ダンジョンに挑んだ後 4
それからも私は、知り合ったリッシ達と共にソウピッグを狩り続けた。
ソウピッグは重いけど、お金になる。取り分は基本1体だけの、しかも8割とはいえ、丸々一体を素材センターに運ぶだけで、400シクルにもなった。まあ、最初のやつは、モエルが少し焼いちゃったから、その分安くなったけど。
でも、リッシ達のように上手く頭だけを狙って倒せれば、500シクルにはなった。正直、良い稼ぎだ。2ランクでもかなり稼げる。ソウピッグは毎日狩れたし、かなり旨味がある依頼だった。
まあそれも、リアカーで運べて、仲間がいてくれるからこその成果だけど。
リッシとダマンは正式にパーティを組まないかと誘ってくれるが、遠慮している。どうせ、長くはこの町にいない予定だ。私もこのままソウピッグ狩りを続けるわけにはいかない。
2人はクオックにもパーティ申請をしたようだが、彼の態度は相変わらずだった。彼だけ打ち解けていない様子だ。いや、あれは周囲にバリアをはっているのか。
仲良くできない時もあるかもしれないが、今は毎日組んで依頼をこなしている。正直もっと付き合いよくやってほしい。
私達はそんな感じだが、今日もソウピッグを倒しに行く。
「うーん。もう少し遠くにいかないといないかあ。やっぱり狩りすぎたか?」
「だが依頼は毎日出てるぜ。今日も持って帰らなきゃ依頼主に悪いだろうが」
リッシとダマンがそう言いながら歩く。確かに、ここ何日かずっとソウピッグを倒していたから、流石に減っているかもしれない。
「まあもう少し行けば見つかるだろう。帰りは暗くなってるだろうが、空振りなんてダメだ。なんとしても見つけよう」
リッシはそう言って、私達を先導した。
やっぱりソウピッグも、そう都合よく現れてはくれないか。
「お、いたぞ。ソウピッグだ。数は3体!」
リッシがソウピッグを見つけた。私達も近づいてみれば、確かに3体いる。
「一体足りないな。まあ、もうあいつらを相手するしかないが」
「俺は必ず一体もらう。譲らないぞ」
ダマンとクオックが言う。
「この場合、リッシかダマンが遠慮してくれない? 私とクオックは2割引かれるんだし」
「そうだな。ま、仕方ない。こういう日もあるさ」
リッシがそう言って肩をすくめる。そして私達はいつものように横に並ぶと、一斉に走り出そうとした。
その時、ソウピッグ達が慌ただしく動き始めた。
私達とは反対方向に走り出していく。
「なんだ?」
「逃してたまるか。声をあげてみる。おーい!」
ダマンが訝しみ、リッシが声をあげながら走り出した。私達も走り出す。
すると、私達が見ている目の前で、ソウピッグ達が倒れていった。どうやら、なにかにやられたようだ。
「新しいモンスターかしら?」
ソウピッグが全滅した後、私達はその正体を見つけた。
茶色い体で、二本足で立っている。豚のような顔だけど、耳はピンと尖って立っている。
そして何より、手首の下あたりから伸びている。鎌のような大きな刃。
その刃は、うっすらと赤くなっていた。たぶん、ソウピッグの血で汚れているのだ。
「アースカッターだ!」
「3ランクのモンスターだ、お前ら、やれるか!」
リッシとダマンが知っていた。3ランクか、厄介かも。
でも、こちらにはリッシ達も、それにモエルもいる。きっといけるはず。何より、皆やる気になっている。
あ、いや、クオックだけスピードを落としたけど、少なくともリッシとダマンはやる気だ。
「にゃあ!」
(俺が倒す!)
「モエルは私とそばにいて!」
「にゃあ」
(ちえっ)
モエルは魔法担当だから、突っ込ませるわけにはいかない。
「キシイーッ!」
アースカッターはこちらへ走ってきた。腕を前足のように動かして、疾走してくる。
速い。きっと相手はスピードタイプだ。不用意に近づかせては危険か。
「モエル、本気で魔法を放って!」
「にゃー!」
(わかった、火魔法!)
モエルは一瞬ためてから、大きな火を放った。
「キシッ!」
アースカッターはモエルの火魔法を難なく避け、更に近づいてくる。
魔法を避けられるなんて、信じられない速さだわ!
きっと私だけの実力では勝てない。皆と連携しないと!
