シャイン 2
「ガウ!」
「ガウ!」
残りのラビットウルフは、またも私を挟み撃ちする。
けれど、私のできることは少ない。また片方を相手にして、もう片方は完全に仲間に任せる。
それが今の私の戦い方だ。
「モエル、クワッシング、後ろは任せた!」
そう叫んで、自分からラビットウルフに向かう。
「ガウー!」
その時、目の前のラビットウルフの前足が白く光った。
これはまさか、技?
「ハードガード!」
私はなんとか攻撃を防いだ。
けれど、体勢は崩れ、慌てて立て直す。カウンターを狙わなかったのは正解だった。全力の防御でなければ崩されていた。
「にゃー!」
(火魔法!)
「風魔法!」
今もラビットウルフは後ろにもいるはずだが、振り返っている余裕はない。なんとか目の前の、攻撃を続けてくるラビットウルフに抵抗する。
「ガウー!」
ラビットウルフの顔面を盾で押さえる。そして、なんとか剣で反撃。
「ガウ!」
「きゃあ!」
その時、私は後ろから襲われた。
もう一体のラビットウルフが、とうとう私を攻撃したのだ。私はたまらず動きを止める。
「ガウ!」
「ガウ!」
すると、その気を逃さず、ラビットウルフ達が更に迫ってきた。
「二リハ!」
「にゃー!」
(ニリハから、離れろー!)
なんとか切り抜けたいところだが、ダメージが痛くて思うように動けない。
とにかく必死に剣と盾を動かす。こんなところで死んではいられない。
私は、もっと生きる。
生きて、もっと、たくさんの幸せを見つけて、たくさんのぬくもりに触れて、そして、やがてきっと、私だけの恋を自分の目で見届ける!
「きゅー!」
その時、ふっと体が軽くなった。
そして、感じる。今ならできる。今を切り抜ける、逆転の一手が!
今までで最高の攻撃を今、使う!
「ゲイザースラッシュ!」
「ガウー!」
私の攻撃を受けたラビットウルフは、ふきとんで倒れた。
「にゃー!」
(全力、火魔法ー!)
そして振り向けば、もう一体のラビットウルフも燃えて倒れている。
なんとか、切り抜けた。
「はあ、はあ。そうだ、ジュージは?」
私はもう一体のモンスターを相手にしているジュージの元へ走った。
ジュージはダークネスウルフと、熾烈な戦いを繰り広げていた。
「グルルー!」
「ハードガード!」
ダークネスウルフは黒いモヤを体にまといながら、ジュージを攻撃し続ける。
だがジュージはそれを全て防ぎきり、また反撃も与えていた。
「ぐうう」
「くそ、手も足も出ねえ」
ダズエルとセンラは一歩引いて戦いを見守っている。それに私も、ダークネスウルフには近づくことすらためらわれる。それほどの実力差を、見るだけで感じた。
結局私達の命運は、ジュージが握っている。私は思わず声をあげた。
「ジュージ、勝って!」
「黙ってろ、気が散る!」
あ、はい。
「お前らは離れてろ。心配すんな、もうすぐ片がつく!」
「グルルー!」
ここでダークネスウルフは黒いモヤを新たに生み出して、自分と同じ形を作った。
もしかして、あれは分身?
もう一体の自分を、生み出したというの?
「甘いな。それは完全な隙だ」
けれどそこですかさず、ジュージがダークネスウルフに近づいた。
「キルスラッシュ!」
それが、決定打になった。
「グルルウウ」
ダークネスウルフが倒れる。これで、危機は去った。
今日中にアラケルに着く予定なので、ラビットウルフの討伐証明部位、尻尾を手に入れて、残りは道の端に片付けた。
ダークネスウルフは、ジュージのアイテムバッグに入れられた。あんな大きなものが入るなんて、すごいバッグだ。やっぱりジュージは高ランク冒険者なんだと再認識させられる。
それで、癒やしラビットなんだけど。
「きゅうー」
癒やしラビットはラビットウルフにつけられた傷が全身にあって、まともに動けないような状態だった。
でも、私はさっきの戦いのことを、鮮明に憶えている。
「癒やしラビット。あなたが戦いの中で、私を癒やしてくれたのよね?」
あの時確かに私は、戦闘中に体の傷が癒えた。
ナーラが私に回復魔法をかけたのではないことは、既に聞いている。ナーラの方は、ダークネスウルフにちょっかいを出して返り討ちにあったダズエルとセンラを全力で回復したらしい。
だから、あの時私に回復魔法をかけて、体を軽くしてくれたのは、この癒やしラビットだ。
「きゅうー」
癒やしラビットは痛そうだ。
私は癒やしラビットを抱えた。
「ポーションは全部私が使っちゃったけど、町まで一緒にきてくれない?」
「きゅうー」
「そして、もし仲間になってくれたら、すぐに傷を治してあげる」
まあ、仲間になってくれなくても治すけど。流石に命の恩モンスターを無下にはできない。
でも、この子も私を受け入れてくれたら良いな。
「にゃー」
(ニリハ、そいつ、敵じゃないの?)
「モエル。私はこの子も、仲間にしたいと思うの。いい?」
「にゃー」
(まあ、別に、いいけど。弱そうだけど)
「でも、この子にはこの子ならではの特別な力があるわ。私を救ってくれたその力、できれば、これからも頼らせてほしい」
「にゃー!」
(ニリハは俺を頼れ!)
「うん。モエルも、これからもよろしくね」
「にゃー!」
(任せろ!)
こうして、私は癒やしラビットを抱いて歩いた。
「そうか。二リハは癒やしラビットを狩らないのか」
「そうよ。ジュージ。あなたにも手出しはさせないから」
「それはいいが、知ってるか。癒やしラビットの毛皮は千シクルで売れる」
「そんな話には引っかからないわよ」
「ただの話のタネだよ。まあ、テイムできたらポーションがわりになるんだから、悪い選択でもないだろうな」
「ポーションがわりじゃないわ。この子は仲間よ。きっと、だけど」
「ああ、きっとな」
「でも、仲間になってくれなくても、私はこの子の幸せを願う。折角こうして出会えたんだもの」




