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アラケルへ 4

 私達が見張りをしている間に、ワンドッグが合計3匹現れた。

 全て一匹ずつ現れて、難なく撃破。素材は、日中歩いている内に臭っても嫌なので、いらないということにした。

 死体は、ナーラと一緒にできるだけ遠くへ運ぶ。私達の近くに死体があるというのも嫌だ。その後交代時間がきて、私達は再び眠りにつく。

 そして早朝、日が地平線から完全に出てくる前に、デミングル達が宿から出てきて、すぐに出発した。


 その後現れたのは、ワンドッグ、スライム、ランチキン。ランチキンは初めて見る敵だったが、アースカッターよりは動きが遅かった。見事何羽か倒す。私も倒した。

「おお、ランチキンは私共が買い取ります。状態が良ければ一体400シクル払います」

 そこでデミングルから臨時収入を得る。それぞれ倒した人が換金した。


「にゃー」

(なんか暇ー)

「モエル、頑張って警戒して。今日もこのまま歩き通しだから」

「にゃー!」

(俺も戦う!)

「でも、モエルが相手する程のモンスターが現れないのよね。じゃあ、次戦う時は、モエルにお願いするわよ?」

「にゃー!」

(うん、俺戦う!)

 その後すぐにモエルの出番がきた。スライムが2体現れたので、一体燃やしてもらう。

 私もすぐにコアを切り裂いて、あっという間だった。すぐに移動は再開。

「にゃー」

(楽勝すぎて物足りないー)

「モエル、もうちょっと待っててね。強い敵が現れたら、モエルの出番だから」

「にゃー?」

(絶対現れるー?)

「うん。きっと現れる。と思う」

 その後も特に大したモンスターは現れず、私達は第一の村、ジレトに到着した。


 早朝に出発したからか、まだ日は暮れていない。

「よし、今日はこれで護衛終了だな。今夜は屋根のあるところで寝られるぜ」

 センラがそう言って、大きく伸びをする。そうか、私達もどこか宿で泊まればいいのか。

 というか、この村、私の故郷より広くて豊かだ。なんか差というか、理不尽のようなものを感じる。

「今回は運が良かったな。このあたりでも3ランクのモンスターがたまに現れる。このまま順調にいけばいいんだが」

 ジュージがそう言う。3ランクのモンスターか。会えなくて良かったような、残念なような。

「このあたりの3ランクモンスターって、どんなのなの?」

「サークルリーフだ。それか珍しくてラビットウルフだな。4ランクのモンスターも出たことがあるとは聞いたことがあるが、まあそれは本当に稀だ」

「サークルリーフ。強敵なのよね?」

「どうかな。動きは速いが、読みやすいからな。慣れれば3ランクの中でも狩りやすい方だ」

「慣れれば、ねえ」

 そんな機会があれば、いいのだけど。

「あ、あの、すみません!」

 そんな時、村に入った私達に、1人の女の子が声をかけてきた。立てるようになって2、3年という感じのまだまだ幼子だ。

「なにかしら」

「にゃー?」

(お前、敵?)

 モエル、こらこら。

「あ、あの、ここに来る途中に、男の子を見ませんでしたか?」

「男の子、見てないわ」

「そうですか」

 女の子はうつむいてしまった。

 ちょっと、気になる。

 私は完全に立ち止まって、女の子に訊いた。

「その子が心配なの?」

「はい。ズマは、スライム倒してくるって言って、1人で村の外に行っちゃって。まだ帰ってこなくて」

「心配ね。ねえ、ジュージ。私、ちょっと見てきていい?」

 全く立ち止まらず馬車についていくジュージに声をかけると、ジュージはこちらを見ずに手を振った。

「好きにしな」

 よし、わかった。それじゃあ好きにする。

「それじゃあお姉さんが、ちょっと探してくるね」

 村の子供に何かあったら守るのが、村人の仕事。その村人を頼れないのなら、冒険者の仕事だ。

 少なくとも私は、どこの村の子供であっても、心配なら助けに行く。それが私の培った村人魂だ。

「お願いします。ズマ、帰ってきてほしいから」

「わかったわ。モエル、一回村の外に出るわよ。男の子を探すの」

「にゃー!」

(わかった!)

 モエルは鼻をクンクンさせると、小走りで少し駆けてから、私を見て言った。

「にゃー!」

(こっち!)

「わかったわ、モエル」

 さすがモエル。これなら名犬ならぬ、名猫になれるかも。


 モエルの後を走って追うと、結構走った先で、小川の近くで黒いモヤがあるのを見つけた。

 一瞬火事かと疑うが、そんな様子ではない。あれはもしかして、モンスター?

「モエル、全力で戦って!」

「にゃー!」

(わかった!)

 おそらくだが、黒いモヤは3ランクのモンスター、カタカタだ。

 普通の攻撃が効かず、魔法でしか倒せない。厄介なモンスター。

 でも、モエルなら、火魔法を使えば勝てる!

「にゃー!」

(火魔法!)

