ダンジョンに挑戦 3
私はサンドスネークの素早い攻撃を予想していた。
「パワースラッシュ!」
近かったガッツォの喉にかみつくサンドスネークに、全力の一撃を叩き込む。私の剣はサンドスネークの骨にまで到達した。
「モエル、もう一匹に攻撃!」
「にゃあ!」
(火魔法!)
モエルに指示を出しながら、自分が攻撃したサンドスネークを見つめる。サンドスネークはガッツォから離れはしたものの、地面でのたうちまわっていて、まだ息がある。
「が、ガッツォ、ラッシ!」
「くそ、パワースラッシュ!」
のたうちまわるサンドスネークには、なかなか攻撃が当たらない。けれど、突然サンドスネークは動きを止めて、私を睨んだ。
「シャー!」
そして、かみついてくる。今回も足だ。上半身は、盾で防御しているから。
そして私はかみついてきたサンドスネークの頭を、冷静に狙った。
「パワースラッシュ!」
今回も上手く敵を切り裂く。これで、一匹は倒せた。
「二リハもやったか」
そう言われてシラーを見ると、彼ももう一匹のサンドスネークを倒した後のようだった。蛇の体がちぎれかかっている。
「ガッツォ、ラッシ。早くポーションを!」
ビッホがそう言って、自分の背負い袋からポーションを取り出す。そして、ラッシの喉にポーションをかけた。
ポーションって、ああ使うのね。
「ああ、くそ!」
シラーもポーションを手に取り、ガッツォの喉にかける。
「ラッシ、ガッツォ、無事か!」
「はあ、はあ、かはっ、ヒュー、ヒューッ」
「ぐ、ぐぼ、がぼっ」
残念ながら、まだガッツォとラッシはとても無事なようには見えない。
噛まれたのが喉だったからだろう。傷も小さくない。どうやら呼吸がやられているようだ。
「ダメだ、まだ立てない!」
「私のポーションを使う?」
「いや、自前のをもう一度使ってみる」
2人はもう1つポーションを手に取った。
「私がモエルに使った時は、飲ませたわ。そっちの方が効くんじゃ?」
「いや、傷口を治すだけならかけた方が良いって話しだ。でも、もう一回かけたし、試してみるか」
ガッツォとラッシは、ポーションを飲ませられた。
すると、苦しそうだった2人の顔が、急速に安らかになっていく。
「はあ、はあ。ありがとう。もう大丈夫だ」
「あいつは、もう倒したんだな」
ガッツォとラッシが立ち上がった。
「良かった」
私は心から安堵する。
「ガッツォ、ラッシ、ちゃんと注意しろよ。二リハのおかげで助かったんだぞ!」
シラーがそう言うと、ガッツォとラッシは私を見た。
「そうか。二リハが助けてくれたのか。ありがとう、二リハ」
「助かった。もうダメかと思った」
「いいえ、助かったんだからもういいわ。それより、サンドスネークの強さはわかったでしょ。やっぱりあなた達も、まだ森は危険すぎる。ダンジョンなんて、無理よ」
私は今なら、彼らを止められるだろう。と思った。
けど、シラーは私に言った。
「いいや、今のは油断してただけだ。サンドスネークも、パワースラッシュで倒せた。慣れれば安全に倒せる。このまま進もう」
「シラー!」
私は彼を非難した。だが、彼らの意見は、あくまで私とは反対のようだ。
「シラーの言う通りだ。ここで引き返すなんて、情けないまねはできないだろう。そうだよな、ガッツォ、ラッシ」
「ああ、そうだな」
「まだ、全然稼げてないしな」
「ガッツォ、ラッシまで」
「これくらいで怖気づいてちゃ、冒険者なんてできないってことだ」
「次も勝てればいいんだよ。俺達は、ここから成り上がるんだ」
四人とも、まだ進む気みたいだ。
「バカ」
思わずそう言った。
「へへ。それじゃあ、バカを覆すくらい、強くなるしかねえな」
「ガッツォ、ラッシ。今度はサンドスネークの正面を俺達が請け負う。それでいいな?」
「ああ。頼む」
「次は任せた」
「それで、二リハ。二リハは、どうする?」
シラーにそう言われたけど、私の思いはまだ変わらない。
「はあ。ついていくわ。もう少し」
「にゃあ」
(ニリハ、勝ってうれしくない?)
