シャイン 1
アラク村についた。
デミングルの馬車が宿に停まったら、そこで一緒に宿をとり、その後ジュージと一緒に冒険者ギルドに向かった。
そこで、賞金首、幸運の風2人のしるしを渡した。
「これは、剣士の首はわかりますが、槍使いの方はひどいですね」
「まあ、燃えたからな。証拠に、真実の指輪を使う」
「真実の指輪って?」
「嘘を見抜く指輪だ。俺もやつらを賞金首にする時に使った」
賞金をもらうやりとりは非常に生々しかったが、私もジュージも賞金をもらうことができた。
けど、悪いことはしていないんだけど、正直こういうことは、もう経験したくない。人を殺すのも嫌だけど、首を届けるっていうのも、ちょっと。
「真実の指輪だけじゃ確かな証言にはならないの?」
「指輪の効果をくぐり抜ける裏技がないとも限らないだろ。前にそういうことがあったらしい」
「へえ。例えば?」
「複製だ」
「複製?」
「本物そっくりの偽物を用意して、それを届けたらしい。これは珍しいケースだが、真実の指輪をくぐり抜ける方法はあるって話だ」
「本物そっくりの偽物って、そこまでする必要があるの?」
「一度賞金を払えばマークが外れるだろ。たまにあるらしいぜ。とにかく、証拠はできるだけ必要らしい。二リハも次賞金首をやったら、注意しろよ。しるしは持っていかなきゃ金にならん」
「あんまりやりたいとは思えないんだけどねえ。もしもの時は、証言だけでいい?」
「崖から突き落としたとかなら、まあいいんじゃないか?」
「それも嫌ね」
「まあ、賞金を出す判断はギルド側がする。それに、賞金首が自然に消えたとしても、そこで情報が途絶えたら、後には生死不明の不安が残るかもしれん。賞金首はなるべく金に変えるのが基本だ」
「そうなのね。大変な話だけれども」
誰だって、周辺に悪党がいるという話があったら、警戒する。脅威が無くなった時は、なるべくそれを伝えないといけない。
でも、幸運の風も、全員片がついたわけではないのよね。
後の2人も、もう間違ったことをしなければいいな。と、漠然と祈った。
銭湯に入って疲れを癒やし、翌朝出発する。
予定では、あと2日で護衛終了だ。そして、その時にはアラケルに着いている。
ただ、この日は朝から雨だった。ついてないが、雨具はある。準備しておいてよかった。
歩いていると、周囲はだんだん、木がよく生えている草原という景色になっていった。
ここまで来ると、現れるモンスターに未見のものが現れた。歩く細い木と、背中にキャベツを背負った虫だ。
細い木はウッドム。1ランクモンスターだ。倒せば薪になるらしい。体は木のように固いが、移動が遅いし、魔法も使わない。初心者の練習相手に丁度いいような弱さの相手。
キャベツ虫は、キャベツガニ。ハサミが厄介なモンスターで、足元の攻撃に注意らしい。要するにチャガニの野菜有りバージョンだ。背中のキャベツは 生でも食べれて、売れば3シクルとのこと。まあ、大きくて重いから持ち帰るのは大変だけど。
未見だったけど、ギルドの資料で読んだことがあったから、一応知ってはいた。そんな相手を、何度か倒す。
この日はそんな一日で終わり、夜になって雨が止んだ後、私達は道の途中の宿でまた野宿をした。道中倒したウッドムを少し運んでいて、それを薪にして暖を取る。モエルがいるから火起こしは簡単だった。
しかしこの日の晩は、いつも以上にモンスター、というかキャベツガニが襲ってきた。移動も静かだから、暗い夜に現れるのは地味に厄介だった。モエルがすぐに気づいてくれたから助かったが、モエルがいてくれなかったら少し危なかったかもしれない。
翌日、早朝からまた歩き続ける。予定では今日アラケルに着く。そうしたらその後は、少しゆっくりしよう。まとまったお金も手に入るし、少しアラケルを見て回ろうと思う。
いくらか進んで、真昼になる前くらいの時間帯のことだった。
「にゃー!」
(ニリハ、何か来る!)
