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今、旅が始まる 1

 今日は依頼を休むことにする。リッシとダマンがアースカッターに斬られた防具を買い直すためだ。昨日もなかなかソウピッグを見つけられなかったし、もしかしたら更に何日か休むかもしれないらしい。

 私は折角なので、冒険者ギルドで3ランクの資料を調べてみる。

 もう3ランクのモンスターを、2種類も倒した。モリンモとアースカッター。どちらも強敵だった。このまま依頼を続けていくなら、また戦う可能性が高い。少しでも相手のことを知っておこう。

「ジュナイ、図書室を使わせてください」

「ええ、わかったわ。それと、二リハ。あなた、ポイントが一定値までたまったから、3ランクに昇格よ。ギルドカードを出して。更新するから」

「え、もうですか?」

 ちょっと驚く。2ランク昇格の時といい、かなり早い気がする。

「ええ。3ランクのモンスターを2体倒してるのが効いたわね。十分実力はあるって」

「そうですか。わかりました」

「あなたの実力なら、まだ上を目指せそうね。このまま4ランクまでスピード昇格、頑張って」

「いえ、私なんてまだまだです。3ランクのモンスターも、1人では倒せなかったし。大体モエルのおかげです」

 本当、モエルは私の命の恩人になり続けている。

「テイムモンスターの力は、モンスターテイマーの実力の内よ。2人の関係も上手くいっているみたいで良かったわ」

 そう言ってくれると、悪い気はしない。モエルも褒められてる気がして、ちょっと嬉しい。

 こうして私は、目標の3ランクへと上がった。嬉しいはずだけど、突然のことだったのでまだ実感がわかない。

 ひとまず、図書室に行って3ランクの資料を読みこむ。3ランクのモンスターは、2ランクの倍近くいた。


 ウサギのような耳を持つオオカミ、ラビットウルフ、風を巻き起こすサークルリーフ、相手を体内にとりこんで生命力を奪う影のモンスター、カタカタ。

 本で読むだけで手強そうに思える。群れで現れたり、魔法を使ったり、そもそも武器が通用せず、魔法しか効かなかったり。とても1人で勝つのは難しそうだ。

 いや、私にはモエルがいる。彼の力も借りて頑張ろう。

 そして、私も強くならないといけない。当面の目標は、3ランクモンスターに1人で勝てるようになること。そこまで強くなるためにも、どんどん3ランクの依頼をこなさないといけない。

 でも、まずは慎重に、3ランクの素材採取をやっていこうかな。モンスター討伐依頼は、モンスターを見つけて、かつ倒して討伐証明部位を持ち帰らなくてはいけない。それは、結構な難易度だ。素材採取なら、戦闘を回避できる分簡単のはず。

 依頼もできるだけ失敗したくない。実力もだが、ランクも確実に上げていきたい。

 今日も、日が暮れるまで読みふけった。退屈していたモエルをなでてから、図書室を出る。

 3ランクになったギルドカードももらい、ギルドを出る。するとその時、ボロボロになったジュージと出会った。

「あ、ジュージ。久しぶり」

「ああ、二リハ、後でな」

 ジュージは疲れたように言いながら、ギルドの中へと入っていった。何かあったんだろうか?

 そういえば、ジュージは臨時パーティを組んでダンジョンに挑んだらしい。あれ、でも、今1人だったような?

 私は少し、ジュージのことが気になった。それに、ダンジョンの話も気になる。依頼でまた森に入るかもしれないから、どんなモンスターが出るかも聞いておきたい。

 少し考えてから、ジュージの後を追った。

 ジュージは受付に向かって、何か話をしていた。そして、ジュナイにお金を渡す。

「お金?」

 私はジュージが、受付で何をしているか気になった。

 ジュージは受付から離れると、バースペースで料理を注文し始めたので、私はそこに近づいて一緒に座る。

「ジュージ、話を聞かせてもらえないかしら」

「にゃー」

(お前、二リハに近づくなよ)