「うん。今はね。モエル、ラッシを助けてくれてありがとう」
「にゃあ」
(俺、助けてない。勝っただけ)
モエルはそう思っていても、私はモエルの頭をなでた。
私は彼ら以上に、自分とモエルの命を大事にしていこう。
それから歩くと、またサンドスネークと遭遇した。
今回は、一体。
「よし、囲め!」
四人は一斉に動いて、サンドスネークを囲う。
相手は一匹だ。私達の出番はないだろう。
「シャー!」
サンドスネークは、今回も喉を狙ってきた。でもシラーが腕の防具で耐える。
そのサンドスネークが止まった瞬間を狙って、後ろから2本の槍がサンドスネークを突いた。シラーに当たらないように気を使った攻撃だったが、そのせいかサンドスネークにあまりダメージはない。
そこから先は慌ただしかった。
サンドスネークは素早く動き続けて、でたらめに攻撃をしかけ続ける。そのサンドスネークを、四人が必死に攻撃する。
幸い皆喉への攻撃を用心したため、致命傷は負わなかった。ただ、サンドスネークの動きに皆翻弄されて、手間取っている。
「にゃあ?」
(俺も攻撃する?)
「いえ、もうちょっと待って。彼らを信じよう」
せめて、サンドスネーク一匹を倒せる実力は示してもらいたい。
それに、今助力しても更に混乱するだけかもしれない。
じれったい戦いが続いて、やがてビッホの剣がサンドスネークの顔に当たった。
一瞬ひるむサンドスネーク。そこに、ガッツォの槍が突き刺さる。
「パワーランス!」
その一撃で、戦闘が終わった。
サンドスネークが倒れる。すると、皆の緊張がとける。
「ふ、やったな!」
「俺が倒したんだぜ。やっぱり戦える!」
「これならもっと倒せるな!」
「な、二リハ!」
最後にシラーが私を見た。
「いいえ、まだ不安だわ」
私は感想をもらす。
流石にサンドスネーク一匹に手間取っているようでは、ダンジョンに入ってもできることは少ないだろう。
それから更に、サンドスネークが二匹、1匹と現れた。
あと、ブラッドバタフライに似た蝶のモンスターも現れた。そいつは羽も硬く、たいあたりでこちらをふきとばす上、黄色い鱗粉もとばして私達の動きを少しの間止めてきたが、なんとか勝てた。
私はそのモンスターを知らなかったが、シラー達は知っていた。パラライズバタフライという、麻痺する鱗粉が厄介なモンスターだったらしい。2ランクのモンスターで、サンドスネーク程ではないにしろ、なかなか手強かった。
私達はそれらも倒す。けど、少しずつ、2ランクモンスターとの戦いに慣れている気はした。
「肩慣らしはできたって感じだな。ダンジョンに入ったら、きっともっと手強いぜ」
「でも、ダンジョンに入ってからが本番だもんな。よし、倒しまくってやるぜ」
「もう油断するなよ。ポーションも結構使ったからな」
「二リハとカジーニャも、手強いのが出たらよろしく頼む。期待してる」
「うん」
私は彼らについていきながらも、どうか程よい相手が現れて彼らを帰らせる気にさせてくれますように。と祈った。
やはり、彼らと私達の力量ではまだダンジョンは早すぎる。手遅れになる前に、いいきっかけが欲しい。
と思っている時のことだった。
目の前に、緑色のずんぐりむっくりした人型のモンスターが現れた。
頭部は大きくて丸い。手足も大きくて丸みがある。胴体や腕足は筒状で太い。
大人より一回り大きいそいつは、目も口も鼻もないはずなのに、私達に向かって一直線に歩いてくる。
「なんだ、あいつ」
「俺も知らないぞ」
ラッシとビッホの言葉を聞いて、背筋を凍らせる。相手は、未知のモンスター?
ひょっとして、2ランクよりも上だとか?
「モエル、魔法の準備を!」
「にゃー!」
(わかった!)




