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ダンジョンに挑んだ後 1

 私も素材を売ってから、シラー達赤の刃と別れた。

 一度外に出て、串焼き屋に行く。その場でモエルに一本あげて、私も食べた。

 そうしたら一度家に帰って、装備を洗う。防具は大して汚れていなかったが、剣の刃がサンドスネークの血と油で汚れていた。念入りに磨いておく。

 洗い終えた装備は借り長屋の中で陰干しして、そのまま冒険者ギルドに行く。その頃には、もう冒険者達はすっかりいなくなっていて、すんなりジュナイに話しかけることができた。

「あの、図書室を貸してください」

「ええ、いいわよ。ああ、それと二リハ、あなたの冒険者ポイントが一定値にまで達したから、2ランクに昇格よ」

「ありがとうございます」

 確かジュージは、2ランクから護衛依頼を受けられると言っていた。料金は半額らしいが、もう旅に出られる用意は整ったといってもいいだろう。

 けれど、私はまだ冒険者として半人前だ。たぶん、旅に出るのはまだ早い。もう少し力をつけないと。

 3ランクか、4ランクになったら旅に出ようかな。

 そう思って、意気込みを新たにした。

「じゃあ、早速ギルドカードを渡してちょうだい」

「はい」

「その間、予備のギルドカードを渡しておくわ。こっちは無くしただけでお金取られるから。でも、返してくれたら無料よ」

「はい」

 私は2ランクとだけ書かれたギルドカードをもらった。ちゃんと返そう。

「ギルドカードの更新はそう時間かからないから。今からお昼ごはん前には終わってると思うわ」

「わかりました」

「あなたの昇格時間は、かなり早いわよ。この調子でしっかりね」

「はい。ありがとう、ジュナイ」

 私はモエルと共に、図書室に行った。

 図書室で2ランクの依頼についての資料を読む。できれば今日中に頭につめこみたい。

 本当は3ランクの資料も見たいところだけど、私はそんなに一気読みできるタイプではない。数日後またこよう。

「にゃー」

(ニリハ、トイレ)

「え、今?」

 まあ、言ってくれるとありがたい。私はトイレを借りて、そのついでにギルドカードの更新も終えて、予備のギルドカードを返した。

 そして午後もずっと、資料を読む。おかげで、2ランクのことは大体わかった。

 このヨツヘインの周辺で、しかも草原で狩れるモンスターは、3種類。

 まず一体が、ソウピッグ。オレンジ色の大きな豚だ。

 防御力は大したことないらしいが、突進は力が強く、倒されて踏まれると骨折もするらしい。更に走りもなかなか速い。おまけに致命傷を与えてもすぐには止まらないそうで、相打ち紛いのダメージが絶えないらしい。

 おまけにソウピッグは3体から5体くらいまで群れを作って行動するらしく、戦う時は数の不利をなんとかしなければならない。

 きっと私とモエルだけでは、危うい強さの敵だろう。2ランクの強さらしいが、要注意だ。

 2体目のモンスターが、ランチキン。少し大きい鶏だそうだ。色はオレンジと白。

 くちばしと足で攻撃してくるらしいが、ワンドッグより素早いということで2ランクらしい。だが攻撃自体はワンドッグより大したことないらしい。

 ただ空も飛ぶということで、倒すのは非常に難しいモンスターということだった。危ないと思ったら飛んで逃げる。これは、相手にしたくないタイプかもしれない。

 3体目は、ハードモンキー。防御力に特化した、頑丈なタイプだそうだ。

 その毛皮は容易に切れず、破れない。斧でも魔法でも傷がつきにくいらしい。この毛皮が、低ランク装備の素材に主に使われているそうだ。

 その高い防御力をまとったまま、ハードモンキーは近づき、相手を爪でひっかき、かみつく。そうなったら冒険者の命はほぼないらしい。2ランク帯で一番気をつけるべきモンスターの一体と書いてあった。

 弱点は顔と尻。あと手足の先。そこだけ毛皮がないようだ。そこを思いっきり攻撃すれば勝てると書いてあった。

 顔はともかく、尻なんてどうやって攻撃すればいいのか。まあ、考えるのはそこじゃない。見つかったら、覚悟して戦おう。毛皮をそのまま持ち帰れば400シクルの相場で換金できるらしい。今の私にとっては魅力的な額だ。

 後は、薬草とか木の実等の情報。こっちの方が憶える範囲は広かった。けど絵だけじゃいまいち憶えきれないから、ちょっと流し読み気味で済ませた。手を抜いているわけではない。

「ふう」

 2ランクの資料を読み終える。もう頭はパンク寸前だ。

「にゃー?」

(終わった?)