「ヒヒーン!」
モエルと馬車馬達が、突然何かに反応する。移動の足は乱れて、馬車は全て止まった。
「な、なんだ!」
「冒険者達、周囲の様子を確かめてくれ!」
デミングル達が叫ぶ。確かに、こんな事態は初めてだ。私はすぐにモエルに訊く。
「モエル、そいつはどっちにいる?」
「にゃー!」
(こっち!)
私は走るモエルへとついていった。
「ジュージ、こっち!」
「ああ!」
ジュージも来る。どうやら、青の風刃がいる側に、何かいるらしい。
「きゅー!」
警戒していると、草原から一体の小さいウサギが現れた。
白い毛並みで、背中にはいくつか黄色い毛がきれいに紛れている。そいつが私達の間を通り過ぎようとする。
あれはたぶん、癒やしラビットだ。回復魔法が使える、1ランクのモンスター。
そして癒やしラビットの後から、大きな黒い獣が現れた。
「グオー!」
見た目は狼。目は黒く、周囲に黒いモヤをまとっている。
その大きさは、私達の倍近く大きい。きっと、隙を見せれば丸呑みにされてしまうだろう。
「ダークネスウルフだ、お前ら下がってろ!」
ジュージがそう言って前に出た。
ダークネスウルフ、知らない。少なくとも、4ランクの資料にはいなかった。
となると、5ランク以上の相手?
私は途端に戦意が失せる。生き残らないといけないが、この場にはジュージがいる。彼がなんとかしてくれるなら、ここは慎重に動きたい。
「プライドシールド!」
ジュージが我先にと前に出て、ダークネスウルフの初撃を受け止めた。
「グルアー!」
ダークネスウルフはジュージに前を阻まれると、彼を敵だと認め、吠えた。
「風魔法!」
「にゃー!」
(全力、火魔法!)
クワッシングとモエルが加勢する。けど、効いている様子は、あまりない?
「きゅー!」
そしてその時、小さくだけど、癒やしラビットの声が聞こえた。
そうだ。相手は1ランクとはいえ、私達はダークネスウルフに注意をひかれてモンスターに後ろをとられてしまった。
臆病風に吹かれてかもしれないが、私は後ろを警戒する。
するとそこには、こちらへとまた走って戻ってくる癒やしラビットの姿があった。
そして、反対側の草原から現れる。新たなモンスターの群れ。
ウサギのような耳を持つ、群れるモンスター、ラビットウルフが、私達の後ろをとっていた。
挟み撃ち、危ない!
「皆、後ろにもいる!」
私はそう叫びながら、いち早くラビットウルフへと近づいた。
きっと、私がいち早くこっちの出現に気付けた。なら、私が対応するべきだ!
「ガウ!」
「きゅー!」
そして、ラビットウルフの一体は癒やしラビットを襲った。残り2体が、私へと殺到する。
大丈夫、なんとかなる。少なくとも、ダークネスウルフよりは怖くない!
「ハードガード、パワースラッシュ!」
私は2つの技を同時に使い、ラビットウルフ達の初撃に対処した。
「ガウ!」
「ガウガウ!」
私の剣を受けた方は、傷を負いながらもまだ動けている。なかなかタフだ。流石は3ランク。
しかし、私が自信をもっていられたのはここまでだった。
ラビットウルフ達は素早く左右に分かれ、私を挟み撃ちにした。
これはまずい、一体しか対処できない!
困った私は、すぐに迷いを捨てる。まずは一体、確実に倒すべきだ。
防御が困難なら、攻撃に全力を尽くす。そう腹をくくれば、自然と前に踏み込めた。
「パワースラッシュ!」
「ガウ!」
これは上手く決まった。手負いのラビットウルフが、更に顔から血を流す。
「にゃー!」
(ニリハ、危ない、火魔法!)
「ニリハ、風魔法!」
そして後ろからモエルとクワッシングが加勢してくれた。その効果の程は見ていないが、後ろからラビットウルフはまだ襲ってこない。
チャンス、ここで一気に動く!
「ハードガード、パワースラッシュ!」
手負いのラビットウルフの攻撃を上手く防ぎ、同時に渾身の一撃をお見舞いした。
それで、目の前のラビットウルフは倒れた。
よし、あと二体!




