アラケルへ 8
「ジュージいいい!」
剣士と槍使いは私達を簡単につきとばして、ジュージに向かって走った。
「ツヴァイブレード!」
「スティンガーランス!」
敵2人の技がジュージを狙う。
「フォートレスシールド」
けれどジュージは、いともたやすく盾で攻撃をしのいだ。
「火魔法!」
「マジックシールド」
魔法使いの攻撃も、しっかりガード。
「ダンシングソード」
そしてジュージは物凄く速い攻撃で、まずは剣士を圧倒する。
「く、ツヴァイブレード、うわあ!」
「くそ、スティンガーランス!」
槍使いがフォローに回るも、ジュージはたやすく相手の攻撃をしのぐ。
「だったらこれはどうだ、突風の剣!」
「ハードガード!」
剣士は魔剣の力を再び使うも、ジュージの盾によって向きを変えられ、竜巻をそらされる。
「ハードスラッシュ」
そしてジュージの剣が、剣士の腕を切り裂いた。
「ぐあー!」
「回復魔法!」
敵の回復魔法使いが回復に回るも、そっちにはダズエル達が襲いかかる。
「お前たちは、俺達が相手をする!」
「ジュージさんは絶対にやらせない!」
青の風刃が後衛2人を相手するなら、きっとこちらが有利なはずだ。ならば私とモエルは、ジュージのサポートに回ろう。
「モエル、魔法はまだ使える?」
「にゃー!」
(もうちょっと使える!)
「じゃあ、また使い時を伺って。さっきのサポートみたいに、頼んだわよ!」
「にゃー!」
(任せて!)
「サポートガード!」
私はジュージの援護を意識し、一時的に脚力を上げた。そして駆けつけざま、槍使いに攻撃する。
「ぐ!」
「倒れて!」
「く、この!」
槍使いは私に怒りの目を向けると、攻撃してきた。鋭い一撃を、なんとか盾で防ぐ。
そして攻撃を続けつつ、言った。
「あなた達はもう終わりです。抵抗をやめてください!」
「ふざけるな、私達はこれからなんだよ!」
槍使いは言った。
「ジュージを倒して、そこの馬車も奪って、返り咲く。お前らはここで死ね!」
ここで槍使いが、強い一撃を放ってきた。
「スティンガーランス!」
「ハードガード!」
技には技で対処する。たぶんこの実戦できたのは、偶然だ。
でも、偶然はここまで。私の盾が、大きく弾かれる。腕が上がって、大して動けない。その隙を狙って、更に槍が閃く。
「これで終わり!」
「にゃー!」
(火魔法!)
けれど、私には仲間がいた。
「ぎゃー!」
間一髪のところで、モエルの火魔法が槍使いを焼いた。
私は助かったと思いながらも、槍使いを見つめる。槍使いはその場でもがいた後、ゆっくりと崩れ落ちた。
そうだ、ジュージは?
「くそおおっ、突風の剣!」
「パワースラッシュ」
ふと見ると、ジュージと剣士の戦いも終わるところだった。
剣士がゆっくりと崩れ落ちる。ジュージはこちらを見て、それから青の風刃を見た。
「後衛が逃げたぞ、追え!」
「お前ら、追わなくていい!」
ジュージの一声で、青の風刃は立ち止まった。
「俺達は本来、馬車の護衛中だ。深追いはするな」
「はい、わかりました」
青の風刃は素直にうなずく。
「だが、一応は賞金首だ。首だけ持って帰るか」
ジュージはそう言ってから、私を見た。
「二リハ、その槍使いはお前が仕留めたんだ。首は持っていってやるから、賞金をもらえ」
「ええ、ありがとう。でも、その前に。彼らのことを、祈らせて」
「ああ、わかった」
私は、もう立ち上がることのない幸運の風2人を見てから、目をつぶって両手を握った。
せめて彼らの魂が、安らかに眠りますように。
少しだけ祈った後、2つの死体は道の脇に押しやられた。
青の風刃は賞金はいらないと言ったが、手伝った報酬として倒した2人の装備が欲しいと言った。
私達はこれを承諾。靴や槍といったものが、彼らの手に渡った。
けれど、突風の剣はジュージのものとなった。
ジュージが剣士を倒したのだし、魔剣は一番良い戦利品だ。というわけで、満場一致でジュージのものということになった。
「あの、ジュージさん。ところで、その魔剣、私共にお譲りになられる気はないでしょうか?」
「ああ、いいぜ。俺が持ってても、この剣が欲しくてやつらを賞金首にしたとも言われかねないしな。相場がわからないが、武器屋で確かめた後売ってやってもいい」
「そうですか、ありがとうございます。それでは、その魔剣はぜひデミングル商会にお売りください!」
これで、盗賊の襲撃は一応終わり。魔法使い2人は逃げたけど、仲間が2人もやられたのだ。きっと何もできないだろう。
馬車はすぐに出発。私は歩きながら、モエルに声をかけた。
「モエル、さっきはありがとう。おかげで助かったわ。盗賊にも勝てた」
「にゃー」
(うん。俺、偉い)
「そうね。私はまた、モエルに助けられたわ」
「にゃあ?」
(ニリハ、ちょっと元気ない?)
「そんなことないけど、そうね。ちょっといろいろあったから、かも」
「にゃー!」
(ニリハ、大丈夫。二リハは俺が守る!)
うん。ありがとう。
私には、モエルがいる。それが今は、心強かった。
「そういえば二リハは、死んだら魂が眠りにつくという思想派なんだな」
歩きながら、ジュージに言われた。
「え、うん」
「俺達冒険者は、死んだら魂は次の生まれる肉体に移るって考えてるやつが多い」
「そうなの?」
「ああ。だから、あいつらもその内、そこらに生えてる木や花にでもなってるだろうな。だから、気にするな」
「うん。そっか」
そっか。そういう考えもあるのか。
「まあ、どうしても気が晴れないなら、次の村で酒でも飲むんだな。それで忘れろ」
「私はジュージじゃないからそれは無理」
「なら早く持ち直せ。護衛はまだ続くんだぞ」
「うん。わかってる。わかってるわ」
今日、私は、初めて人を殺した。
倒したのはモエルだけど、モエルのおこないは、私のおこないでもある。だから、同罪。
罪、なのだろうか。罪深かったのは、向こうの方なのに。
わかってる。私は正しいことをした。やらなければやられていた。
けれど心のモヤモヤは全く晴れず、しばらくは気がそぞろのまま護衛を続けた。
けど、もしジュージの言うことが本当なら。
彼らの魂は、次はきれいな花になって、安らかな時を過ごしてほしい。