「あ?」

 ジュージは疲れたように私を見る。

「いいが、なんかおごれ」

「わかったわ。すいません、この人にビールを一杯ください」

 私は情報量ということで、一杯だけおごってやった。

 今はソウピッグ狩りで結構稼げたとはいえ、やはり一杯だけだ。節約大事。


「で、何が聞きたい?」

「ダンジョンに出てくるモンスターのこと。森にまであふれてくるかもしれないんでしょ?」

「ああ、そういうことか。まあ、今はあんまり気にしなくてもいいんじゃないか? 俺達が入って、いくらかダンジョン内のモンスターは間引かれてるし」

「そうなんだ」

 確かに、あふれるから出てくるわけであって、あふれなかったら森まで出てこないということでもあるのだろう。

 それでも出てくる可能性がある以上、絶対安心ではないと私は思うけど。

「ああでも、先にあふれたのもいるかもしれないか。いいぜ。教えてやるよ。ダンジョンにいたのは、サンドスネーク、パラライズバタフライ、モリンモ、四足グモ、ズデン、ブデリン、アングリーモンキー、グリーンバタフライ、グーフーモだ。俺が見たのはそこまでだな」

 そこまでということは、ダンジョンの最奥までは到達していないということか。

「サンドスネーク、パラライズバタフライ、モリンモは知ってるわ。その後のモンスターの特徴と、あと弱点なんかも教えて」

「いいぜ。四足グモは黒いが、高さは俺よりもでかい。足が針みたいになっていて、突き刺してくる。頭から糸もとばす」

「ランクは3よね?」

「おお、よく勉強してんな。そうだ。頭は柔らかいんだが、足が剣みたいに頑丈でな。立ち止まってると一方的に攻撃される。速攻で倒すのがセオリーだ」

 私はジュージから、未知のモンスターのことを聞いた。


「で、最後のグーフーモは5ランク。鍛えられたイノシシが人型になった感じでな。剣を持ってる。モンスターだが、対人戦みたいな動きをする」

「何か特徴は?」

「ただ5ランク相当の戦士って感じだな。ああ、だがたまに黒い光をとばして攻撃してくる。闇魔法だな。シンプルだが、遠距離攻撃だ。気をつけろ」

「なるほど。ええ、わかったわ」

「ただ一応言っておくと、グーフーモは一体だけでも二リハより普通に強いぞ」

「そっか。5ランクだものね。わかったわ。まずは、その前の4ランク、3ランクの相手ね」

「そうだが。なんだ、2ランクはもういいのか?」

「私、今日で3ランクに上がったのよ。だから、今度からは3ランクのモンスターを相手にする」

「へえ。そんなに早くか」

 ジュージは驚いたようだった。

「そんなに焦るなよ。2ランクと3ランクの強さはえらい違う。勢い余って死ぬやつはよくいるぞ」

「わかった。気をつける」

「仲間は集めないのか?」

「もう、モエルがいるから」

「にゃー」

(ニリハ、任せて)

「うん。任せたよ、モエル」

「というか、なんだその猫は。いや、カジーニャか?」

「うん。テイムしたの」

「お前テイムなんてできたのか」

「ううん。魔法使いギルドのフエバリスさんからマジックアイテムを売ってもらった。結構高かった」

「そりゃあ、マジックアイテムはな。ふうん、でも火力は頼もしいんじゃないか。良かったじゃないか」

「ええ。もうモエルには何度も助けてもらったわ」

「そうか。じゃあ、3ランクか。じゃあ、ちょうどいいかもな」

「え、なにが?」

「二リハ、俺はもうこの町を出ようと思っている。それまでの間、臨時でパーティを組まないか?」

「え?」

 私は驚く。というか。

「いいの?」

「ああ。まあ3ランクなら丁度いいだろ。それに、お前もこの町を出たいんだろ」

「う、うん。そうだけど」

 いや、何を戸惑う必要がある。ジュージは6ランク。これは願ったり叶ったりだ。

「じゃあ、よろしく。ジュージ」

「ああ。よろしくな、二リハ。モエルも」

「にゃー」

(人間、二リハにそれ以上近づくな)

 モエルはまだ警戒心バリバリだね。

 でも、そうなるとますますジュージのことが気にかかる。

「ねえ、ジュージ。あなた前に、どこかのパーティと臨時で組むって言ってたわよね。彼らはどうしたの?」

「ああ。あいつらな」

 ジュージはそう言うと、ビールを一口飲んでから続けた。

「やつら、幸運の風は、俺の寝込みを襲った。殺そうとしてな。立派な殺人、犯罪者だよ。未遂だけどな」



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