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シャイン 3

 癒やしラビットは何時だって誰かと一緒にいた。

 最初に出会ったのは鳥。怪我をしていたから、回復魔法で治してあげたら、一緒にいるようになった。

 鳥が倒したモンスターの食べ残しを、後から食べて飢えをしのぐ。癒やしラビットに凶暴性はない。あるのは、回復魔法を使いたくなる衝動と、愛らしさ。それで取り入り、生きていくのが癒やしラビットの生態だ。

 味方を見つけて、自分は後ろから回復魔法で援護。危険を感じたらそのまま逃げる。そして新しい味方を探す。それが癒やしラビットの生き方。

 この癒やしラビットも、強敵が現れたら味方を見捨てて逃げ、生き延びてきた。

 鳥がやられたら犬を見つけて味方にした。

 犬がやられたらカニを見つけて味方にした。

 癒やしラビットはひたすら援護と逃げに徹する。全てはただ生き延びるため。今と明日を生きるため。

 それが癒やしラビットだ。決して強くはなく、そして強くなる意思をもたない。モンスターの中でも異色の存在。

 そんな癒やしラビットは今日、ダークネスウルフに襲われた。

 ダークネスウルフは、とても強く、恐ろしかった。味方のカニは一撃で死んだ。そして次に癒やしラビットを見て、獰猛に笑うダークネスウルフを見て、癒やしラビットは身の危険を感じ、必死に逃げた。

 ダークネスウルフは追いかけてきたが、すぐには追いつかれなかった。それはダークネスウルフが本気を出さず、追いかけるのを楽しんでいたからだ。癒やしラビットもそれがわかっていた。だが、それでも逃げ切ることを諦めなかった。

 諦めなかったのが良かったのだろう。癒やしラビットは逃げる先に、複数の人の気配を感じ取った。

 癒やしラビットは人に近づき、そしてすぐ近くを通り過ぎた。彼らにダークネスウルフをなすりつけようとしたのだ。その試みは上手くいき、ダークネスウルフは人と戦いを始めた。

 一安心する癒やしラビット。癒やしラビットはそのまま遠くへ逃げようとした。人は群れている。そして癒やしラビットの経験上、群れている者達は自分を受け入れない。そう確信していたため、回復魔法のサポートも考えなかった。


 だが、癒やしラビットの幸運は続かなかった。


 草原にまた逃げ込もうとした時、前方から新たなモンスターの気配を感じた。しかも気配は複数あり、群れで来ているとわかった。

 癒やしラビットは慌てた。急いで方向転換し、もと来た方へと走る。

 癒やしラビットの不安は的中した。相手はラビットウルフ。群れで行動する、獰猛なモンスター。癒やしラビットが付け入る隙などない、凶悪な相手である。

 当然のように、ラビットウルフは癒やしラビットを攻撃した。癒やしラビットは初めて怪我を負った。

 痛い。痛い。痛い。

 助けて。誰か助けて。

 癒やしラビットは、今まで囮にしてきた味方達の姿を思い浮かべた。でも、それらは助けにこない。もう生きていないからだ。だがそれでも癒やしラビットは助けを欲した。

 すると、助けは来た。

 人だ。人が駆けつけて、自分をラビットウルフから助けた。

「きゅー」

(回復魔法)

 癒やしラビットは自分に回復魔法を使って、なんとか痛みを和らげた。だが、完全ではない。治りきるためには、全ての魔力を使わないといけないと、直感で理解できた。

 その体で、癒やしラビットは戦況を見守る。

 人は、やられそうになっていた。ラビットウルフは強かった。このままでは人が先にやられるだろう。

 そうしたら、次は自分の番だ。

 それは嫌だ。癒やしラビットはそう思った。

 そして、こうも思う。今なら逃げられる。自分を治して逃げ切ってしまおう。

 けれど、更に考えた。もし人が死んだら、次はあいつらは、自分を追いかけてくるのではないのだろうか?

 それは、癒やしラビットのもった不安。その不安は拭いきれない。

 もし人が勝てば、あいつらはいなくなる。そうしたら、ひょっとしたら人は、こちらを見逃してくれるかもしれない。

 でも、人は信用できるのだろうか?

 それは癒やしラビットの、賭けだった。逃げるか、人を助けるか。どっちにしろ、不安は尽きない。

 けれど、癒やしラビットはすぐに決断した。


 人は、すぐに助けに来てくれた。だったら、ボクは、助けに来てくれたあの人を助けたい!


 少なくとも、たとえどちらにしても死ぬのなら、逃げた先で死ぬより、自慢の回復魔法を使ってから死んだ方が安らげると感じた。だから癒やしラビットは、回復魔法を使った。

「きゅー!」

(全力、回復魔法!)

 癒やしラビットの援護が効いたのか、人はラビットウルフに勝った。

 けれどそのかわり、癒やしラビットは動けなかった。体はまだ痛い。自慢の足は動かない。

 そんな時、助けてくれた人が、癒やしラビットを抱いた。

 人はそのままあるき出す。癒やしラビットは、緊張した。

 ボク、このままだとどうなるんだろう?

 今のところ、人はまだ何もしてこない。このまま助けてくれるのだろうか? まだわからない。

 この人は信用できるけど、他の人はどうだろう。ボクを狙わないだろうか?

 それに、何より、この群れには、ボクの他にもモンスターがいた。

「にゃー」

(おい、お前。動くなよ。逃げると思うな)

「きゅ」

(うっ)

 すごいプレッシャーだ。逃げようとしたらおそらく、やられる。

「モエル、脅さないの。この子は怪我をしていて動けないのよ。もっと気を使ってあげて」

「にゃー」

(わかった)

 人の言うことはわからなかったが、どうやらこの猫は人の言いなり、手下らしい。そして癒やしラビットは、完全に猫に監視されていると感じていた。

 に、逃げられない。

 そのまま癒やしラビットは人につれられる。

 そして、魔力が回復し、再び回復魔法が使えるようになってからも逃げられず、人が大勢いる場所に行き、そこで不思議な力を感じた。

「お願い。あなたも私の力になって。私を受け入れて」

「にゃー」

(お前。二リハに従え)

 癒やしラビットは何が起きているかはわからなかったが、これだけはわかった。

 自分はただ、状況に流されるしかないのだと。

「きゅうー」

(はいいー)

 こうして癒やしラビットは、人を、二リハを受け入れた。

 するとすぐに癒やしラビットの中に、今まで出会った味方以上の、確かなつながりを感じた。

 それはとても温かく、自然と目の前の人のことを信じられた。

「ありがとう。私達を仲間として認めてくれたのね」

「きゅー」

(う、うん)

「私はニリハ。あなたは、えーと、名前が必要ね。じゃあ、癒やしラビットだから、癒やし、いやし、しゃい、シャイン。あなたの名前は、今日からシャインよ」

「きゅー」

(ボク、シャイン)

 その意味はよくわからなかったけど、シャインはそれで、二リハと更に仲間になれた気がした。

 それも、今までとは違う、見えないけど強いつながりを持った味方。それがシャインの胸の内を安心させた。


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