよ」
「ありがとう。なら、これからも暇な時は、稽古にでもつきあって」
「ああ。一回500シクルでな」
「それを聞くと頼む気減るのよねえ」
「だったらもっと稼げ」
「努力はするわ」
ジュージは手を振ってデミングル商店に入っていった。
「じゃあ、俺達はモエルとシャインに昼ごはんを奢らないとな」
「ええ。ちょっと早めだけどね」
ダズエルとナーラがそう言った。クワッシングもうなずく。
「にゃー!」
(肉くれ!)
「きゅー!」
(野菜ー!)
モエルとシャインはもう奢られる気になっている。触らせるだけで食べていけるなんて、なんてステキな商売なんだろう。
いや、見習いたいとは思わないけど。
「ありがとう、皆。それじゃあ、どこか美味しそうなレストランさがしましょ」
「ああ。ちょっと探すか」
「俺は関係ないから、防具屋にでも行くわ」
センラがそう言って立ち去る。
「じゃあ、デミングル商店でオススメでも聞いてみるか?」
「確かに。何か知っていれば、ありがたいしね」
私達はまたデミングル商店に入っていった。その際に、シャインの首に巻く黄色いスカーフも購入。
そしてそこで、店員にオススメのレストランを聞き出して、そこに行くことにした。
「にゃー」
(これ美味っ)
「きゅー」
(かなり美味しいですっ)
紹介されたレストラン、ミトスで、モエルとシャインは料理にがっついていた。
かくいう私達も軽いものを頼んで食べている。私達だけ食べないのもちょっと恥ずかしいし。
「モエルとシャイン、よく食べてるねえー」
「やっぱりモンスターだからだろうな。食べる口は小さいけど」
「ここのサラダも美味い」
「ええ、そうね」
ナーラ、ダズエル、クワッシング、私が言う。
そして、一心地つく。
穏やかな時間だ。
毎日命をかけて戦って、働いて、今はその休憩時間。
今ならお金もちょっとあるし。安全な町を楽しめる。
でも、それでも私がしたいのは、旅なのよね。
シイド、今、どこにいるんだろ。
「二リハ、今、誰かのことを考えてた?」
クワッシングにそう言われた。
「うん。私が一番、会いたい人。いや、ドラゴン、かな」
「きっと会えるわ」
「そうだ。一度会えたんだろ。また会える」
ナーラとダズエルがそう言ってくれる。
だから、私もうなずいた。
「私も、そう思う」
よし。なんかやる気が出てきた。少し休憩したら、また旅に戻ろう。
いや、旅を続ける前に、今はまた旅の準備かな。
お金は、まだ心配しなくてもいいと思うけど、当面の問題は、テイムについて、か。
まあ、旅は別に急ぐものでもない。無理をせず、ゆっくり続ければいい。
モエルとシャインに無理させたくもないしね。
だから、まずは。今日一日休んだ後は。
「彼と会う旅はもちろん続けるけど、その前に、ううん。そのために。魔法を、覚えてみようかな」
テイムなんて魔法、きっと日常では役に立たない。もっと役に立つ魔法はいくらでもあるだろう。
でも私は、テイムを選ぶ。
この先何が起こるかわからないけど、モエルとシャインと会えたから、更に次の出会いも信じて、覚えてみたい。
もしこの先役に立たなかったとしても、まあ、それならそれで。
むしろ、テイムを覚えたら、他の魔法にも手を出してみてもいいかもしれない。
剣士兼モンスターテイマー兼魔法使い。
やってみますか。




