ダンジョンに挑んだ後 3
「にゃー!」
(すごい、二リハ、凄く速かった!)
モエルが私の足元でそう言って、顔を輝かせた。
「うん。どうやら、盾使いの技みたい。新しく覚えられて、良かった」
「にゃー!」
(俺もそれ、覚えたい!)
「うん。一緒に頑張ろうね」
モエルが盾技を覚えられるかは、わからないけど。
「おーい、こっちは終わったぞー!」
「そっちも倒したなー!」
リッシとダマンが声をかけてくる。
「はい、リアカーに積んでください!」
「おお!」
私達は自然と、リアカーの元へと歩き出した。
私とリッシ、ダマンが倒したソウピッグを、一体ずつリアカーに積み終える。
後はクオックの分を積むだけとなったんだけど。
「ああ、こりゃ。確かに槍と、剣の傷があるな」
「ああ。俺は見ていたぞ。二リハの全力疾走からな。あれは凄かったぜ」
リッシとダマンが言う。すると、クオックがぶっきらぼうに言った。
「早く積もうぜ。俺の分を」
「はあー。クオック、お前それ本気で言ってんのか?」
「ソウピッグを倒したのは二リハだろ。クオックのおかげとも言えなくもないが、少なくとも分け前は半々、40%ずつって感じじゃないか?」
「俺は、一言も、手を貸せと頼んだ覚えはない!」
クオックが怒鳴った。
「にゃー」
(かっこわるい)
たぶん、今クオックがモエルの言葉を理解できなくて、良かったと思う。
「私はいいわよ。それで。自分でも一体、ちゃんと倒してあるし」
「え?」
三人にそう言われる。そんなに予想外なこと言ったかな。私。
「クオックの槍が効いてたということもあるわ。私は自分の意思で少し加勢しただけ。だから、いいわ。私は対価を求めない」
少しこの場が静かになる。
「二リハがそう言うなら、いいだろう」
「だな」
リッシとダマンが言った。
「おい」
けどクオックだけ態度が悪い。
「俺はお前なんかに感謝なんかしないぞ」
「そう。それならそれでいいわ」
私は肩をすくめて言った。でも、これだけは言っておく。
「けれど、誰にでもそういう態度をとるというのなら、この先、あなたを助けてくれる仲間なんて、いなくなるわよ」
「っ」
クオックは動揺したが、私はソウピッグを見た。
「早く積んでしまいましょう」
「あ、ああ」
私達は協力して4体目のソウピッグを積んだ。
皆で重いリアカーを動かす。
リッシだけ先行して、敵がいないか確認。また、リアカーを囲む私達も、周囲の警戒は怠れない。
たまに、ワンドッグが襲ってきた。私達は倒したソウピッグを守りつつ、迎撃。幸いワンドッグ程度ならどうにでもなった。
ただ、クオックの注意がおろそかになっていた。
「クオックの方からワンドッグが来るぞ!」
ダマンがそう言って、皆で迎撃準備に移る。幸い簡単に倒せたが、パーティの空気はよくない。
「クオック、もっとしっかり見張れ」
「わかってる」
クオックはずっとこの調子だ。思わずため息が出てしまいそう。
「にゃー」
(こいつら、良い感じしない)
「モエル、モエルも見張り、よろしくね。今だけリッシと一緒に前に出て」
「にゃー」
(わかった)
モエルですら空気の悪さを感じている。どうにかならないだろうか。
まあ、それもこのリアカーを運び切るまでだ。それまでの関係だと思っていよう。
ソウピッグを運びきり、素材センターの外で買い取りを済ませる。
「こいつは俺の、こいつはダマンの。これがクオックの分で、この焼けたやつが二リハの取り分だ」
「なるほど、わかった」
職員がソウピッグを運んでいく。その中にはジュアラの姿もあった。
ジュアラも頑張っているようだ。
「この素材の査定には時間がかかる。程よい時間が経つまで待っててくれ」
「わかった。今日中にはもらえるか?」
「夜になるが、まあ、やれることはやれる」
「そうか、ありがとう。ということで、どうする。今夜取りに行くか、明日の朝もらうか。20%をリアカー代として取りたいから、できるだけ4人一緒にもらいたい」
リッシがそう言って私とクオックを見る。
「夜でいい」
「夜はあまり動きたくはないわ。明日の朝取りに行ってもいい?」
クオックと私の意見が割れた。
リッシはうなずく。
「わかった。じゃあ今夜と明日の朝、俺とダマンのどっちかが素材センターで待ってる。その時2割を渡してくれ」
「わかった」
「ええ」
「それと、今回の狩りは上手くいった。ということで、明日も同じメンバーで狩りに行きたいんだが、2人共、できるか?」
「俺はやる」
クオックが間髪入れずにそう言った。
「依頼は出てるの?」
私がそう訊く。
「ソウピッグの肉は毎日依頼が出てるさ。そうそう空振りすることはない。依頼が出てなくても、素材センターで換金するだけでかなりの金になる。まだやれるなら、付き合ってほしいもんだが」
「わかった。付き合うわ」
私もうなずいた。早く3ランクに上がりたいからだ。それに実戦も多く積んだ方が良い。
ダマンがうなずいた。
「ありがとう。それじゃあ明日もソウピッグ狩りに行こう」
こうして私は、明日の予定もたてた。
串焼き屋に寄ってモエルに一本あげてから、借り長屋の井戸で装備を洗う。
それから少しして、ジュアラが帰ってきた。
「おかえり。今日はギルドでも会えたね」
「うん。おかげで重労働も慣れてきたよ。毎日倒されたモンスター運んでるからね」
ジュアラが力こぶを作る。私は笑った。
「上手くやれてるなら良かった」
「二リハもね。パーティは組まないんじゃなかったの?」
「臨時のパーティよ。やっぱり人がいた方が、モンスターとも戦いやすいから。でも、もう少し強くなれたら、やっと旅に出られるかな」
「そっか。二リハも順調なんだね」
「うん。モエルのおかげ」
「にゃー」
(俺、偉いっ)
「うん。そうね」
「今モエル、なんて言ったの?」
「モエルは偉いんだって」
「まあ、ふふふ」
「にゃー」
(俺、強いっ)
「ええ、そうね」
「また似たようなこと言ったのかな?」
「まあ、そうね。モエルは強いって」
「本当、その調子でニリハを守ってね。モエル」
「にゃー」
(任せろ。言われなくても二リハには俺がついてる)
「頼もしいナイトね。モエルは」
「本当。こんな可愛い味方がいるなんて、幸運ね」
「うん。モエルと出会えて良かった」
私達は今夜も、モエルを抱きしめ合って寝た。




