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今、旅が始まる 2

「殺されかけたって、本当なの?」

 私は少し、背筋が凍った。

「ああん、俺が嘘ついてるってか?」

「いいえ、そうじゃないの。そうじゃなくって。ただ、信じられなくて」

「んんまあ、そうだな。俺もまさかとは思ったが、あいつらも挙動がおかしかったからな」

「それって、予兆はあったってこと?」

「ああ。ダンジョンで見つけた宝剣、突風の剣。あれを見つけたところから、あいつらが俺から距離を取り始めた。最初に宝を見つけた時は、俺はいらないかわりに、その売却価格を人数分で割った額をもらうって決めてたんだ。だから、宝を見つけたら、何かしらしてくる可能性は低いと思ってたんだが、その低い可能性が出ちまったってわけだ」

「ここでジュージを始末してしまえば、その分お金を出さなくていいってわけね」

「そうだ。マジックバッグも狙われてたかもしれないが、とにかく、幸運の風は俺を狙った。バカなやつらだよ。もうあいつらはお尋ね者だ。今あいつらに賞金をかけた」

「賞金、それも依頼なの?」

「そうだが、賞金をかけたら各ギルドや騎士団なんかにも手配書がまわる。もう町には入れねえよ。門番が一発で捕まえる。今回は生死問わずだからな。魔法の剣も持ってるって記載するから、いろんなやつが狙うかもな」

「生死問わずだと解決する可能性は高いの?」

「殺して装備をいただこうとするやつ、捕まえて奴隷にしようとする組織、まずいろんなやつらから狙われる。敵が多いと、二リハだって困るだろ」

「まあ、ね」

「この町もな。人が多い分闇も深いんだ。まあ、二リハは気にするな。それより、仕事をやろう」

「ええ。なんの仕事をするの?」

「護衛だ。そこから適当な別の町に行くさ」

「ねえ、ジュージはこの町を出ていかなくてもいいんじゃないの?」

「一度ケチがついたからな。変なしがらみがない内に、町を出る。それじゃあ、気を取り直して護衛依頼を探すか」

「あ、それじゃあ私が先に見てくるわね」

 私は先に席を立ち、掲示板を見に行った。ジュージはまだ飲み食いしている。

 3ランクからの、護衛依頼。えーと、あ、3つもある。

 その内1つは、ダンジョンへの同行依頼。これは受けないわね。

 あとの2つは、一番早い出発日のやつと、一番報酬が高いやつだった。

 あ、でも報酬が高いやつは、3パーティ以上募集って書いてある。じゃあこっちはきっと無しね。

 となると、受けるのは一番早い出発日の依頼になる。

 出発日は3日後。依頼主は、商人のデミングルさん。依頼内容は、隣の町、アラケルまでの護衛。

 私はそれを、ジュージに伝えた。

「ああ、じゃあそれでいい。報酬は山分けでいいだろう」

「いえ、報酬は1人1人に個別に払うって書いてあったわ」

「なんだ、抜け目ないな。まあ、それでいい」

「じゃあ、依頼書だけ取ってくるわね」

「ああ」

 食べ終わったジュージが私から依頼書を受け取って、軽く見る。

「ふうん。最低ランク3以上か。丁度良かったな」

「ええ。渡りに船ってやつね。いえ、この場合は渡りにジュージかしら」

「全然上手いこと言ってねえぞ」

「そういう時もあるわよ。モエル、私達、もう少しで町を出るわ。旅につきあってちょうだいね」

「にゃー」

(いいよ)

「お願いね。本当、あなたは頼もしいわ」

「にゃー」

(当たり前じゃん)

「カジーニャねえ。まあ、後衛だと思えばやりやすいか。じゃあ、依頼が決まったら、顔見せに行かないとな。もう暗いから明日でいいだろう。昼めし前頃に、デミングルの元へ行こう」

「ええ、わかったわ」

 こうして、私達は急遽、護衛依頼で町を出ることにした。

 本当はもう少し強くなってから、とも思ったんだけど、いつまでも足踏みしていられない。行けるチャンスに、旅に出よう。

 そして私、ふと思う。

 デミングルさんが向かう町、アラケルは、私の旅の行き先と合っているのだろうか?

 まあ、方向がちがくても、旅を続ければいいか。

 違う町を点々と旅するのも、面白いかもしれない。


 パンを買って借り長屋へと帰る。ジュアラは先に帰っていた。

「ジュアラ、ただいま」

「おかえり、二リハ」

「にゃー」

(ただいま)

「モエルもおかえり」

「ねえ、ジュアラ。私、急にだけど、旅を始めることにしたわ」

「あ、二リハ。そっか。うん、頑張ってね」

「うん。頑張る。ジュアラも頑張ってね」

「うん。頑張るけど、1人ぼっちになるのは、少し寂しいな」

 私はジュアラの手を握った。

「ごめんね、1人にさせて」

「ううん。これは、私が望んでたことだから。大丈夫、1人でも生きていけるよ。それより、二リハがいなくなったら、早くここを出てもっときれいなところに住まないと」

「そうね。ここは狭いしね」

「ふふふ」

「ふふふふ」

 私とジュアラは笑い合う。

 どうやら、ジュアラとは寂しい別れにはならなくて済みそうだ。

「ジュアラ、私は一度、故郷のあった領地まで行ってみる。シイドが乙女召集令を止めてくれていたら、そこから先の手がかりが残っているかもしれない。それに可能性は薄いけど、シイドもまだそこにいるかも」