「リッシ、ダマン、かたまって。クオックも!」
「そうだな!」
「隣は任せたぞ、二リハ!」
リッシとダマンはすぐに互いをカバーしあえる位置取りをする。
けれどクオックは。
「あ、ああ」
なんとも気のない返事をして、後方にいた。
そんな中、アースカッターが迫りくる。
「キシイーッ!」
アースカッターはリッシを狙った。一番端だ。
「こいつ、パワースラッシュ!」
ダマンが斜め前から斬りかかる。だがアースカッターはそれを大きく回避した。
そしてそのまま、リッシの懐へとびこむ。
「やられるか、パワースラッシュ!」
リッシはタイミングを合わせて剣を真上から振り下ろす。
「キシッ!」
けれどアースカッターは紙一重でそれをかわして、腕の刃でリッシの腕と腹を斬りつけた。
アースカッターの刃は両手にある。一度近づかれたら、両手からの攻撃に気をつけなければならないんだ。
「ぐっ!」
リッシはなんとか持ち直そうと、後ろに下がる。けれどアースカッターはそれ以上のスピードで迫る。
流れるように足と背中を斬られた。幸いアースカッターの攻撃は全て鎧で止まっていたが、鎧も大分傷ついている。これ以上やられるのはまずい。
「サポートガード!」
私は技を使ってスピードを上げ、アースカッターに迫った。
「キシッ」
アースカッターは飛び上がり、リッシの首を攻撃した。私はそれを阻止しようと、盾で思いっきり殴り飛ばす。
「キシイーッ!」
アースカッターはふきとんだが、すぐに立ち上がり、私を睨む。く、剣で斬っておけばよかったか。いや、さっきは攻撃よりリッシのサポートが優先だった。これで正解だ。
「大丈夫、リッシ!」
私はリッシを見ずに、声だけかける。
「す、すまねえ。ポーション」
「リッシ、早く取りに行け。ここは俺とニリハで食い止める!」
ダマンがそう言ってアースカッターへと走った。私も合わせて走る。
「モエル、火魔法が当たるように狙って!」
「にゃー!」
(わかった、やってみる!)
頼むよ、モエル。
するとアースカッターは、すぐにダマンに接近した。
「く、こい!」
ダマンはすぐに立ち止まり、剣を構えて備える。
けどきっと、それじゃダメだ。敵が動くのを待ってたら、またリッシのように翻弄される!
「サポートガード!」
私はダマンの邪魔にならないように、ダマンの斜め前に陣取った。
「キシッ!」
アースカッターは私を避けるようにして、ダマンに近づく。
でもサポートガードの発動中なら、その動きについていける!
私はまた、アースカッターを盾で殴る。同時に、剣も振る。
けど、アースカッターに盾を受け止められて、衝撃を消された。更に盾がある側に入り込まれ、剣もかわされる。
アースカッターはそこで目をキラリと光らせて、私にとびかかってきた。
「ハードガード!」
ギリギリのところで、私は顔への攻撃を防いだ。
「パワースラッシュ!」
更にすぐそばからダマンの剣技が決まり、アースカッターにダメージが通る。
「キシイー!」
すると傷ついたアースカッターが叫び、身を低くして疾走し、ダマンの足を斬りつけた。
「ぐ!」
「ダマン!」
私はダマンを盾にされたような状態になり、一瞬手出しできなくなる。
「キシイイー!」
そこですかさず、アースカッターがダマンの背中を何度も切り裂いた。
「ぐうう!」
ダマンがかがむ。その時。
「にゃー!」
(火魔法!)
モエルの火が、アースカッターを燃やした。きっと不意打ちだったのだろう。直撃だった。
「キシイイー!」
アースカッターが悲鳴をあげる。チャンスだ。
私は炎を身にまとうアースカッターに、躊躇なく近づいた。
私は、今だって死ぬのは怖い。痛いのも嫌だ。熱いのも苦しいのも本当は御免被る。
でも、こんなところでモンスター一体に襲われたくらいで、旅を始める前にくじけてしまうのは、絶対に嫌だ!
「パワースラッシュ!」
私の剣は、アースカッターにかわされた。
でも、更に踏み込む。
盾でアースカッターを殴り、隙を作る。
「パワースラッシュ!」
私は今度こそ、アースカッターの頭を深く切り裂いた。
これでやっと、アースカッターは倒れた。




