アラケル 1
冒険社ギルドに行くと、ダズエル達が他の冒険者達にからまれていた。
「あ、クワッシング、二リハ、ちょうどよかった、こっちに来てくれ!」
「彼女がジュージの仲間のニリハよ。ほら、言った通りカジーニャをつれてるでしょ。癒やしラビットもつれてるけど」
三人は私達を見つけると、すぐにこちらに呼ぶ。
どうやら、私達の合流は彼らの助けになったらしい。まあ、冒険者たちが利用するバーだ。こういうこともよくあるのだろう。きっと。
そう思っていると、強面の冒険者が、私の前に立ちはだかった。
「にゃー!」
(お前、敵か!)
「きゅ!」
(え、そうなんですか!)
「モエル、シャイン、慌てない。ここは安全よ」
きっと、だけど。
「お前がニリハか」
冒険者が訊いてくる。でも酒を飲んでいるのか赤ら顔なので、そんなに怖くはない。
いや、ある意味怖いか?
いいや、そんなことで臆する私ではない。すぐ横には頼もしい猫とウサギもいるし。
「はい」
「カジーニャと癒やしラビットをつれているな」
「はい」
「触ってもいいか?」
なんか前にもこんなことあった気がする。
私はちょっと安堵しながらも、モエルとシャインを見た。
「触ってもいいか、ですって。モエル、シャイン、どう?」
「にゃーっ」
(嫌っ)
「きゅー!」
(じゃあボクも嫌です!)
「ダメだそうです」
「そうか」
強面の冒険者は残念そうだ。というか冒険者って、可愛いもの好きが多いんだなあ。
「それより、青の風刃。今回の護衛でお世話になったから、好きなのをおごるわ。一品だけ。高くないのを頼んでちょうだい」
「やったー!」
「それって好きなのじゃなくないか?」
「安くて好きなやつくらいあるでしょ」
「いいの、二リハ、ありがとう!」
という感じで、私はほぼ予定通り、他の冒険者の相手もしつつ、仕事上がりの一杯を飲んだ。
まあ、私はぶどうジュースだけど。
だって、飲んだ後も、宿とか探さないといけないし。
「そういえばナーラ達は、どこかもう泊まるところは決まってるの?」
「ええ、まあ。一応以前使ってた宿に行くつもり。それがダメだったらギルドの宿を借りるけど」
「へえ、ギルドでも宿をやってるのね」
「やってるけど、護衛中に通った村の外の宿みたいなもんだぞ。大きい部屋に、泊まりたいやつが全員泊まるんだ。安いけど、盗難だって割とある。まあ、最終手段だな」
「そう。それなら私も一緒に宿につれてって。私の分も空いてたら泊まりたいから」
「ああ、いいぜ。おごってもらったしな。結構ここからだと歩くけどな」
「まあ、安さは保証するぜ」
「そう、ありがとう」
泊まれるならなんでもいいけど、まあ、安ければ安いほど良いか。
「にゃー!」
(お、新入り。お前まだ肉余らせてるじゃねえか。ちょうどいい、俺がもらうぜ!)
「きゅー!」
(ああ、ボクの肉ー!)
そして私の仲間二匹は、ちょっといざこざを起こしていた。まったくもう、普段は良い子なのに。
「こらこら、モエル、ケンカしないの。先輩でしょ?」
「にゃー?」
(先輩?)
「モエルの方が、シャインより長く私といるってことよ」
「にゃー!」
(そうだ、俺は先輩だ。だから、新入りの肉は俺の肉だー!)
「きゅーん」
(くうーん)
ダメだこれは。とても先輩風は吹いていない。
「もう、まったく。モエルったら。じゃあ、シャインにはもう一品何かあげるわ。お野菜食べる?」
「きゅー!」
(え、食べる食べる、食べます!)
「にゃー?」
(それ、美味いのか?)
私はシャインのためにサラダを頼んだら、シャインは顔を輝かせた。
「きゅー!」
(わー、美味しそう。これ全部食べていいんだ!)
「にゃー、にゃあ」
(ぱく、もぐもぐ。うげー、いらない)
どうやらモエルは野菜が好きじゃないらしい。まあシャインの分が食べられなくていいか。
「きゅーきゅー」
(ニリハ、ありがとう。ボク一生懸命回復するー)
「ええ、ありがとう。シャイン。これからモエルと私に何かあったら、よろしくね」
「きゅー」
(はいー、わかりましたあ)
「にゃー」
(しっかりやるんだぞ、新入り)
「きゅー!」
(はい、先輩!)
「にゃー」
(先輩。悪くない)
どうやら二匹は仲良くやっていけそうだ。良かった。
ちょっと良いものを食べた後は、青の風刃と一緒に宿屋に行って、そこで泊まった。
確かに値段は安かったけど、ボロボロの布団とくたびれた机だけがある殺風景な宿だったので、正直ちょっと利用したことを後悔した。
でも布団は使えなくても、モエルとシャインを抱いて寝たら温かい。私は二匹のぬくもりを頼りに眠りについた。
こういう幸せは毎日感じられてうれしい。それに今日からはシャインもいるから幸せ二倍だ。
「きゅー」
(ニリハ、良い匂いがする)
「にゃー」
(俺のも良い匂いだぞ)
「きゅ、きゅー」
(そ、その通りですよ、先輩)
モエル、言わせてるわよ、それ。
「おやすみ、ふたりとも」
目をつぶって、少し考える。
今日、魔法使いのシーンズから、テイムの魔法練習を持ちかけられた。
確かに、私がテイムを覚えられれば、この先新たな仲間候補を見つけた時、役に立つかもしれない。その可能性は、モエルとシャインの存在を考えると、0とは言い切れないと思う。
でも、私に魔法の習得なんてできるだろうか?
その可能性も、0ではないかもしれない。でも、できるとも言い切れない。
不安だ。正直、テイムはほしい。でも、覚える自信がない。
それにテイムを使いたいだけなら、またマジックアイテムを作ってもらう、という方法もある。だから、よく考えるべきだ。
お金は、少なからずあるし、明日も護衛の報酬をもらうし、そもそも私の目的は旅なんだし、よくよく考えよう。
でも、魔法使いか。もしなれるんなら、なりたいな。
だってその方が、夢があるじゃない。
私はちょっと自分が魔法使いになった時のことを想像しながら、穏やかに夢の世界へ旅立った。