「うん。帰ろう、モエル。夜ご飯もお肉にしようね」

「にゃー!」

(やったあ!)

 よし、これで2ランクでの依頼をこなす準備は終えたはずだ。

 明日からまた依頼を受けよう。


 今日の朝は先日買い置きした黒パンを食べる。

 ただそれだけじゃ物足りないので、私は2個食べた。

「にゃー」

(これ肉じゃない)

「贅沢言わないの。これもごはんだから、食べて」

 モエルはちょっと偏食気味だ。お金が稼げない内はこれで食いつないでほしい。

 そして2ランクの依頼を見る。草原での依頼は、ソウピッグの肉とランチキンの肉、卵の納品。難しそうな依頼が残っていた。

 薬草の採取依頼もあるけど、手に入れられるか自信がない。こっちは採取できたら後で受けるということにして、依頼品だけ憶えておく。

「ねえ、君。ちょっといいかい?」

 その時、後ろから声をかけられ、肩に手をおかれた。

「にゃー!」

(敵!)

「モエル、ストップ。町で騒いじゃダメよ」

「にゃー」

(でも、敵は倒す)

「大丈夫。おはよう。あなた達は?」

 見ると、私の目の前に3人の男がいた。1人は後ろにいて、2人が並んで私に笑顔を向けている。

 けど、距離が近い。

「俺達は3ランクの冒険者さ。あ、後ろのは2ランク。君も2ランクだろ。これで丁度4人だしさ。一緒に依頼を受けないか?」

 また依頼の誘いだった。だけど、前回とは違ってこの中には私の知っている人がいない。少し警戒する。

「なんで私を誘うの?」

「数合わせさ。それに、君の実力も少し知ってる。昨日、門の前で槍使いと稽古して勝ってただろ。君強いね。今1人だし、折角だから声かけとこうって」

 ああ。あのラッシとの稽古を見られていたのか。そういえば、あの時は他にも人がいた。

「俺はリッシ。剣士だ」

「俺はダマン。同じく剣士だ」

「そして後ろのが、ほら、名前」

「クオックだ」

「こいつは槍使い。俺達今からソウピッグを狩るんだよ。な、君もどうだ?」

「ソウピッグ」

 確かに、ソウピッグの肉納品は依頼候補にあったものだ。

 けれど、それでも誰かと組むというのは、まだハードルが高い。

「言っておくけど、ソウピッグの肉納品は難しいぜ。1人じゃ倒すだけでも一苦労。ついでにソウピッグは重いから、生肉だけ切り取らなきゃならない。そうしたら血と肉の臭いでワンドッグ達がおびき寄せられて、帰りはアイテムを守りながらの連戦だ。とてもじゃないが、仲間がいないとできないぞ」

「そうなの?」

「ああ、そうだ。だが俺達なら心配ない。ソウピッグを皆で狩ればいいし、持ち運びはリアカーを使う。それで全身持ち帰れば、報酬はかなり高めになる。寄ってくるワンドッグだって、4人もいれば追い払える。な、良い条件だろ?」

 確かに、リッシはメリットしか言っていない。しかし、本当に良い条件なのだろうか?

「だが、報酬は山分けというわけにはいかない。リアカーは俺達が持ってくるしな。俺達はそれぞれ、自分が倒したソウピッグの換金額の、80%を手に入れる。そういう決まりでどうだ?」

 なるほど。山分けではないが、倒せば8割もらえるのか。

 それはなかなか美味い話かもしれない。

 それに、後の依頼は飛んで逃げてしまうというランチキンだけだし、この話にのった方が良いだろう。

 私はうなずいた。

「わかったわ。あなた達と一緒に依頼を受ける。よろしく」

「ああ、よろしく」

「よろしく」

 リッシとダマンと握手をした。

「私は二リハ。剣士よ」

「剣士?」

「モンスターテイマーじゃないのか」

 リッシとダマンにそう言われる。ああそうだ。うっかりしていた。

「確かに、モンスターテイマーだったわ。この子はカジーニャのモエル。よろしく」

「ああ、よろしく」

「よろしくな、モエル」

「にゃー」

(お前ら、それ以上ニリハに近づくな)

 どうやら、モエルは私以外の人にはあまり懐かないらしい。ジュアラにはちょっとは心を許してくれてるみたいだけど。

「クオックも、よろしくね」

「ああ」

 クオックはそっけなかった。

 とにかくこうして私達は、4人とモエルでソウピッグを狩りに行くことにした。




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