アラケルへ 2
私達は、輪になって夕ご飯を食べた。
といっても、私とモエルは黒パン1個。ジュージは白パン、青の風刃は干し肉を食べている。だから皆、食べ終わるのは早い。
でも、そうか。旅最初の1日目は白パンでも良かったか。次は私もそうしよう。干し肉も後で試してみる。
「二リハは黒パンなのか。それだけじゃ力でなくないか?」
センラにそう言われる。
「でも、慣れてるから。私のご飯はいつもこんなものよ」
というか、それ以外を思いつかなかっただけなんだけど。
「そうか、大変だな」
「もっとランク上げて良いもの食わないとな!」
「う、うん」
黒パンって、そこまで言われる程のことだろうか?
「私はナーラ」
「俺はクワッシングだ。よろしく」
どうやら、回復魔法使いの女性がナーラ、魔法使いの男性がクワッシングと言うらしい。
「よろしく。私は二リハ。こっちがモエルよ」
「にゃー」
(よろしく)
「その子、カジーニャよね。可愛い。良いわね」
「ええ。モエルはすっごく頼りになるの。強敵が現れれば、活躍してくれるわ」
「そうか、頼もしいな」
「火魔法を使えるのは、心強いね」
ダズエルとクワッシングがそう言う。
「にゃー」
(えっへん)
「まあ、それ以上に、ジュージがいれば大抵の敵は倒せちゃうと思うけどね」
「ああ、ジュージさん。もしもの時はよろしくお願いします」
センラが言う。
「ああ」
「センラはジュージと知り合いなの?」
「いや、そういうわけじゃないけど、ジュージさんは有名なんだ。フリーの6ランクと言ったら、ジュージさんのことだよ」
「ジュージさん、ダンジョンでの話は本当なんですか?」
クワッシングがそう話しかける。
「ああ。幸運の風は俺を襲った。お前らも気をつけろ。もしかしたらその内会うかもしれないしな」
「はい」
「とんでもないやつらですね」
クワッシングがうなずき、センラが憤る。
「臨時とはいえ仲間を狙うなんて、許せない!」
「そういうやつもいるってことさ。お前らも気をつけろよ」
「はい!」
青の風刃の皆はうなずいた。へえ、ジュージって尊敬されてるんだ。私はもう今更って感じだけど。
「でもそう言うことなら、二リハは安全ってことなんですよね?」
「あ? ああ」
ダズエルの言葉に、ジュージは曖昧にうなずいた。
「二リハはまあ、ついでだ」
「ちょっと、違う言い方があるでしょ」
「3ランクになりたてのやつに他にどんな言い方があるんだよ。こいつとはたまたま縁があったんだ。詳しくはそっちに聞け」
ジュージが投げやりにそう言うと、青の風刃の視線が一気に私に向いた。
「へえ、ニリハはどうやってジュージさんと知り合ったんだ?」
「そうね。ジュージと会うきっかけは、私が冒険者になろうとしたこと。より正確に言うと、冒険者になるのに試験があると知ったことからだったわね」
私はジュージとの出会いをぽつぽつと話した。
「それは、運が良かったな。ジュージさんから戦いを学べれば、確かな実力が身につく。自信にもつながる」
ダズエルが言う。
そうだろうか? いや、たしかにこれまでの戦いは、大体上手くいってるけど。
けど、ジュージに声をかけられなかったら、雨が降るまでシラーが来てくれなかったわけだし、幸運だったとは言えるかもしれない。
「確かに、ジュージには助かったわ。装備も整えてくれたし」
「そうだぞ、二リハ。大いに俺に感謝しろ」
「そこまでではないかも」
「おい」
「ジュージさんの稽古か。ジュージさん、一度、俺にもしてもらえますか?」
「お、俺もお願いします!」
「じゃあ、折角だから俺も」
ダズエル、センラ、クワッシングがそう言った。
魔法使いのクワッシングも? と思ったが、確かにジュージと稽古ができるのはチャンスだ。こういう機会、逃したくないタイプなのかもしれない。
「面倒だが、まあ、暇だしいいか。1人一戦ずつ相手になってやる。俺が後手でな」
「ありがとうございます!」
三人は元気よく感謝した。
「なら、折角だから最後に私もお願いしていい?」
「あ? いいぞ」
ラッキー。強敵と安全に戦えるチャンスだ。少しでも経験をつみたい。強敵といっても敵じゃないけど。
「今回は特別サービスで、タダにしてやる」
「ありがとう」
「ありがとうございます!」
というわけで、私達4人は順番でジュージと戦った。
そして見事に全員コテンパンにされた。もうちょっと手加減してほしかった。
「俺ってまだまだなんだな」
「俺、超よええ。足元にも及ばねえ」
「手も足も出なかったな」
ダズエル、センラ、クワッシングがそう呟く。どうやら心も折られたらしいが、まあ、良い経験だろう。
「ねえ、ところで夜の見張りは、皆でやりますよね?」
ダズエルとセンラが自信消失しているところ、ナーラがジュージに訊いた。
「ああ。まあそれでいい。だが順番は俺が決めていいか?」
「はい。ジュージさんが言うなら間違いありません」
「じゃあ、俺、そっちのリーダー、二リハ、そっちの女の子、後の2人で3チームだな」
「はい、かまいません。あ、俺がリーダーです」
ダズエルがうなずく。
「私もそれで構わないけど、なんでこの組み合わせなの?」
「俺とニリハは二人組だ」
「にゃー」
(なんか俺を無視してる?)
「ああ、お前は二リハのおまけだ。俺達が2人共寝てたら、交代で起こしに来るのがそっちのメンバーだと少し気まずいだろ。それともう1つ、コミュニケーションだ」
「なるほど、さすがジュージさんです!」
「やっぱりしっかり考えた組み合わせだったんだな」
ダズエルとセンラがうなずく。
「じゃあ私はニリハと見張りね。よろしく」
「うん。よろしく」
「にゃー」
(俺もいるよ)
「モエルもよろしくね」
「にゃー」
(うんっ)
「順番は、俺、二リハ、残りでいいか?」
「あ、はい。いいです」
「それじゃあ一日ごとに最初の見張りが最後の見張りに変わるということで。もしメンバーを変えたい時は、そのつど申告しましょう」
こうして私達は、馬車を囲うようにして寝た。
外は少し寒かったけど、モエルを抱いて寝たら、少し温かかった。