「うん。そうね。あ、それなら、二リハ、手紙を持って行ってくれる?」

「手紙か、いいわよ」

「家族への手紙。手紙が何時村につくかはわからないけど、二リハが近くまで行くなら、まずは二リハに任せようって」

 手紙は基本、町を行き来する行商人や戦士団等が届けてくれる。そこから最後に商人ギルドが各家まで届けてくれる。

 けど、そもそも手紙を届けるべき町に行く商人達がいない場合、手紙はそこで配達が滞ることになる。もしもの時は、何年も。

 つまり私が故郷の近くまで持っていった方が、手紙が届く可能性が上がるのだ。

 そしてここで、ジュアラの手紙も預かると、私の旅の目的が増える。

「うん。これで、ますます旅を続けなくちゃいけなくなったね」

「そんな大した用事でもないけど、家族には何も言わずこっちに来ちゃったから。ちょっとは連絡しないとなって。二リハも手紙書く?」

「うん。書く書く」

「じゃあ、一緒に持って行って」

「わかった。じゃあ、私も手紙の内容考えなくちゃね」

「うん。一緒に考えよう」

「そうね」

 私達は2人で、この町に来てからの暮らしを振り返った。

 そして明日の仕事帰り、それぞれ商人ギルドで手紙を書いてもらおうということにして、今日もモエルを一緒に抱いて寝た。


 翌朝。私はリッシ達に、ヨツヘインを出ることを伝えた。

「ということで、明後日にはこの町を出るわ」

「そうか。二リハ、元気でな」

「探し人、見つかるといいな」

「二リハ。お前がいなくても、俺達はやっていけるからな。余計な心配はするなよ」

 リッシ、ダマン、クオックはそれぞれ声をかけてくれた。

 だから私は、笑顔で彼らとお別れできた。

「ええ。皆、元気でね」


 その後は、冒険者ギルドの図書室を借りて、ヨツヘインとアラケルとの位置関係を調べる。

 すると、図書室ではヨツヘインとアラケルを含む、このカタード領までの地図を見ることができた。

 領内しか見れないということは、私達の故郷まではわからないということだ。ちなみに私達が生まれ育ったのは、ケルーミ領のナモナ村。まあ、村までの場所は、この町では流石にわからないと思う。田舎すぎて。

 とにかく今は、アラケル方向が故郷に近づいているかも、不明。

 そのことをジュナイに話したら、町の図書館なら故郷までの地図があるかもしれないと教えてくれた。

 私はその助言をあてに、図書館へ行く。入館料としてお金を払うついでに、地図の場所を訊く。

「あの、ケルーミ領までの方角を、地図で知りたいんですけど」

「王国内の地図ですか。それでは、ご案内いたしますね。ですが」

「はい」

「その、館内に動物は入れられません」

「にゃー」

(ここ、ちょっと良い匂いがする。よく燃えそう)

「モエル、ごめん、あなただけ外で待ってて。私、ここで大事な調べ物をしないといけないの」

「にゃー」

(嫌、二リハといるっ)

「お願い、少しの時間だけ。お肉買ってあげるから」

「にゃー」

(少し、だけだよ?)

「うん。すぐ戻ってくるからね。お願い、良い子にしてて待ってて」

 私は急いで図書館を利用した。

 メモ書きのため紙とペンをその場で買えたので、ためらわずそれを利用する。

 こういう時お金を出し惜しみしないのは、5万シクルくれたおじいさんのおかげだ。本当にありがとうございます。


 図書館の人が選んでくれた王国マップを見ると、カタード領からケルーミ領の間には、2つか3つの領地をまたがなければならなかった。

 まずカタード領の隣に、ホクア領がある。

 そのホクア領の隣に、マルト領、ラゼンタ領。

 マルト領の隣がケルーミ領なのだが、ラゼンタ領へと行ったら、更にボネーロ領があって、そこからケルーミ領になる。

 それがヨツヘインから南西へ移動する、直進ルート。そして方角的に、アラケルへ行って正解らしい。

 ひとまず、そこまでメモする。そしたら、すぐに退館した。モエルが待っているから、ちゃんとすぐ外に出る。

「にゃー!」

(ニリハ、遅い!)

「ごめんね、モエル。でも、ちゃんとわかったよ。ありがとう。待ってて偉いね」

「にゃー!」

(お肉食べるー!)

「そうね。あ、そういえば、もうすぐデミングルと会う時間ね。モエル、向かいながらお肉を探しましょう」

「にゃー!」

(うん!)

 デミングルと会える場所は、依頼書に簡単に書いてあった。場所の名前は、デミングル商店。

 私とモエルは、そこに向かった。





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