 モエルが大きな炎を放つと、それがカタカタに当たり、勢いよく燃え上がる。

 カタカタはよろめいて、苦しむように移動した。こちらに寄ってくる。動きは結構速い。

 私は後退りながら、鋭く叫んだ。

「モエル、相手が倒れるまで火魔法!」

「にゃー、にゃあ!」

(えい、えい!)

 モエルが更に火を放つ。すると、カタカタの動きがだんだん遅くなっていった。

「にゃー!」

 そして、このモエルの火魔法で、カタカタは遂に消滅した。

 カタカタが燃え尽きる。そして、カタカタが最初にいた場所に、少年が倒れていた。

「助けに来たわ!」

 やはり、少年はモンスターに襲われていたのだ。それも、3ランクの相手に。少女の心配が、この子の命を救うことにつながった。

 そうだと言ってほしい。

「怪我はない、立てる?」

 私は少年、おそらくズマを抱き起こして、揺さぶる。

「う、うう」

 大丈夫、良かった。目はつぶっているけど、まだなんとかなりそうだ。

「今、ポーションを飲ませてあげるわね」

 背負い袋からポーションを取り出し、飲ませる。すると、少年はゆっくり目を開けた。

「あり、がとう」

「1人で立てる?」

「ううん」

「私が運ぶわ。もうダメよ、危ないことしちゃ」

「うん」

「絶対よ」

「う、うん」

「私と、あの子に誓って」

「あの子?」

「女の子よ。彼女が心配してくれたから、私がここまでこれたの」

「あり、がとう」

「そうよ。だから、約束守ってね」

「にゃー」

(そいつ、ぐったりしてる)

「カタカタに襲われてたんだから、仕方ないわ。でも、出血とかはなさそう。ある意味、襲われたのがカタカタで良かったわね」

 それ以外のモンスターだったら、本当に危なかったかもしれない。

「モエルも、ありがとう。あなたのおかげで助けられたわ」

「にゃー」

(ご褒美は肉が良い)

「うん。わかった。村に戻ったら探してみる」


 村に戻ると、女の子がズマの無事を喜んで、ひとまずズマの家まで案内してくれた。

 そこで、ズマの両親に感謝され、私はその家に、一晩お世話になった。

 毛布と寝床だけでなく、温かい食事まで用意してくれる。お金を渡して肉料理を頼むと、ランチキンの肉料理を用意してくれた。たぶんそれ、私が今日倒したやつだ。

 ランチキンのお肉は美味しかった。モエルも満足してくれた。

 そしてその翌朝。私は美味しい朝ごはんと芋を焼いたお弁当をもらってから、ジュージ達と合流して馬車の護衛へと戻った。

 その際民家から出ていく時、少し元気になったズマに見送られた。

「お姉さん、名前は?」

「二リハよ」

「二リハ、さん。俺、何時かすっげー強い冒険者になるから!」

「そういう無理は、しなくていいから。折角助かった命、無駄にしないで」

 やはり男の子というのはどこで生きていても、無茶をする生き物らしい。

 でも、無茶をしているのはお互い様か。そう思いながら、私は旅を続けた。


 その十年後。

「キーコ、俺はやっと、冒険者になる。そして二リハさんに認められる男になるんだ!」

「もう、ズマったら、あのニリハさんには逆立ちしたって相手にされないってわかってるでしょ。ニリハさんの恋の歌は十曲以上もあるのよ。あなたがいくら頑張っても歌の1フレーズにもならないわよ!」

「いや、そこまでじゃない。はず! とにかく、これは俺なりのけじめなんだ。初恋のあの人に認められたい。俺は必ずやるぞ!」

「もう、ズマったら、バカ!」


 その更に十年後。

「なあ、キーコ」

「なによ、ズマ」

「なんでお前、まだ誰とも結婚しないんだよ」

「なんでそんなことあんたに言われなきゃならないのよ」

「いや、なんでかなって思って」

「あんたがいるからよ」

「え?」

「ズマがいて、ズマがバカだから、私はまだ結婚できないの」

「そ、そうか。俺、バカだからよくわかんねえけど、なんつうかさ、その、お前は俺じゃないと幸せにしてやれないんじゃないかと思って」

「はあ?」

「だからさ、その、結婚しよう。俺と」

「あんた、二リハさんのことはもういいの?」

「ニリハさんのことは、もうけじめついたっていうか、自分で納得できたっていうか、もう、いいんだ。そしたら、なんとなくお前のことが思い浮かんだから、キーコでいいかなって」

「はあ? なんとなく? 私でいい?」

「え、キーコお前、怒ってる?」

「知らないわよ、バカ!」

「とにかく。お前が好きだ!」

「バカ」

「うっ」

「バカ!」

「な、何度も言うなよ!」

「私はとっくの昔から、あなたのことが好きだったんだから。バカ!」

 そんなことがあったとか、私の知らないところで起こったというか。

 これは私の旅に少しだけ関係があった、初恋の話。





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