アラケルへ 7
ジュージと軽く稽古をした後、温かなベッドで睡眠。
美味しい朝ごはんを食べたら、早々に出発となった。
ルトミ村を出て、道沿いに進む。現れるのは、スライム、ランチキン、サークルリーフ。今のところ、苦戦する相手じゃない。順調だ。
けれど、ある程度進んだところで、モエルが警戒した。
「にゃー!」
(ニリハ、人間が隠れてる!)
「モエル、本当なの?」
「にゃー!」
(あそこ!)
私はモエルが睨む方を見てみる。私では何も感じないけど、でも、モエルのことは信じている。
「ジュージ、モエルが誰か隠れてるのを見破ったわ。ひょっとしたら、盗賊かもしれない。警戒して馬車を止めてもらいましょう」
「ああ、わかった」
ジュージは馬車に声をかけて、一度移動を止めてもらう。
そして、周囲に危険が迫っていないことを確かめてから、私達は青の風刃と共にモエルが睨んでいる方へと近づいた。
そして、道を外れて茂みの先を確認しようとした瞬間。
「火魔法!」
目の前から強力な炎が、広範囲に噴射された。
「マジックガード!」
「にゃー!」
(火魔法!)
私には避ける間もなかったけど、モエルが火魔法で相殺してくれた。
その直後に、茂みから2人の男女が出てくる。剣を持った男と、槍を持った女だ。
その姿を見て、すぐにわかった。向こうの装備の方が良いものだ。おそらく、相手は私より格上の相手。
それでも、無傷のジュージが前に出た。ここは私も合わせるしかない。
それが、仲間というものだ。
「ぎゃー!」
「ぐわー!」
火魔法で燃えているダズエルとセンラは申し訳ないが、今はかまっている余裕がない。自分たちでなんとかしてほしい。
それより、敵2人がジュージに襲いかかった。間違いなく彼らは盗賊だ。身なりは冒険者だが、間違いない。
ひょっとしたら、冒険者の装備を奪って使っているのかもしれない。どのみち油断はできない。
ジュージは2人の攻撃を、剣と盾でしのいでいるが、攻め手がない。
ならここは、私達が加勢して一気に有利を取ろう。
「モエル、敵に火魔法!」
「にゃー!」
(わかった、火魔法!)
モエルの攻撃で、槍を持った女が燃える。これは効いたはず。
「回復魔法!」
けど、更に茂みから現れた男が、槍の女を魔法で癒やす。どうやら敵は2人ではないらしい。
なら、最初に火魔法を使ってきた相手も合わせて、4人か。
「突風の剣!」
その時、剣士が剣から竜巻を生み出した。
それでジュージが吹き飛ぶ。く、これでは迂闊に近づけない。
というか、突風の剣?
どこかで聞いたような。
「お前たち、幸運の風だな」
「こんなところにいやがったのか」
火から逃れたダズエルとセンラが言った。
幸運の風。ジュージが賞金をかけたっていう、あの。
「うるさいぞ、ガキ共」
「今なら命だけはとらないでやる。降参して武器を捨てな」
相手の剣士と槍使いが言った。とうとう決まり文句さえ言われてしまった。
けど、こっちの意見は、考えるまでもなく決まっている。
「大人しく従うわけないだろ」
「お前らはもう終わりだ、賞金首共。皆がお前達を狙っている。外道達の行き着く先は、地獄だけだ!」
ダズエルとセンラがそう言って突進した。
私も2人に合わせる。
「火魔法!」
「風魔法!」
茂みから四人目の敵が現れ、火魔法をまた私達にぶつけてきた。
けれど、クワッシングが風魔法で炎を吹き飛ばし、ダズエルとセンラは事なきを得る。
「にゃー!」
(火魔法!)
私の方も、モエルが相殺してくれる。
いや、モエルの火魔法の方が火力が高かったようだ。相手の火魔法を貫いて、剣士にあたる。
「う、熱い!」
「回復魔法!」
相手の立て直しは早い。けど、このチャンスは見逃せない。
ダズエルが剣士に、センラが槍使いに挑みかかる。相手は一瞬押されたが、すぐにこちらを圧倒し始めた。どうやら、腐っても4ランクの実力者らしい。強い。
私は突風の剣を警戒しつつ、剣士の方に向かう。ダズエルと一緒に攻撃した。
「パワースラッシュ!」
「パワースラッシュ!」
「ツヴァイブレード!」
私達の攻撃は、難なくしのがれた。けれど、相手も攻撃する余裕がないようだ。ここはこのまま押すしかない。
「モエル、火魔法!」
「にゃー!」
(火魔法!)
「ぐうう!」
更にモエルの力も借りて、一気に攻める。これで1人は倒せた。そう思った時。
「突風の剣!」
相手がそう叫ぶと、相手の剣から竜巻が発生して、私がふきとばされた。
「きゃあ!」
思わず倒れる。
「にゃあ!」
(ニリハ!)
「大丈夫、よ!」
私に怪我はない。それより問題は、次の相手の動きだ。
「それ、ツヴァイブレード!」
「う、ぐああー!」
案の定、ダズエルがやられていた。
私はすぐに立ち上がる。このまま幸運の風に勝たれることだけは、絶対に阻止しないといけない。
「サポートガード!」
私は技を使って素早く動き、ダズエルの前に瞬時に移動した。
「へっ、ここでお前が来てなんになる!」
「そうね、なんにもならないかもしれない。けど、諦めることだけはしない!」
私は剣士の剣を受け止めつつ、カウンターを決める。
「パワースラッシュ!」
「パワースラッシュ!」
同じ技で返された。私の剣は、大きく弾かれる。
その隙を突かれて、相手の剣が近づいてくる。
「じゃあ死ね」
盾でガードは、ダメだ。防ごうとしても、相手の狙いがすぐに変わって、ついていけない。
「シャインガード」
その時、相手の動きが若干鈍った。
かろうじて私の盾が防御に間に合う。そして反射的に剣で攻撃。
このタイミングでの私の攻撃を、相手は避けられなかった。
けれど、狙いが甘く、防具を叩いただけで終わる。これは大きなミスだ。
「ジュージいい!」
けれど相手は、私のことなんて眼中になく、私の後ろに視線を向け、声をかけた。
「お前さえ、いなければ。あの時さっさと死んでいれば!」
槍使いもジュージの方を見ている。
「俺達はこんなに酷い思いをしなくてすんだんだ!」
「さっさと死ね、ここで死ね!」
後ろの魔法使い2人も憎らしげに言う。
けど、ジュージは。
「お前らじゃ俺は殺せねえよ」
そう言って、怒りも憐れみも何もない、ただ静かな言葉を相手にかけた。




